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兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
俺と兄貴の中学入試
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君を救いたい

 頭の中は大混乱したまま、授業は始まった。

 現在の授業は社会の地理。

 たまに質問が飛ぶが、余程の事が無い限り大丈夫だ。

 ノートを広げ、講師の言う事を書き込みながら頭の中は現在の伊藤律子を考えていた。


 こっそりノート奥のページに関連項目を書いた。


 先程のまでの情報の整理。


 ①この時間軸における俺と律子の関係


 ②現状の俺が出来うる事とそれによって起こりうるリスク


 ③記憶に残る知っている事全て、この頃の律子の記憶。


 ④今後の俺と律子の未来の関係と可能性。


 ⑤この先どうなりたいのか。


 難しい、必要5項目を書いてみたが今回出来そうな事は3番迄で、後は未来の可能性だ。

 ノートを元のページに戻し、顔を上げて真剣な顔しつつ脳内はあさっての方ばかり考えていた。


 授業が終わり休憩時間に入る。

 今から20分間の休憩の後、次の授業国語の教科書とノートを入れ替える。


「浩二君それ漢字の練習のノートだよ」


 祐一に言われて慌てて確認する。

 同じ縦書きで間違って持ってきたようだ。

 しかし良く見てるな、


「急いで取りにもどらなきゃ」


「そうだな」


「一緒に行くよ」


「悪いなまだ建物の中を完全に把握出来てないからたまに迷うんだ」


 意外に広い研修センター。

 使ってない部屋が無数にあり、案内図を見ても迷わず行ける自信が無いので祐一の言葉は本当に助かる。


「最初はそうだよ」


 笑いながら祐一は案内してくれた。

 ありがたい。


「あったあった。サンキューな祐一」


 部屋に置いていた鞄からノートを取り出した。


「浩二君、

 何故伊藤さんの事そんなに気になるの?」


 ポツリと祐一が呟いた。


「祐一?」


「ごめんなさい!

 さっきの授業中にちらっと浩二君のノートが見えちゃて。

[俺と律子の関係]って書いてあったのが...」


 あら見えたか。

 これは俺の不注意だ。

 祐一は悪くない。


「すまん余計なな物を見せちゃったな。

 気になる、は違うな。

 確かに吉田君や伊藤律子さんと僕の接点は1回ある」


「1回って?」


「オリエンテーリングの1回だ」


「オリエンテーリングの時に凄い笑顔の男の子って?」


「多分僕だ」


「そうなんだ僕みんなと違う班だったから余り知らないんだけど、

 学校戻って来た、りっちゃんが凄い興奮して。

 天使、天使がいたって、

 浩二君だったのか、うん納得。

 でも、大丈夫その事で2人はギクシャクしてないよ。

 それより地図を書いてくれた女の子が可愛かったって

 健二、いや袴田君と久が言ってたんだ。

 りっちゃんが久に嫉妬して大変だったから」


 あらそうなの?

 由香は可愛いから当然だな。


「その事で、2人の関係がおかしくなってないなら大丈夫だな」


 何か複雑だ。

 いかん、未練は無いはずなのに。


「でもね、浩二君に『俺』は似合わないよ」


「はい」 


 みんなそう言うな。

 なんでだろ?


「それじゃ戻ろうか?」


「祐一少し待ってくれ」


「何?」


「もうちょっと教えて欲しい事がある...」


 祐一を呼び止め、話を聞く。

 これは大切な事だ。

 律子にとって、吉田にとっても。

 ...なにより俺にとって。


 昼食の後昼休み。

 ちょっと電話してくると言って、みんなから離れて半透明のガラスに囲まれた電話室に籠り情報を整理したノートを見る。


 このままじゃいけない。


 俺に何が出来るか分からない。


 でもこの世界には感謝している。

 もう2度と会えないと思っていたのに、また会えた祖父母。

 今度こそ幸せになって欲しい兄貴。

 心穏やかな老後を送って欲しい両親。


 兄貴の事が大好きな順子姉さん。

 俺が運命を変えてしまった佑樹と花谷さん。

 そして、この世界で俺が一番運命を変えてしまった一番大事な人、由香。


 この世界に恩返しをしたい。

 それが前回の嫁である律子との縁が消えるとしても。


 今の律子を助けたい。


 電話室から出ると、吉田と同じクラスの知り合いに吉田を呼び出すように頼む。


 吉田はしばらくするとやって来た。

 不貞腐れるように見えるが、少し怯えが見える。


 おっさんの洞察力を舐めてはいかんよ。

 由香には全く敵わないが。


「何だよ、一般受験コースの俺の頭をバカにしに来たのか?」


 何言ってんだコイツ?


「お前がそう思うのは勝手だ。 

 それが嫌なら自習室に来い」


「は?何言ってんの?」 


「このまま拗ねて全てを失いたいならそうしてろよ。

 嫌なら今日自習室に来い!」


 祐一に聞いた久の性格に賭けて煽ってみた。


「分かったよ!行ってやるよ!」


 乗ったな。


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