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兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
俺と兄貴の中学入試
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いよいよ受験日 兄貴編

 1月23日いよいよ兄貴は受験本番の日を迎えた。


 気合の入る家族と違い兄貴は至って自然体。

 昨日の晩はいつもと同じように過ごして、いつもと同じ時間に寝ていた。

 体調を考え、前日の夕飯も消化に良いものと言う事で、豚カツ等の油物は避けて鍋焼きうどんだった。

 兄貴は腸が弱いので今朝の朝食もおにぎりに味噌汁といったシンプルに済ました。


 兄貴は朝食を終えると最終の持ち物チェックを始めた。


「受験票、筆記用具、ハンカチ、テイッシュ。

 後、家族と順ちゃんから貰った御守り」


 指差しながら慎重にチェックする兄貴。


 今日の試験には由香の従兄弟、志穂さんと美穂さん姉妹、そして坂倉さんと一緒に行くとの事で、約束の時間まで家で待機していた。


 約束の時間ピッタリに呼び鈴が鳴り玄関ドアが開いた。


「「お待たせしました」」


 志穂さんと美穂さんの声に家族一同兄貴を送り出す為、一緒に外に出た。


 そこで見た光景に我々家族一同声を失う。

 玄関前に停められていたのは1台の高級リムジン。

 志穂さんと美穂さん、更にお父さんの橋本隆一さんが並んで立っていた。


 車の後部ドアの前にお抱えの運転手が待機しており、さながら外国の要人を迎えに来たようだった。


「あ、あの....これは?」


 ようやく父さんが口を開いた。


「お待たせしました。

 今日は娘達にとっても大切な日となります。

 試験会場までの間にもしもの事があってはいけないと思い、差し出がましいようですが準備させて戴きました」


 隆一さんはなんでもない事の様に言うが、これは凄すぎる。


「いやそんなにお気をつかわなくとも...」


 父さんが呟くように言った。


「実は娘達が『有一君にもし何かあっては、と考えるだけで私達も試験に集中出来ない』と言うもので...すいません親バカだとは分かっておりますがなにとぞ」


 そう言って隆一さんは頭下げた。


「わっ分かりました頭をお上げ下さい!

 そういう事でしたら、有一橋本さんのご厚意に甘えなさい」


 父さんの言葉に兄貴は静かに微笑む。


「ありがとうございますおじさん、志穂さん、美穂さん。

 それではお言葉に甘えさせて戴きます。

 では行ってきます」


 そう言って車に乗り込んだ。


「では確かに息子さんをお預かりいたしました。

 これより坂倉さんのお宅に寄って試験会場に向かいます。それではまた後程」


 隆一さんはそう言って最後に車に乗ると音も殆ど無くリムジンは消えて行った。


 あの車で坂倉さんの家にも寄るのか、大変だな。


「凄いな橋本さんの所は。

 受験生の父親ってあれだけの事を子供の為にするんだ」


 父さんは車が走り去った方を見つめながら呟いた。

 でも隆一さんは親バカもあるけど、娘さん達が兄貴の事が好きなんだ。

 そして兄貴が欲しいんだよ。


 口には出せない。

 でも、兄貴の事を好きなのは娘さん達だけじゃ無い。

 試験の3日前に順子姉さんがやって来て兄貴に受験合格の御守りを渡してた。


 何でも霊験豊かな神社の物らしく、隣の市まで自転車に乗って片道1時間近く掛けて行って買って来てくれたそうだ。


『何故電車かバスを使わなかったの?』

 と兄貴が聞くと、


『私に出来る事は祈る事だけだからせめて私の気持ちを一杯込めたかったの。ごめん上手く伝えられないや』

 って順子姉さんは笑ってた。

 兄貴は頬を少し染めて、


『ありがとう順ちゃん、僕精一杯頑張るからね』

 って手を握ってお礼を言ってた。

 順子姉さん、顔が真っ赤になって金魚みたいに口をパクパクしてて可愛かったな。

 今日は平日なので俺も学校に行く。


「それじゃ僕も行くね、行ってきます」


「行ってらっしゃい....」


 まだ俺の家族は先程の驚きから立ち直れてないみたいだ。


「おはよう」


「おはよう」


 いつもの場所で由香と落ち合う。


「今日びっくりしたでしょ?」


 由香は苦笑いしながら聞いてきた。


「知ってたの?」


「そりゃ知ってるわよ。

 伯父様ったら、お祖父様の車で運転手まで使って浩君の家に行くんだもん。

 びっくりしたわ」


「見てたの?」


「お隣だからね。

 門が開いて普段使わない車が出て来たら、何かあったのかしらって思うわよ」


「今日知ったの?」


「そうよ、前もって知ってたら浩君に教えるもん。

 玄関前で伯父様ったら

『来年は由香も使いなさい』って、いらないわ!」


 由香、よく言った。

 

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