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それも本で読んだ

 合宿も終え、2学期に入った。


 いつもの塾の帰り道、俺はウキウキした様子の中学生を見つけた。


「薬師兄さん!」


「おお浩二か?」


「久し振り、もう変な呼び名は止めてね」


「すまない。

 浩二の名前だけは出すまいと俺も頑張ったんだが杏子の執拗な追及に俺は..俺は.....」


「いいから、逆に嘘くさいよ」


「そうか、すまない」


「ところでどうしたの?

 今日は随分うれしそうだね」


「ああそうだ浩二、聞いてくれ俺はついに男に、男になったぞ!!」


「えっどういう事?」


「分からないのか?

 とうとう白石を、杏子を誘い出す事に成功したんだ!!」


「へー良かったね」


「反応が薄いな?」


「だって、杏子姉さんだもん。

 薬師兄ちゃんへの同情が大きいでしょ?」


「フッまだまだお子ちゃまだな浩二」


「うん小6だもん」


「ぐっ、いちいち癪にさわるな。

 まあ良い浩二聞いて驚け、何と杏子は中学の友達を3人連れて来る事を約束したのだ!」


「連れて来る?」


「ああ来週の日曜日球技大会にな。

 どうだ浩二これでも同情か?」


 懐かしいな球技大会か。


 秀星中学と高校の合同で毎年行われていたな。

 俺も女の子が来る貴重な1日だから数日前から浮かれた、そう今の薬師兄さんみたいに。


 やっと誘った女の子を前に俺は友人達とがっついて話す会話は内輪話ばかり。

 当然女の子達はドン引き。


 ...次は無かった。

 キツイ記憶だ。


 今の薬師兄さんは昔の俺、この様子は危険だ。


「おい、薬師」


「うっまたか...」


「浮かれるのは分かるが、その手に有るのは何だ?」


「これか?良く聞いてくれた、

 これはそこで買ったお洒落なTシャツだ、

 これを着て迎えるつもりだ」


「秀星の球技大会は生徒全員ジャージ着用のはずだ」


「なぜそれを?」


「本で読んだ」


「またか、だがな少しでも目立たないと」


「『目立つ目立つ』とお前は孔雀か?」


「ぐぉ!」


「あのなあ薬師、杏子姉さんは今回の球技大会に正直お前なぞゴマ粒程の興味も無い」


「ぎゃ!じゃあ何故来る?」


「そりゃ誘った友達の手前だし、

『秀星の球技大会楽しいよ!』

『見て見て高校生のお兄さんもいるよ!』

『かっこいいね、楽しいね』みたいなところだろ」


「そんな、俺の努力は?」


「無駄とは言わない。

 だがな、そのままでいたら杏子姉さん達は帰りに『楽しかったね、ところで誰の紹介だったけ?』で終わる」


「球技大会、俺休もうかな」


「それは最も下策だ」


「それじゃ俺はどうしたら?」


「自然体だ」


「自然体?」


「そうだ、今のお前は興奮してまるでおのぼりさんだ。

 自然体で振る舞う。

 球技大会の活躍はいらない、どうせ一年生に見せ場なぞあるまい」


「確かに」


「みんな良いところを見せようと張り切るが、

 そんなものは運動バカに任せりゃいい。

 それより自然体で学校案内。自然体で友人の紹介、楽しい会話」


「ちょっと待て、男は俺1人じゃ駄目か?」


「だからバカかお前は!

 向こうは4人だろ?

 どうやってみんな会話で楽しめる?

 杏子姉さんと小学生の思い出話しか出来ないだろ、周りがしらけるぞ!!」


「でも友達って女の子取られないか?」


「そのリスクはある。

 逆に変な友人を誘い、皆纏めてドン引きされる可能性もある」


「それじゃ...」


「だがな薬師、球技大会なんかたかだか3時間程度で終わるショートイベントだ。

 いかに『薬師明信』の爪痕を女の子に残せるかだ。

 良いな薬師、

『がっつくな』

『変なカッコはつけるな』

『楽しい友人の選別と内輪じゃなく全員が楽しめる会話力』だ。

 次、次に繋げる為の布石だぞ。分かったか?」


「少し分かったよ浩二。

 しかし俺の学校の球技大会の時間まで把握しているとはな。

 一体どこでその事を?」


「本で読んだ」(嘘偽り)


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本すげー(棒) グリモワールかなんかなのか?
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