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エピローグ1 後編

「おめでとう由香、浩二さん」


律子は本当に嬉しそうに笑った。 


「ありがとう律子さん」

 

「ありがとう」


俺と由香は頭を下げた。


「いいえ、これでまた1つ心残りが消えたわ」


律子はそう言って由香の手を握った。


「律子さん...」


律子は由香に言っていた。

『私は前回浩二さんと素晴らしい結婚式を挙げたの、だから由香も絶対に浩二さんと素晴らしい式を挙げて』と。

そして律子は俺の仲間や知り合いに声を掛け、みんなの協力を得て今日の式が実現した。


「よかったね母さん」


「ええ」


浩一君の言葉に頷く律子。

浩一君は俺と律子の秘密(前世の記憶)は知らない、勿論俺達の娘にも。

もし知られると何かとややこしいからだ。

それにしても本当に良い子に育ったもんだ、娘はやらんが。


「お父さんなに考えてるの?」


「浩一君はナイスガイだなって」


「それだけ?」


「うん」


「「嘘!」」


またしても見破られる。

娘にまで見破られるとは俺はどれだけ分かりやすいんだ?

これで医者をしている自分が怖くなる。

律子と一旦挨拶を終えてじいちゃんとばあちゃんは退席する。高齢の2人には長時間の出席は体に悪いからだ。

律子は由香と俺の両親と親族席に移る。

また後で由香と律子達と話せばいい。


俺と由香、知香と藍香に浩一君は招待客に挨拶に回った。


「懐かしいな!」


「本当、デザイン一緒ね」


「昔を思い出すな」


「ええ」


「僕まだ着られると思うよ」


子供達の制服を見た川口(佑樹、和歌子)夫婦と青木(孝、瑠璃子)夫婦と祐一は言った。

浩一君は仁政高校、知香と藍香は仁政中学校の制服だからだ。


「まさか親の出身校に行くとは思わなかっただろ?」


「まあな、でも浩一君が仁政中学校に入学した時に覚悟はしたよ」


佑樹の言葉に俺は諦めた様に返事をする。


「まあ良いじゃない、知香ちゃん藍香ちゃん今いくつだっけ?」


「14歳、中2です。」


「13歳、中1です。」


「それじゃ2人共仁政高校に上がるのね?」


「....」


和歌子さんの質問にハッキリ答えた知香だが瑠璃子さんの質問には答える事が出来ない。


「どうしたの知香ちゃん?」


「私は仁政高校に行くつもりだけど、姉さん今迷っているの」


「藍香!」


「良いじゃない知香ちゃん、言わしてあげて」


藍香の言葉を遮ろうとした知香に祐一が優しく言った。


「姉さんが高校に上がると浩一君は高校卒業しちゃうでしょ、だから浩一君の行く大学に近くにある高校に行こうか迷ってるの」


「知香ちゃん本当?」


藍香の言葉にみんな驚く、そうだろうな。


「だって一緒に学校行きたいんだもん...」


知香は恥ずかしそうに小声で言った。


「でも大学の通学時間てバラバラよ?」


「そうよ高校のリズムに合わせられないわよ」


「分かってるもん、でも一緒に行きたいの...」


和歌子さんと瑠璃子さんの言葉に知香は真っ赤になりながら淋しそうに答えた。


「知香ちゃん!」


「わっ!」


感極まった祐一が知香に抱きつく。


(何する!お前は男だろ?多分...)


「すれ違いの恋、切ないよね。分かるよ、分かる」


「祐一さん...」


「祐ちゃん!」


「はい祐ちゃん!」


知香の呟きに訂正させる祐一。

祐一は大学を卒業後関西で就職してインテリアデザインの仕事に就いた。

相変わらずの風貌で女性にしか見えないが大学時代は結構頑張って男ぽっく振る舞おうとしたが上手く行かず、よく当時の俺の下宿しているマンションに愚痴りに来ていた。


近所の人達に(奥さんが里帰り出産している最中に浮気している)と勘違いされたが、その後独立して3年前に地元で同じインテリアデザインの事務所を開業した。


「偉いね、でも仕方ないよ。浩二がもっと早く知香ちゃんを作らないのが悪いんだよ」


「こら!」


祐一の目茶苦茶な言葉に俺は思わず突っ込む。


「でも知香ちゃん浩一君は絶対に知香ちゃんを離さないから安心して仁政高校に行ったら?仁政高校は良い高校だよ」


「そうよ安心して」


「そうだ安心しろよ知香」


「大丈夫よ浩一君と知香ちゃんなら」


「ああ」


祐一の言葉に佑樹達も頷く。

(何が安心なんだよ)


「浩一君...」


知香は潤んだ瞳で浩一君...浩一を見た。


「...うん。大丈夫だよ知香ちゃん」


「嬉しい!」


知香は浩一に抱きついて喜んだ。


「ああ!」


俺は思わず大きな声が出た。


「良かったな浩二」


「これで一件落着だな」


項垂れる俺に佑樹と孝が嬉しそうに言った。

(覚えてろよ)


「良かったねお姉ちゃん!」


「うん!」


「浩一君、知香をお願いね」


「はい!」


藍香の言葉に知香も嬉しそうに言った。更に由香まで、そして浩一まで!


「ありがとう、浩一良かったわね」


いつの間にか律子が後ろにいた。


「皆様挨拶が遅れました」


「お久し振りです保育園の園長はどうですか?」


律子の姿を見たみんなが声を掛ける。

俺と由香の式が遅れた理由、それは今律子が保育園の園長をしている事に関係する。

2年前律子は幼稚園や保育園が少なくて子供を預ける事が出来ないと、保護者の現状を話した。

俺と由香は何とかならないかと知り合いに訪ねて1つのアイデアを聞いた。


『法人を起こして保育園を作ってみては?』と。 

この言葉に俺は橋本家の人脈を使い法人を起こした。

理事長は由香の伯父さんに就任して貰った。

大学を辞められて次の事を考えていた由香の伯父さん(隆一さん)はこの話しに乗ってくれて橋本家、本家の敷地半分と洋館を提供してくれたのだ。

(もちろん喜兵衛さんも快く了解してくれた)


提供された敷地を園庭に洋館を保育園の園舎に改装して無事保育園は2年前に開園したのだ。

そして園長には律子が就任した。


「経営は橋本家の皆様が本職ですのでに任せております。

私は園長の仕事というより一保育士の仕事に専念させて貰ってますよ」


そう言って笑う律子は本当に充実している様だ。

今律子はお姉さん園長先生と言われている。

今回の人生では念願の自分の子供が一人しか抱けなかった律子だが園で沢山の子供達に囲まれているのを見ると俺も由香も本当に嬉しい。


「今律子さん祐一と暮らしているって本当か?」


「はい」


「本当だよ」


佑樹の質問に祐一と律子はあっさり答えた。

律子と祐一は2年前から一緒に暮らしている。 

もちろん浩一君も一緒だ。

『いっその事結婚すれば』との話も周りからあったが2人はにこやかに断った。


唯一言


『楽しみは次の人生にとって置きたいの』


そう言って。


律子の言葉は分かるが祐一は何でだ?



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