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兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
宝物の思い出です。
222/229

上手く作れましたよ。

「いらっしゃいませ、佑樹さん、和歌子さん」


制服のお二人は見たところ高校生くらい?

いえ、中学生の頃から高校生にしか見えませんでしたね。


「マスター...ジャーン!」


佑樹さんが後ろに回していた手を前にかざして賞状を見せました。


「これは...優勝されたんですね」


一目で分かりました、これは中学校のサッカー選手権、県大会優勝の賞状です。


「そうだよ、マスターに見て欲しくて学校帰りに持って来たんだぜ」


「佑樹ったら、自分の家族より先に見せるって聞かないの」


呆れた様に話す和歌子さんも笑顔です、佑樹さんが優勝された事が余程嬉しいのでしょう。


「凄いですね!」


私は手を叩いて喜びます、記憶の中では2回目ですが何度でも嬉しいもんです。

懐かしいお二人の姿も手伝い前回よりはしゃいでしまいました。


「ありがとうマスター」


佑樹さんは照れ臭そうに笑います。

やはり中身は中学生、まだまだ幼さが有りますね。


「...後、これ!」


和歌子さんが足元に置いていた鞄からトロフィーを取りだして見せてくれました。


「はて?」


これは記憶に無いですね、何でしょう?


「私も優勝したの」


「ほう、凄い!」


トロフィーには全国中学生剣道選手権県大会個人戦優勝の文字が刻まれてました。


「なんだよ和歌、結局見せるのか?」


「だってマスターが佑樹の賞状であんなに喜ぶんだもん、私も見せたくなるわよ」


成る程、前回和歌子さんは照れ臭くって私に見せる事が出来なかったんですね。

これはラッキーでした。


「素敵な物を見せて頂きありがとうございます。

お二人の活躍とても嬉しいです。

さあ此方に」


私はいつもの席にお二人を案内します。


「さて何を食べようかな?」


「佑樹まだ2時過ぎよ、昼は学食で食べたばかりじゃないの?」


メニューをテーブルの上で開く佑樹さんを見て呆れた顔の和歌子さん、でもしっかりメニューを確認してますね。


「それじゃ俺はハンバーグカレーね」


「畏まりました、和歌子さんは何を?」


「あ、え?私...どうしようかな?」


「無理するなよ和歌、なんなら俺の少し食べるか?」


「良いの?」


「俺は良いぜ、マスター取り分けても良いかな?」


「勿論良いですよ」


いつもお腹を空かせていたお二人ですからお安いご用です。


「それじゃマスターご飯大盛りで!」


「はい、それではお待ち下さい」


私は急ぎカウンターに戻ります。

久し振りの料理、張り切って参りましょう!


「おや?」


愛用のフライパンでハンバーグを焼いていると懐かしい感覚が甦ります。


「そうです、この感じですよ...」


フライパンを軽く持ち上げ中のハンバーグをクルリと廻します、最後の記憶では震える手で薬師さんに教えた事が思い出されました。


「ふむ」


嬉しさに、ついやり過ぎました。

まあ、いいでしょう。


「お待たせしました」


「わ!」


「マスターこれ...」


驚いてますね、気持ちは分かります。


「はい、特製ハンバーグ6つ入り特大カレー4人前です」


「あ、あのこれ値段は...」


おっと中学生のお小遣い事情を忘れてました。


「普通料金で結構ですよ、実はハンバーグのタネが今日は余ってしまいましたので無駄にする位なら佑樹さんと和歌子さんのお腹の中へと、是非」


まあ嘘も方便と言うことで。


「ありがとうございます」


仲良くスプーンを手に、取り皿へ移して食べるお二人の食べっぷり。

いや見事です。


「うー食べた、食べた」


「本当、もう入らないわ」


流石に多かったかもしれません、でも米粒一つも残さず綺麗に食べきってくれました。


「でも旨かったな」


「うん最高だった!」


お二人の素晴らしい笑顔、料理人冥利に尽きます。


「飲み物は何にする?」


「そうね...」


おっと、それは任せて下さい。


「お作りしたい飲み物があるんです。

如何でしょう?」


「え、何それ?」


「何だろう?」


目を輝かせ!お尋ねになるお二人ですが、


「お楽しみです」


そう言い残し、お皿を手にカウンターへ。

シンクにお皿を浸けて早速準備に移りましょう。


「エスプレッソポットは確かここに...ありましたね、後は泡立て機を...」


戸棚の中に仕舞われている懐かしい道具達、1つ1つを手にする私の胸に何かが迫って来ます。


「よし、良い出来です」


楊枝を置き、自信作を手にお二人の座るテーブルへ、楽しみです。


「お待たせしました」


「わ、すっげえ!」


「えっ何これ泡にハート?」


予想通りの反応ありがとうございます。


「抹茶ラテとエスプレッソラテのマキアートです」


「何それ?」


「初めて見た!」


そうでしょうね、確かマキアートはこの時代には無かった筈です。

まあ夢の中ですから勘弁して貰いましょう。


「凄いわマスター!いつ練習したの?」


「すっげえ、本当きれいだ」


「ありがとうございます」


頭を下げながら私は未来の事を思い出します。


(柚さんと練習したのです)


そう30年後、薬師さんの娘さんと一緒に練習しました。

その頃の私は病に侵されて指先も震え、こんなに綺麗な模様は描けませんでした。


「柚さんにお見せしたかった」


「マスター柚さんって?」


「初めて聞いたわ」


おっと、いけませんね未来を口にしては。


「独り言ですよ、さあどうぞ」


「何だか飲むのがもったいないぜ」


「本当崩したく無いわね」


お二人は名残惜しそうにしてます。


「早くしないと泡が崩れてしまいますよ」


「え?」


「本当、早く飲まなきゃ!」


ようやく口に運んでくれました。


「旨っ!」


「美味しい!」


笑顔のお二人、こんな素晴らしい時間をまた見られるとは本当に私は幸せ者です。


「おや?」


また目の前が...また始まりましたね。

さて次は...




「ふむ」


1人カウンターに佇み周りを見渡します。

少し店内が換わってますね、どの時代でしょうか?

 

「マスターこんにちは!」


「お久し振りです」


これは...柚さんを思い出したかからでしょうか?


「いらっしゃいませ薬師さん、白石さん」


さあ楽しい時間よ、再びです。



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