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兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
宝物の思い出です。
219/229

素晴らしい人生の思い出です。

番外編です。

「おや?」


いつの間にか眠っていたようですね。

暖かな日射しがカーテンの隙間から私の寝ていたベッドにさし込んでます。


「あ...」


声のした方を見ると中学生位の可愛い女の子が花瓶を持って驚いた顔で私を見て固まっています。


「あの私が分かりますか?」


はて、誰でしょう?

私には子供はいなかったはずです、でもどこかで見た事のあるような...


「白石様でしょうか?」


おや?違いましたか、女の子は涙を浮かべ固まってしまいました。

でも白石様に何処と無く似ていたもので。


「白石杏子は母です...」


ああ、成る程娘さんでしたか、それは似ていて当然ですね。

そう、白石様の娘さんと言う事は...


「薬師様の?」


「はい、薬師明信は父です」


そうですか、薬師明信様と白石杏子様の娘さんでしたか。

道理で2人に似てらっしゃる。


「や、薬師柚です」


「そう、柚さんですね」


思い出しました、あなたは薬師様の一人娘の薬師柚さんでした。

では何故私はベッドに横たわっているのでしょう?


「ふむ」


体を起こそうとしますが酷く重いです、力が全く入りません。


「おじいちゃん無理しないで!」


柚ちゃんが私の体を優しく抱き止めてくれました。

先程の通り、私には子供が居ませんでした。

しかしおじいちゃんと呼ばれるのは悪い気はしませんね。


「どうしましたか?」


「おじいちゃんの意識が!」


「分かりました、直ぐに連絡致します」


扉が開き白衣の女性が入って来ました。

連絡とは誰にするのでしょう?

確か妻はもう3年前に...


思い出しました、私は80歳のおじいちゃんでした。

半年前から入院していたのです。

確か余命の最終宣告を受けて...


「マスター!!」


激しく息を切らした紳士が部屋に飛び込んで来ました。

その顔、もちろん分かりましたよ。


「薬師様...」


「マスター分かるんだね?そう明信だよ!」


薬師様は相変わらずよくお泣きになる、娘さんの前ですよ。


「店は...」


「だ、大丈夫、今日は定休日です。

絶対に臨時で休みません、マスターとの約束だから...」


そうです、私が体調を崩し、店を閉じる話を聞いた薬師様は会社を辞めて弟子入りしたんです。

お止めするつもりで出した条件が『定休日以外休んではいけない』でしたね。


「頑張っているみたいですね」


「ええ、私なりに、ですが」


「そうですか」


「でも、まだマスターには敵いません」


「当たり前だよ、父さん最初コーヒーもまともに淹れられ無かったじゃない」


後ろで柚さんが泣きながら笑っています。

そんな事は無いですよ、薬師様は努力されましたから。

3年の特訓で一通りの料理まで作られるようになったのですから。

私の余命が3年延びたのもそのお蔭です。

(安心したら何故か眠くなって...)


「マスター!!まだ逝っちゃダメだ!

浩二が浩二の家族が来るんだから!」


「...浩二様が?」


「そうだよ、浩二が来るんだ、今此処に向かってる。

そう由香さんや娘の知香ちゃんと藍香ちゃんも!」


「そうですか、皆様も...」


「そうだよ、知香ちゃんの子供も来るんだ、マスターに会えるのを楽しみにしてるんだ...」


「それは嬉しいですね...早速コーヒーを淹れなくては...」


「マスター?マスター!!」


薬師様の声が遠くに聞こえます。

安心して下さい、浩二様達にコーヒーをお淹れするまでは...死にませんから。






「おや?」


私はいつの間にか懐かしいカウンターに立ち愛用のエプロンを締めていました。


(これはどうした事でしょう?)


私は慌てて化粧室の鏡に自分の姿を写します。


「これは...」


そこに写っていたのは私、そう40過ぎの私の姿でした。


「ふむ」


顔を擦りながら酷く混乱してます。


「こんにちはマスター」


混乱する私の背後から扉の開く音と共に懐かしい声が聞こえました。

それは私の大切な人、遥かに年下ですが親友と言っても良い人です。


「いらっしゃいませ浩二さん」


何が起こったか分かりません、しかしこの時間を楽しみましょう。

私はそう考える事にしました。

またお付き合い下さい。

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