ちょいと振り返る時もあるんです
あれから3ヶ月が過ぎた。
やはり俺の身体は小さいまま。
そして向かいには兄貴が寝ている。
兄貴は寝顔まで可愛い。
この頃、俺達兄弟はいつも2人で寝ていた。
時計を見ると6時前。
早い、早すぎる、5歳児が起きる時間じゃない。
そういえば俺は巻き戻る前に犬を飼っていた。
その犬が6時になると散歩をせがんで俺を起こそうと吠えたり、ベッドに前足を掛けて俺の指を舐め回すので、いつの間にか体内時計が出来ていて目覚ましを使わず6時前に起きる習慣が出来ていたのだった。
いつもの様にもう一度寝ようか?いや起きようか?
そんな事を考えているとふと嫁の顔が浮かんで来た。
今回の人生は兄貴の事を第一と考えている。
そこはブレない。
しかし嫁は今どうしてるだろうか?
(会いに行く?)
バカげてる。
この頃の嫁は俺が住む町から電車で1時間位の所に住んでいたはずだ。
同い年だったから嫁も今は5歳児。
俺との記憶も無い幼稚園児の嫁にあってどうする?
しかし一度気になると、どうしようも無い。
兄貴を起こさない様にそっと布団から這い出る。
机の裏側から例の落書き帳を取りだして、一番後ろのページに嫁の旧姓をフルネームで書いてみた。
「大きくなったら会いに行くか...」
嫁の面影を浮かべ、そっと落書き帳をしまい呟くのだった。