変わり行く未来
由香と恋人になり一週間が過ぎた。
あの日、学校に着いた俺達にクラスの皆は手を叩いて祝福してくれた。
『由香!』
『和歌ちゃん!!』
特に花谷さんは休み時間になるなり、由香の手を握り廊下へ出ていった。
『良かった!!』
花谷さんの叫び声は教室の中まで響き渡った程で、佑樹の苦笑いが印象的だった。
「行こか」
「うん!」
今日も俺達は顔を見合わせニッコリ笑いながら教室の扉を開ける。
「「「オオー!!」」」
「今日も新郎新婦が入場します!」
「「「パハパパー」」」
一斉にクラスの中から声が聞こえる。
俺達は笑顔で応えながら教卓の後ろを並んで歩く。
(なぜ教室を横切るかって?)
俺達の席がそれぞれ一番奥の列なだけで意味は無い。
(なぜ並ぶ必要があるかって?)
由香が俺の左手を離さないからだ。
(なぜ教室に入っても手を離さないかって?)
離したくないからだ。
「由香が...由香がついに女神になっちゃった...」
「コージースマイルを受け続けたから?
そうよ、そうなのね!?」
「ちょっと落ち着きなよ、まこと」
クラスメートの暴走が止まらない。
でも由香が女神と思うのは同意する。
実際本当に綺麗だし。
「オッス!」
「おはよう」
「和歌ちゃんおはよう」
「由香おはよ!」
席に向かう途中で佑樹と花谷さんに挨拶。
最近花谷さんは佑樹の机の向かいの席に座り、話してる事が多い。
「毎日、毎日よくやるよ」
「うん、佑樹にも心配かけたしね」
「ごめんなさい川口君』
俺達は笑顔で頭を下げた。
「ごめんなさいって態度じゃねえぞ」
佑樹は呆れた様子で笑う。
良いじゃないか。
「こら佑樹!
あんたも由香を祝福しなさい!」
花谷さんが佑樹の背中をパンと叩く。
凄い力だけど、佑樹は特に痛がる素振りをみせない。
慣れてるのか?
「幸せそうなのは分かるよ」
花谷さんに叩かれた背中を擦りながら苦笑いする佑樹。
どうしたんだ、何か言いたい様にみえる。
「そうよね、やっぱり好きな人と...
あー佑樹!!」
「なんだよ?」
「なんでもない!!」
よく分からない花谷さんな雄叫び、クラスの中は笑いに包まれた。
佑樹達と分かれ、由香が自分の席に座り、2列斜め後ろに俺が座る。
タイミングを計ったように先生が教室の扉を開けた。
「起立!」
日直の掛け声で皆一斉に立ち上がる。
「礼、着席!」
先生は席に座った生徒を見回して苦笑いを浮かべる。
「全く、いつまで浮かれてるんだ?
この前まで暗く沈んでいたのに、空気が全然違うぞ」
「先生仕方ないです。
浩二と橋本さんの笑顔を毎日見てたら、なあみんな?」
一番前の席に座っていたクラスメートが後ろを振り返った。
「そうだよ」
「本当に堪らないわ!由香まで目覚めちゃったんだから」
またざわつく教室。
「まあ橋本もすっかり元気になったようだし良かったよ」
先生は叱る事無く、由香を見て笑った。
心配してたんだろうな。
「先生にもご心配おかけしました。
もうすっかり大丈夫ですから」
ニッコリ笑顔の由香。
「あ、あ、そうみたいだな。
や、山添、お前も元気になってなによ
りだ」
「ありがとうございます先生」
約束のニッコリ。
「わ、分かった。
頼む2人共笑顔を向けないでくれ...」
先生は真っ赤な顔でうつ向いてしまった。
こうして1日が始まるのだった。
休み時間、花谷さんが由香を連れて廊下へ連れて行った。
2人だけの話があるんだろう。
「浩二」
佑樹に呼び止められる。
「少し良いか?」
「ああ」
佑樹は教室隅の空いている席に座り、その前の席に俺が座る。
「すまん耳を貸してくれ」
俺はそっと佑樹の手の方に耳を寄せる。
「相談したい事があるんだ。
来週の土曜日学校が終わったら家に来てくれ。
その日は俺練習が休みなんだ。
この事はみんなに、特に花谷には絶対内緒だぞ」
佑樹の言葉に俺は静かに頷いた。
「いいなあ由香!!」
廊下にいる花谷さんの大声が教室まで聞こえてきた。




