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みんなの夢を実らせたくて! 後編

ありがとうございました。

「和歌ちゃん、先に浩一と式場に行っておいてね」


「浩二さん後でね。知香、藍香、早く来なさい」


式場に入る前に志穂さんと美穂さんの子供達を届ける為、由香と律子は新婦控え室に行った。

知香と藍香は結婚式の大切なお役目の為由香(お母さん)と一緒に付いて行った。

俺は由香と律子に抱かれた4人の子供達を見ながら志穂さんと美穂さんの今までを思い出す。


志穂さんと美穂さんは兄貴や順子さんと同じ東大の医学部に現役で合格した。

大学時代はよく隣に住む兄貴と順子さんの部屋に上がり込み同じ時を長く過ごした。

その一方2人共彼氏を作り結婚するのかと思ったが結局は卒業式を待たずに2人共破局。


『『有一様を見ていたせいだ』』そう2人に兄貴は責められたそうだ。

そして志穂さんと美穂さんは産婦人科医となり父親(隆一)のいる大学に移り研修医を経て不妊治療の研究者となった。


3年前に新しい体外受精の実験をする事になった志穂さんは自ら献体となり、無事双子の男の子を授かった。

隆二さん誕生以来約50年振りの男子誕生に橋本家は大騒ぎになった。

それを見て触発された訳じゃないだろうが美穂さんも新しい体外受精の実験の為に自ら献体となり見事妊娠に成功した。

産まれたのはまたもや双子の男の子。

忽ち橋本家の本家は4人の男子に恵まれた事となった。


ちなみに志穂さんと美穂さんの受精卵を作るために使用された精子は大学病院に冷凍保存されていたある兄弟の物としか分かっておらず。その他の事は一切分からない、とされたが生まれてきた赤ちゃんの顔が誰かに似ているような...

怖いので俺は聞かない事にしている。


ちなみに由香の姉梨香さんも、5年前に見合い結婚をした。

今は3人の女の子に恵まれ関東で幸せに暮らしていると由香から聞いた。


そんな事を思い出しながら俺は式場に入った。

祭壇に向かって右側の新郎側の後列、友人席に和歌子さんは座った。隣には既に佑樹と佑子ちゃんが座っていた。

後数人俺の知っている友人達もいるはずだが今は確認している場合ではないので親族席のある前方に急ぐ。


現在教会の式場には親族と親しい友人や関係者しかおらず、一般の参列者はこの後で行われるホテル最大披露宴会場での参加となっていた。


俺が座るのは最前列に1つ後ろの列だった。

最前列の4人席の右側には両親が座っていた。

少し年老いたがまだまだ50代元気一杯である。

左横にはじいちゃんとばあちゃんが座っている。じいちゃんは数年前から少し体が衰えて来たが前回の時間軸では既に亡くなっていたから後は出来るだけ幸せに長生きして欲しい。俺はそう思った。


「お待たせ」


由香が無事子供を志穂さんと美穂さんに届けて俺の横の席に座った。


「ご苦労様」


俺は由香にそう言いながら後ろを振り返る。

律子が親族席の最後尾に座るのが見えた。

本来律子は友人席になるが前回の時間軸では兄貴は律子にとって義兄で俺と同様に凄く離婚後の兄貴を心配していたので兄貴に言って特別に親族席に座って貰った。


次に俺は新婦側の友人席を見た。

少し慌てて各々の双子を連れて座る志穂さんと美穂さんが見えた。


「あの2人は変わらないな」


俺はそう呟きながら1つ気になる事を思い出す。


『なかなか借りを返せず申し訳ありません』

俺は隆一さんにそう言ったら『借りは返して貰ったよ』と満面の笑みで言われた。


(あれってもしかして....)


深く考えるのは止そう。


しばらくすると祭壇の前に白いタキシードを着た兄貴と神父が入って来た。

相変わらず小柄で天使の様な可愛らしさは健在だ、もう27歳だが。


続いてパイプオルガンが教会の中に響いて一番後ろの扉が開いた。

扉の向こうに2人並ぶ人影。

後ろからライトが照らされ中々幻想的な演出だ。

光の中から順子さんと順子さんのお父さんが現れた。

190cmを越える順子さんのお父さんと170cm

を越える順子さん。とても大柄な2人だが今日の順子さんは大きな体を感じさせないくらい可憐に輝いている。

幸せが滲み出るとはこう言う事なんだと俺は確信した。

パイプオルガンの演奏が順子さんが歩くバージンロードにピタリと合って、まるで映画のワンシーンの様であった。

さすがは杏子さんの演奏である。

そんな順子さんのロングベールを持つのはベールガールを仰せ遣った我が娘知香と藍香だ。


「うん可愛い」


俺は親バカ丸出して呟いた。

由香は...泣いてるね、分かるよ俺も泣きそうだもん。


やがて順子さんとお父さんは祭壇前に到着して順子さんの横をお父さんから兄貴に交代した。

俺は感動して兄貴と順子さんの体格の違いなんか全く気にならなくなっていた。


その後讃美歌や聖書の言葉と続いて

神父から誓い言葉が読み上げられた。


「新郎山添有一よ、あなたはそこにいる新婦十河順子を病める時も、健やかな時も、愛を持って互いに支えあう事を誓いますか?」


「誓います」


神父の問いに兄貴はしっかり答えた。


「新婦十河順子よ......」


「誓います!!」


先程と同じ口上が述べられ順子さんは兄貴より一際大きな声で答えた。

順子さんは自らの大声が教会内に響いてた事に恥ずかしさで真っ赤になるが、兄貴が耳許で何か囁くと涙を浮かべ笑顔になった。


余りに大きな声で数人の赤ちゃんが泣き出すハプニングがあったが、誰も順子さんを責めたりしなかった。

みんな順子さんが一途に只兄貴を愛し続けて今日この日を迎えた事を知っているのだから。


その後指輪の交換があり、いよいよ兄貴が順子さんのベールをあげてキスを....

しかし兄貴は唇ではなく順子さんの頬にした。

兄貴はやはり最後まで恥ずかしがり屋さんだった。


それでも幸せそうな順子さんを見ながら周りの参列者の大人達は満足そうな笑みを浮かべていた。


「良いな...」


由香はポツリと言った。

由香と俺は学生結婚でしかもお互い未だ研修医で結婚式を挙げていなかった。


「後2年待ってね」


俺は由香に囁いた。2年したら由香のお父さんの医院を本格的に手伝う予定だからだ。


「ごめんね、ありがとう」


由香はそう言って笑った。

式が終わり参列者は式場を出た。


みんな兄貴と順子さんが出て来ると一斉に米と花びらを撒いた。

最後に順子さんがブーケトスをした。

力強く投げられたブーケは最後列で立っていた坂倉唯さんがキャッチする。


「おい順子。

私は去年結婚したぞ、もう1回結婚しろというのか?」


そう言って笑った。

唯さんは大学を卒業後東京の大手出版社に勤めている。

そこで知り合った同僚と結婚した。

兄貴達も結婚式に出席して俺も結婚式の写真を見せて貰ったがどこか兄貴に良く似た笑顔の輝く男性だった。

結婚式の唯さんも勿論輝く笑顔で写っていた。

どうやら唯さんも幸せを掴んだ様だ。


みんな笑顔だ。

俺は今までのやり直して来た23年を振り返る。

成功したり、失敗したり、判断を誤って人の人生を狂わしたりもした。

でも俺は一生懸命やって来た。

俺の周りの人を助けて、応援して来た。


そして今日兄貴は最高の愛を手に入れた。


俺の大きな願いが叶ったと思った瞬間だった。


俺が目を潤ませて兄貴達を見ていたら由香と律子がやって来た。

子供達は唯さんから再度手渡されたブーケに夢中のようだ。


「浩二さん何を考えていたの?」


「うん今までをの人生を振り返っていたんだ」


由香の質問に俺は答えた。


「あなたが新しく転生してからの事は由香ちゃんや有一さんから聞いたわ。

みんなの為に凄く凄く頑張って来たじゃない。

これからは少し自分の為に生きても良いのよ」


律子の言葉に由香も頷いた。


「ありがとう。でも僕は今回の人生をこう生きたいって決めてるんだ」


「「どう生きたいと決めているの?」」


由香と律子の質問に俺はこう答えた。


「みんなの夢を実らせたいっ!」


これで本編は終わりです。

後エピローグと閑話的な番外編を数話考えています。

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