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兄貴への恋を実らせてあげたい!  作者: じいちゃんっ子
番外編みんなのプロポーズ。
212/229

孝のプロポーズ。前編

その日俺は中学時代からの友人青木孝(27歳)に呼び出され、待ち合わせ場所の炉端屋に来た。


「おう浩二」


「あれ佑樹も?」


「ああ、孝に呼び出された」


予約されていたテーブルに行くと孝の姿は無く

同じく親友の川口佑樹が座っていた。


「孝は?」


「今電話があって少し遅れるそうだ」


そう言って佑樹は携帯電話を俺に見せた。

可愛い黄色い(プー)のストラップがぶらさがっている。

娘(5歳)とペアだそうで宝物と言ってた。

ちなみに俺の携帯ストラップは由香のプレゼントのバルボア(ロッキー)

でも人には見せては駄目だそうだ。(なぜ?)


「そっか」


「先に始めてくれだとさ」


「あいよ」


本来は呼び出した本人を無視して飲む事はしないが気の置けぬ仲間なので先に飲む事にした。


「何の用だろう?」


「そりゃ川井にプロポーズだろ?」


「そうだよな、僕もそう思うよ」


酒の注文を終えた佑樹は自信ありげに言う。

俺もそう思う。

孝と川井さんは2人共27歳、幼稚園からの付き合いで交際歴は23年目だ。

凄いね結婚してりゃ後2年で銀婚式だ。


「それじゃ青木孝の結婚を祝って乾杯」


「おう乾杯!!」


俺達は生中のジョッキを合わせて一気に飲み干した。


「ウマイ!」


「堪らんな!」


俺達は親友の結婚前祝いを信じて杯を重ねた。


「孝が式すりゃ後は浩二だけだな」


「僕は結婚しているぞ?」


「籍だけはな、でも式はまだだろ?」


「...う」


「まあ浩二は忙しくてなかなかだよな」


「まあな」


「早く式を挙げろよ」


「何で急かす?」


「仕返しだ」


「仕返し?」


「ああ、よくも俺達の式を爆笑に変えたな」


「爆笑?」


「忘れたのか?俺と和歌の式で薬師さんとした事を!」


「感動しなかったか?」


俺は佑樹の式で(二次会ではない)薬師さんとトランクス一枚になってバルボア(ロッキー)のラストシーンを再現したのだ。

薬師さんがチャンピオン(アポロ)役。

最後に敗れた俺が女装(必要ないが)した祐一を抱えて『ワカドリアーン』と叫んで終る素晴らしい劇だった。

祐一は演じながら泣いていたし。


「するか!和歌が笑いすぎて化粧が剥がれて後の式進行が大変だったぞ!」


「そうか、すまん」


そう言えば由香も怒ってたな、娘達(当時4歳と3歳)は喜んでたが。

薬師さんも杏子姉さんに叱られたそうだ。

久し振りに『明信』って呼び捨てにされたと笑ってた。


「すまない遅れた」


盛り上がる俺達のテーブルに息を切らした孝がやって来た。


「構わねえよ、勝手にやらして貰ってるぜ」


「ああ、いい店だな、酒も旨いし肴も大したもんだ。もうジョッキも5杯めだ」


俺と佑樹はご機嫌で孝に笑った。


「そうか気に入ってくれて良かった。メートルもすっかり上がってるな」


『メートルが上がる』か、流石は孝、懐かしい言葉だ。

孝も笑顔で椅子に座り飲み物をオーダーした。


「それじゃ改めて乾杯!!」


「「乾杯!!」」


改めて乾杯した俺達は孝が呼び出した理由を待っていたがなかなか言わない。

『子供は?』とか『仕事は?』等当たり障りの無い話が続いた。


「なあ孝、今日は何の用だ?」


佑樹らしくズバッと切り込んだ。


「あ、ああ実は瑠璃子に来週プロポーズをしようと思っているんだ...」


「そうか、良かったな孝。浩二、俺の予想通りだな!」


「ああ、孝おめでとう!」


「...まだ早いよ」


少し考え込む孝に言い知れぬ空気を感じる。


「何かあったのか?」


「浮気か?」


「バレたのか?」


「何でそうなる?」


「いや、だってな。浩二?」


「ああ、なあ佑樹?」


「お前達は俺を何だと思っているんだ?」


「日本の親父」


「昭和のオトン」


「あのな...」


孝は項垂れて固まる。

佑樹と顔を見合わせ、流石にこれ以上のノリは不味いと酔った頭でも分かる。


「瑠璃子に浮気は御法度だよ」


確かに川井さんの両親の離婚理由は父親の浮気だ。浮気の嫌悪感は凄まじかった。


「そういやスナックがバレた時も大変だったな」


佑樹は遠い目をする。

5年前俺達3人はスナックに行ったのがバレて佑樹は花谷(現佑樹の嫁)さんからビンタ1発。

孝は川井さんから1週間の無言攻撃、

俺は由香と娘達からの冷たい視線攻撃数日を食らった。(律子に取り成して貰い解除されたが)


「それじゃなぜ?」


佑樹も真顔になり孝に迫った。顔はまだ赤いが。


「実はな...」


孝は訳を説明する。


「成る程ね」


「長かった春だよ」


『長かった春』か、確かに俺達の中では最後の結婚だが社会人になってまだ5年だし孝の理由も筋が通っている。


「話し合ったのか?」


「いや」


「なぜだ?」


「聞く耳を持ってくれない」


「それでプロポーズなんか上手く行くのか?」


「分からない。でも1つのケジメだ」


孝の顔には決意が宿っている。

最悪な結末(別れる)は避けたい。


「なあ孝」


「なんだい?」


「川井さんに連絡は?」


「いや、まだだ、東京に戻る前日にでもするよ」


「いや駄目だ。明日にでも電話してくれ、そうだなプロポーズを匂わして」


(あらかじ)め匂わすのか?」


「そうだ」


孝は俺をじっと見つめる。

俺の目が素面なのに気がついたみたいだ。


「分かった。後は?」


「後は大丈夫、川井さんを信じてプロポーズをしてくれ」


「本当かよ浩二?」


「ああ佑樹」


『後はまかせろ』

帰ってから由香に話して後は託そう。

俺はそう考えた。



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