表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
俺と兄貴の中学入試
40/229

残されたメッセージ

「大変な事になったな」


 佑樹の一言でみんな我に返る。


「追いかけなきゃ...」


 順子姉さんは急いで上着を羽織り、部屋を出ようとした。


「順子さん待って下さい!」


 扉の前で両手を広げた由香が順子姉さんの行く手を阻んだ。


「どいて由香ちゃん」


「今行っては駄目です。  

 優子さんは今きっと気持ちが昂ってます」


「でも...」


「そして順子さん、あなたもです。

 今あなたが優子さんに会って

『大変な事したね』

『そうだねどうしよう』

 なんて話せますか?」


「そ...そんな言い方しなくても」


「分かってます、わざと言いました。

 でも飛び出す程の混乱は落ち着いたと思います。

 すみませんでした」


 由香は順子姉さんに頭を下げた。


「由香すごい...」


「ああ橋本すげぇな、俺なら十河さんみたいに部屋を飛び出すな」


「私もよ、由香を突き飛ばして行きそう」


「ああ。和歌ならそうだろうな、でも俺もそうするかも」


 怖いなお二人さん。


「あの冷静な優子さんの取り乱し様、

 でも最後にきっちり言い残しましたね。

 これだけは余程言いたかったんでしょう」


「何を?」


「浩二君分かりませんか?」


 少し呆れた視線を由香は向ける。

 優子姉さんは何を言ったのかな?

 余りの剣幕に思い出せない。

 確か...


「優子姉さんが兄ちゃんを好きだったは聞いたけど...後は佑樹覚えてるか?」


「お、俺に振るなよ。

 何だったかな?和歌は覚えてるか?」


「少しだけね。

 私ったら同じ道場で一緒に剣を振った仲なのに優子の事何も分かって無かったのね。

 あんなに助けてくれたのに...」


 花谷さんは悔しそうにうつ向いた。

 きっと佑樹の事を思い出しているのだろう。


「和歌ちゃん、少し分かったなら充分よ。

 薬師さんに富三さんはどうでしょう?」


 二人共ふるふる首を振る。


「ごめん由香ちゃん、私も分かんない」


 杏子姉さんは右手を挙げた。

 そうだろうね。


「順子さんはもちろん分かりましたよね」


 由香の言葉に順子姉さんはコクりと頷く。


「お兄さんは当然気づいてませんから、私が言いましょう」


「由香ちゃん待って!」


 順子姉さんが由香を止めた。


「どうして?なぜ止めるのですか?」


「それは言っちゃだめ!

 そこまで優子は望んでないかもしれない」


「順子さん良いですか?

 今日優子さんは妹の恭子ちゃんを連れて来ませんでした。

 和歌ちゃんの道場で一緒に汗を流した仲にも関わらずです。

 恭子ちゃんは和歌ちゃんや川口君みたいに私達と時別親しくしていた訳ではありませんでしたが、学校行事では私も恭子ちゃんと仲良しでしたよ。

 だから優子さんは予想していたんです。

 つまり望んでいたんです」


「和歌、そういえば一緒に遊びに行った事もあったな」


「恭子とは道場でお別れの挨拶はしたけど、あれが最後のお別れだったのね」


「優子さんは妹に見せたくなかったんでしょう。

 私も最後の優子さんの告白までは予想外でした」


 由香、どこまで予想してたの?


「だからここまでした優子さんの為にも言うんです。

 それが優子さんの、彼女の願いなんですから」


 順子姉さんと向かい合ったまま由香は言った。


「由香ちゃん分かってる。

 でも促して気づかせるのじゃなく、ちゃんと気づいて欲しいの...」


 順子姉さんは由香の手を握り首を振る。

 一体何なのか、何を優子姉さんは言おうとしたんだ?


「分かりました、今日は帰ります」


 順子姉さんの言葉に由香はあっさり引いて自分の荷物を持った。


「...そうだな帰ろうか」


「ああ」


 薬師兄ちゃんや富三兄ちゃん、順子姉さんと杏子姉さん達はぞろぞろ部屋を出て帰って行く。


 兄貴は呆然と椅子に座っていた。

 何だったんた?って顔をしてる。

 あれは引き摺らない時の顔だ。

 兄貴は分からない物は分からない、って割り切ると切り替えが早いからな。


 だから前回は恋愛のチャンスを逃し続けて大変な目にあったんだぞバカ兄貴!


 いかん前回の時間軸思い出したら腹立って来た。


「送ってくれる?」


 声に振り向くと由香が俺の後ろに居た。


「もう夕方でしょ?

 私はあなたの彼女よ、送ってくれる?」


「はい!」


「大変だな浩二」


「由香...」


 お二人さん同情ありがとう。

 家を出た俺達は並んで歩く。


「優子さんは本当に凄いよね」


 ポツリと由香が呟いた。


「うん、確かに凄かった」


「しっかり告白して、本当はきっと

『好きでした』って言うつもりだったでしょうけど思わず、

『好きです』って言っちゃって、だから慌てながら最後に順子さんにアシストまでしてすごい」


「最後ののメッセージって、順子姉さんの事だったの?」


「...あんなに順子さんと絡んでみんなに解答を知らせたはずなのに、浩二君!」


「はい」


「またね鈍感兄弟の弟さん」


 由香は家の手前で走って行っゃった。

 笑ってたから良いか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ