そんなの気になるの?
次の休み時間、6年2組の教室に行く。
順子姉さんに教える為だ。
「おはようございます...」
「おっ!!我らがヒーローの弟さんのおみえだ、
誰を呼ぶ?十河か?」
「は、はい」
「おーい、十河!
ヒーローの弟さんが呼んでるぞ、早く来ないと罰が当たるぞ」
「うるさいわね、そんな大きな声出さないで!
やっぱり呪ってやろうかしら?」
「なんだよ、止めろよ」
両手をだらりと垂らした順子姉さんの呪いを怖れた男子は逃げて行ってしまった。
で、呪いって何だろ?
「おまたせ浩二君。
良かったわ!本当嬉しい!!」
順子姉さんは既に結果を知っているようだ。
「知ってたの?」
「浩二君の所にも知らせに行ったでしょ。
あれ私のクラスの担任、職員室で電話の前で朝から待機してたの」
「授業は?」
「ずっと自習よ」
「なんだそりゃ!」
思わず声が出る。
順子姉さんは少し笑った。
「だって14年振りの快挙でしょ?
学校だけじゃなく担任の評価にも繋がるらしいよ。
過去に受け持った担任全てによ」
だから俺の担任もあの嬉しがりようだったのか、納得。
「やっぱり有一君は凄いな、学校全部捲き込む快挙を遂げちゃうんだもん。
なんか遠くに感じちゃうよ」
「順子姉さん...」
寂しそうな順子姉さんに言い知れぬ不安を感じた。
「大丈夫よ、全然諦めてないんだから。
最近やっと有一君は私を女として意識してくれるようになったんだ」
「そうなの?」
順子姉さんの意外な言葉。
兄貴よ、いつの間に。
「まだ気のせいかも知れないけど、ちょっとだけ、いえきっとそうよ!
だから卒業して、はい終わり諦めましょうってならないからね」
「その意気だよ!」
元気な順子姉さんに嬉しくなる。
「だから大丈夫よ。
ありがとう心配してくれて。
また今度有一君の家にお祝いに行くね。
おじさま、おばさま、おじいさまとおばあさま、みんなにおめでとうございますって言っておいてね」
「了解です。それじゃ!」
「あっ、それから」
教室を出ようとする俺を呼び止めた。
「由香ちゃんにもありがとう伝えておいて『効果有ったよ』って」
「直接言わないの?」
「こういうのは人伝に言うのがいいの」
「よく分からないけど、伝えとくね」
教室に戻ると、俺の起こした騒動の余波で雰囲気がおかしかった。
で、由香に順子姉さんの伝言を忘れていた。
そんなこんながあって下校の時間。
いつものように由香と一緒に帰る。
「順子さん喜んでた?」
「ああ、凄く喜んでたよ」
「そう、良かった。
順子さんはお兄さんと違う中学校が決まっちゃた訳だから心配してたの」
「うん、大丈夫だって。
最近兄さんも少し順子姉さんを気になり始めてるって言ってた」
「そうなの!?
良かった進展があったのね、本当に良かったわ」
「うん。順子姉さんが『由香にありがとう』って」
「私に?」
「なんか『効果あったよ』だって。
何の事かな?」
由香は少し考えていた。
「ねえ、ちょっと公園に行かない?」
由香が急に俺の腕を引っ張る。
「良いよ」
公園でベンチに並んで座った。
「...浩二君も大きいのが好きかな?」
「何が?」
「胸...」
「胸?」
「おっぱいよ、おっぱいは大きいのが好きかって事...」
由香が顔を赤くしながら恥ずかしそうに聞いた。
「別にそんなのどうでもいいよ」
「本当?
大人になったら、やっぱり胸は大きい方が好きなんてならない?」
「ならない」
これは自信をもって言える。
別に俺は小さい胸が好きって事では無い。
女の子の好感の基準に胸の大小が入ってないのだ。
前回の時間軸からそうだから心配はいらない。
「そう良かった。
そうだよね、浩二君順子姉さんの胸に意識全然してなかったから大丈夫って思ったんだけど少し心配で...」
「心配?」
「だって順子さんすっごく大きなおっぱいだし。
お兄さんも少し意識してるみたいだったから」
「そうなの?」
兄貴は大きい胸が好きだったの?
そういえば前回の兄貴の嫁も大きな胸だったな。
『あんな胸の形おかしいわ、絶対豊胸手術してるよら女には分かるの』って律子が言ってたな。
思わぬ所で兄貴の趣向が分かってしまった。
「浩二君?」
気がつくと由香が不安そうに俺を見ていた。
「兄さんが大きな胸が好きかは分かんないけど、順子姉さんの胸だから好きって事でしょ?
それなら尚更心配いらないね。
由香が心配ならもう1回言うよ。
僕は胸が大きい小さいに興味は無い。
そんな事に関係なく、由香が好きだから」
「は..ふぇ...ありがとう、ありがとう浩二君!
私も好き、大好き!!」
今日はいろいろあるな。




