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薬師君と白石さん

 薬師明信は女の子と交流を深める為、ある壮大な計画を胸に、白石杏子を駅前のハンバーガー店に呼び出した。


「なあ白石、中学校はどうだ?

 音大附属中学校は楽しいか?」


 まずは軽く学校の様子から尋ねる明信。

 電話でなく、女の子と直接交わす挨拶以外の会話。

 姉や母と違う緊張感に明信は包まれた。

 浩二のアドバイスで塾に行ってなかったら口ごもるところであった。


「何よいきなり、楽しい事ばかりじゃないけど、意外と普通の中学校と変わらないわね」


「そうなのか?」


「そうよ、時間割りに専攻の授業がある以外はそれほど変わらないと思う。

 卒業したら普通の高校に進む子もいるのよ」


 杏子の話は意外だった。

 音大附属の生徒は全員音楽家の道を歩むと明信は思っていたからだ。


「それより明信はどうなの?

 この前電話の時、ダメだ夢は断たれた、保健室はオバさんだったって言ってたけど...なんで笑ってるの気持ち悪いわね」


「ふふふ...昔の事は忘れた」


「先月だけど」


「先月の事など今は昔だ。

 導きの光を俺は見たんだ、マスターによってな」


「何を言ってるの?」  


「そんな事はいい、本題だ」


「あんたが振ったんでしょ!」


 杏子の前では勝手が違う。

 少し照れ臭くなった明信は改めて杏子を見る。


「交流を深めたい」


 しっかりとした口調、瞳には強い意思が宿っていた。


「は?」


「だから交流だよ、親睦でもいいかな。

 お前の友達と一緒にみんなで親睦だよ」


「交流だの親睦だのって何であんたとそんなの深めなきゃならないの?」


 もっともな質問。

 しかし明信は狼狽えない。

 既に頭の中で何度もシミュレーションをしていたのだ。


「なあ白石、音大附属中学校の男女比はどうなっている?」


「はあ?」


「だから男女比だよ、詳しく言えば男と女の比率!」


「何であんたに言わなきゃならないの?」


「頼む教えて......」


 予想外の展開に明信は頭を下げ、杏子をすがる目で見つめた。


「分かったわよ、だから頭を上げて。

 学年によるけど私の学年は男子3女子7くらいかな」


「ははは、そうか落ち込むな杏子!」


「落ち込んでないわよ」


「そんな運命と知らずに」


「知ってたわ」


「だが安心しろ」


「何に?」


「この世の半分は女だ!」


 呆れた顔をする杏子は明信に大きな溜め息を吐いた。


「だいたい言いたい事は分かって来たけど、この場合『半分は男だ』って言った方がいいわよ」


「だから俺の住む(いびつ)な世界とお前の住む...」


「歪なんて言ったら帰るわよ」


「睨むなよ、ごめんなさい」


 明信は再度頭を下げた。

 これ以上怒らせたら杏子は本当に帰ってしまいかねなかった。


「要するに明信は私の学校の友達で何か企んでいるわけね」


「企むなんて、実は今度球技大会があって外部解放で...ね」


「何が『ね』よ。

 分かった、ダメ元で声くらいかけて上げる。 

 秀星中学校なら一応進学校だし。

 校則が厳しいから変な生徒もいないでしょ?」


「いいのか?」


「駄目って言って欲しかったの?」


 杏子は意外にも明信の要請を了承した。

 実は明信の通う秀星中学は格好いい男の子が多くて有名な学校だったのだ。


「とんでもない、ありがとうございます」


 慌てて明信は杏子に平伏する。

 やはりマスター浩二の言葉は偉大だ。

 明信はマスター浩二に対する忠誠を誓った。


「ところで、さっき言ってたマスターって誰よ?」


「それは言えない」


「言わなきゃこの話は無..」

「浩二です」


「は?」


「山添浩二です」


「浩二が?

 一体どこでそんな知識を」


「本で読んだって」


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