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みんなの進路。

高校3年生になった俺達はいよいよ卒業式を迎えた。

俺と由香、佑樹と花谷さんの4人は久し振りに一緒の電車で学校に向かった、


「あーこの通学コースで学校に行くのも今日で最後か」


「そうね6年間通いなれたコースが今日で終わりだなんて信じられないわ」 


「全くだ」


佑樹と花谷さんはのんびり駅から学校まで歩きながら会話を楽しんでいる。

由香は俺の手を握りながら早くも涙ぐんでいた。


「由香もう泣いてるの?」


「だって...」


「もう泣かないの。また会おうと思えば会えるじゃない」


「そんな事ないよ和歌ちゃん達は関東の大学に行っちゃうじゃない...」


由香そう言って俯いた。

佑樹と花谷さんは関東にある国立大学に入学が決まり俺達とは違う進学先となった。

小学1年から高校3年まで12年間の付き合いでいよいよ別れの時を迎えるのだ。


「由香達だって大阪に行くんでしょ?」


「そうだ俺達とはどうしたって一緒には行けない訳だろ?」


「そうなんだけど」


「由香も浩二と一緒の大学で夢を叶える為に旅立つんでしょ?

私も一緒よ。佑樹と一緒の大学で夢を叶えるんだから素晴らしい事よ」


花谷さんはそう言って由香の頭を優しく撫でる、160cm近い身長の由香だが身長170cm近い花谷さんからすればまだまだ小さな由香だった。


「もう和歌ちゃん私高校3年よ」


「いいのいいの。」


少し嫌がる由香の頭を優しく撫でる花谷さんの目にも少し光る物があった。

俺と佑樹はそんな2人の様子を見ていた。

花谷さんは大学で教職課程を取り先生を目指し、佑樹は大学でサッカーで続けながら体育課程でスポーツ医学を学ぶそうだ。


「しかしどうして大阪の大学なんだ?

浩二と橋本なら有一さんの東大は無理にしても他に行ける上の大学はあっただろ?」


「そうよ医学部なら関東にも沢山あるのにどうして?」


佑樹と花谷さんは何度も俺達に聞いていた事を改めて聞いた。


「秘密」


「またかよ」


「結局は言わないのね」


由香は人指し指を口に当てていたずらっぽく笑った。

俺と由香が大阪の大学に行く理由は2つ。

1つはその大学が由香の父親の出身校である事。

もう1つは俺が前回大阪で大学生活を送った話を由香が聞いて今回は俺と一緒に俺の大阪の思い出に上書きをしたいと言ったからだ。

もっとも俺が前回行った公立大学でなく今回は国立大学だが。


「それぞれの道を行くのね」


「ああ」


「でも俺達は一生の親友だぜ」


「由香、私達もよ」


「もちろんだよ、和歌ちゃん」


そう言いながら学校へ向かった。


学校に着くと正門前に卒業式の文字が書かれた看板が目に入りやっぱり今日は卒業式だと認識する。


そして俺と由香は佑樹や花谷さんと別れて特進クラスのある校舎に入った。


「浩二おはよう」


「おはよう孝」


「由香ちゃんおはよう」


「瑠璃ちゃんおはよう」


孝と川井さんが校舎に入ると待っていた。


「いよいよ卒業式だな、まだ信じられないよ」


「そうね、まだ信じられないわ。明日も由香ちゃん達とこうしてまた会える気がするもの」


孝と川井さんが俺達に言った。

由香はまた涙を溢しそうになっている。 


「私帰省したら絶対瑠璃ちゃんと青木君に会いに行くからね」


「由香ちゃん待ってるわ」


孝と川井さんは地元の国立大学に進む事になっている。

2人共いくらでも他に行ける大学はあったのだが(特に孝は東大を狙える学力があった。)

川井さんがお母さんを1人に出来ないと言って地元に残る事を選択すると孝は川井さんと一緒に残る事を決めた。

川井さんは孝に『私の事は気にしないで』と言ったが孝が『僕は瑠璃子と一緒だ一生離れるものか』そう言って決めたそうだ。

川井さんが由香と花谷さんにこっそり教えてくれた。

孝、やる時はやるな。


「ああ僕も信じられないよ。孝と6年間の思い出がありすぎてな」


「全くだ。浩二や佑樹、祐一との思い出は僕の一生の宝物だよ」


「祐一と言えばいないな?」


「本当、いつも青木君や瑠璃ちゃんと一緒なのに」


俺と由香は祐一を探すが見つからない。

孝と川井さんは笑いながら廊下の角を指さした。

すると祐一が慌てて姿を隠す様子が見えた。


「おい祐一どうした?」


「祐ちゃんどうしたの?」


俺と由香が近づくと祐一は髪の毛を押さえながら顔を出した。


「おはよう...」


「何故髪を隠している?」


「頭でも痛いの?」


「違うよ、笑わない?」


祐一は上目遣いで俺達に聞いた。


「笑う?何で?」


「よく分からないけど笑わないよ」


「本当?信じたよ」


祐一はそう言うと髪を押さえていた手を離した。

すると肩まであった祐一の髪が首筋位までにカットされていた。


「祐ちゃんその髪形どうしたの?」


「祐一何かあったのか?」


「....言わない」


祐一は恥ずかしそうに理由を言わなかった。


「男らしい髪形にしたかったんだって」


「孝、駄目!」


孝が笑いながら言った。


「男らしい髪形?」


「ああ大学から印象を男らしく変えようと散髪に行って髪をカットして貰ったらこの髪形になっていたんだってよ」


なる程、祐一はここ2年くらい前から自分の事を僕から俺に変えようとしたり、フアンシーグッズを使わなくしようとしたりしたが失敗していた。

だから卒業式には男らしくイメチェンしようとしたのか。

残念だな。男のロン毛を目指したのだろうがどう見てもショートボブの女の子にしか見えない。

しかも可愛い。とても可愛い。凄く可愛い。


「可愛い!」


由香が祐一に笑顔で抱きついた。


「ほらやっぱり!」


祐一は観念した様に叫んだ。


「でしょでしょ!」


川井さんも祐一に抱きついた。


「祐一の大学生活も多難だな」


「全くだ」


俺と孝は祐一の大学生活が多難な物になるのを感じていた。

祐一は俺や由香と同じ関西の国立大学に行く事が決まっている。

もっとも大阪ではなくお隣の兵庫だが。

オシャレな街が気に入ったと言っていた。

『いつでも浩二君と由香ちゃんに会えるよ』祐一はそう言っていた。


そうこうするうちに始業のベルが鳴り。

卒業式となった。


俺と由香はこうして高校を卒業した。


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