俺のプロポーズ。 中編
「知香ちゃん、こっちだよ」
僕(伊藤浩一16歳)は幼馴染みの山添知香ちゃんと藍香ちゃんを喫茶店に呼んだ。
「浩一さん、お待たせしました」
「あの、私もいるんだよ」
知香ちゃんの後ろに居た藍香ちゃんが少し頬を膨らました。
「どうしたの藍香ちゃん?」
「だって知香姉しか呼ばないんだもん」
「え?そうだった?」
うっかりしていた。
「もう藍香、そんな事で浩一さんを困らせないの」
知香ちゃんは優しく藍香ちゃんを諭す。
何て優しいお姉さんだろう。
1人っ子の僕には羨ましくなる。
「いらっしゃいませ」
喫茶店のマスターは優しい笑顔を浮かべて水を運んでくれた。
「ご注文は?」
「僕はホットで」
「私も同じ物を」
「私はミルクティーを下さい」
「かしこまりました」
僕はここの喫茶店の常連だ。
僕だけじゃない、知香ちゃんと藍香ちゃんもだ。
何でも浩二おじさんが小学生の頃からの常連だそうだ。
「それで浩一さん」
「うん用意出来た?」
「ええ何とか」
知香ちゃんは鞄からMDを取り出した。
「ありがとう、これで入場の曲は大丈夫だね」
僕はMDを受け取る。
「姉さんったら『自分の時も流して欲しい曲を』って選曲大変だったのよ」
藍香ちゃんはイタズラっぽく笑う。
「自分の時?」
「そうだよ、自分の結婚式」
「け、結婚式!?」
自分の結婚式と聞いて僕は固まってしまう。
知香ちゃんも同じ様に固まっている。
「今回は知香姉と浩一さんじゃないよ、お父さん達のだよ」
「わ、分かってるわよ」
知香ちゃん、そんな赤い顔しないで僕の顔も赤くなるよ。
「はいはい御馳走様」
藍香ちゃんは少し呆れた顔で僕達を見た。
「お待たせしました」
マスターが注文した飲み物を運んでくれる。
いつも思うけど持ってくるタイミングが完璧だ。
「美味しいです」
僕は赤い顔でコーヒーを一口飲んでマスターに言った。
「ありがとうございます。浩一さんは浩二さんの様に微笑まれますね」
「そうですか?」
マスターの言葉に僕は不思議な気持ちがする。
それは母さんや祐一さん、佑樹おじさん達にも言われるからだ。
「ええ、周りを幸せで包み込んでしまう笑顔ですよ」
「分かる」
藍香ちゃんが同意する。
「分かるの?」
「うん。お父さんの笑顔って不思議よね、私達娘にも遺伝しているけど一番雰囲気が近いのは浩一さんよね」
「ええ、私もそう思います」
「知香ちゃんも?」
「はい、幸せをあげたいって思う浩一さんの優しさが溢れているからだと思いますよ」
そう言って知香ちゃんは笑った。
その笑顔は僕の顔をまた赤くするには充分な破壊力だった。
「あ、ありがとう」
また僕は顔が赤くなってしまった。
知香ちゃんや藍香ちゃんの笑顔の方が僕には魅力があると思う。
実際2人は凄い美人だし。
知香ちゃんが仁政中学に入学した時高校の僕の所まで噂になった程だ。
『凄い美少女が入って来た』って。
そんな知香ちゃんを意識し始めたのはいつからだろう?
確かおじさん達の隣に越した時くらいかな...
「浩一さん?」
僕が考えてると知香ちゃんは不思議そうな顔で僕を見ていた。
「あ、な、何かな?」
「大丈夫?ごめんね藍香が変な事言って...」
「変だなんて僕の方こそ嬉しくて」
「え?」
「いやあの、知香ちゃんありがとう...」
恥ずかしそうな知香ちゃんを見た僕の心臓の鼓動は激しくなるのを自覚しながら何とか返事をするのだった。