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夕飯の風景

 その夜家族揃っての晩御飯。


 食卓には母親その隣に兄貴、テーブルの一番奥に祖父、

 母親と向かい合わせに俺、隣には祖母が座っていた。


 夕飯を作りは大体が婆ちゃんだった。


 父親?勿論家族一緒に住んでる。 


 でもこの家に住んでるのはみんな母方の親族なんだよね。

 祖父母も母親の両親で、まだこの他にも母親の弟、つまり叔父もこの家に住んでる。


 叔父は有名な食品会社に勤めていて、朝早く出かけて夜も遅いので余り顔を合わす機会が無かった。

 俺が小学生の時に結婚して家を出たんだ。


 そんな訳で父親は家業のニット加工の配達に出かけると、そのまま外で夕飯を済ます事が多かった。

 やはり爺ちゃんの威厳が怖かったのだろう。

 俺には優しい、お爺ちゃんだったんだけど。


 母親が家族と同じ夕飯の席に着くのは珍しい。

 いつも仕事の合間にいつの間にか食べて、また仕事する生活だったから。


 父親の趣味は釣り。しかも海釣り。

 大概週末になると同業者の釣り仲間と出掛けてた。

 でも母親は仕事、仕事、休みの時も仕事。


 俺達兄弟の面倒を一番見てくれていたのは、爺ちゃんと婆ちゃんだった。


 兄貴はいつも俺に優しく接してくれた。

 保育園で大変な目に会った時も家族と一緒に怒ってくれたし。


 遠い保育園だったから遊ぶ友達が近くにいないと分かっていたから帰ってくると、

『浩!一緒に遊びに行こう』って誘ってくれた。


 だけど兄貴が小学校に上がると、新しい小学校の友達が出来る訳で、俺は兄貴を取られた感じがした。


 だから家に遊びに来る兄貴の友達や、兄貴に好意を向けて来ている女の子達にも、あれだけ素っ気ない態度だったのかも知れない。


 まあ、大きくなってからはモテる兄貴へのヤッカミがあったのは否定出来ない。


 そんな事を考えていると母さんが、


「どうしたの?

 今日は浩二が好きなカレーに唐揚げだよ。

 余り箸が進んで無いみたいね」


 心配そうに言った。

 やはり今日母親が一緒のテーブルに着いて夕飯を食べているのは俺を心配しての事らしい。


「そうだぞ浩、沢山食べて大きくならないと僕みたいにチビなままだぞ」


 兄貴も自虐的な事を言いながら俺に微笑み掛ける。

 兄貴の数少ないコンプレックスは小柄な身体だった。


 胃腸が弱いのは父親の遺伝なのか、兄貴は直ぐにお腹を壊してしまう事が多かった。

 特に牛乳は天敵で給食の牛乳さえ苦しんでいた。


 俺は幸いにも母方に似たのか、胃腸がとても強く滅多な事では腹は壊さなかった。

 だからか兄貴は大人になっても小柄(160cm程)で、俺は兄貴より大きく(180cm)成長した。


「大丈夫、ありがとう。

 何か良いな、家族との晩御飯だなって思ってたんだ」


 みんなキョトンとした顔で俺を見て固まってしまった。


 いけね俺まだ保育園児だ何言ってるんだ?

 と内心冷や汗をかいていると婆ちゃんが、


「やっぱり年寄りと一緒暮らすと考える事も、喋る事も大人びるのかねー?」 


 と頭を優しく撫でてくれた。

 奥では祖父が目を細めて笑ってる。


 ダメだ、また泣きそうになる!

 急いでカレーを掻き込むのだった。

 ベタだけどこの夜の夕飯は少ししょっぱかった。

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