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またね。

吉田家における話し合いも無事に終わり律子が橋本家を去る日が来た。

俺と由香は見送りの為に橋本家の本家の律子が2週間寝泊まりした部屋にいる。

律子の両親が車で迎えに来る予定になっていた。


「由香ちゃん本当にありがとう」


律子は由香に頭を下げた。


「ううん、こちらこそ沢山お話し出来て楽しかった」


「私もよ」


「元気な赤ちゃん産んでね」


「ありがとう。次は由香ちゃんよ。

絶対に浩二君の赤ちゃんを産んであげてね」


「もちろんよ。絶対、絶対に浩二君の赤ちゃんを産んでみせるからね」


律子の言葉に由香は力強く何度も頷いた。

俺の不妊検査結果を聞いた律子は由香と抱き合って泣いたそうだ。


「でも由香ちゃん子作りは大人になってからよ」


「分かってるわよ」


律子の言葉に由香は頬を膨らました。


「浩二さんもありがとう」


「ああ律子も...って呼び捨ては不味いよな」


「ふふ、律子で良いわよ」


「そうよ律子さんにとって浩二君は永遠に特別な人なんだから」


由香は俺にそう言った。

律子と由香。頻繁に会うことは無いが2人はこの先も上手く付き合って行くのだろう。

これだけ仲が良いのだから。


「あら由香ちゃん特別な人だなんていいのかしら、それじゃ来世があったら今度は私の旦那様かな?」


「それは駄目!浩二君は絶対に譲れないんだから」  


「それじゃ早い者勝ちね」


少し気を許し過ぎだ。

俺は来世以降由香と律子以外に結婚出来ないのか?


「浩二君何を考えてるの?」


「いや仲が良いなって」


「嘘おっしゃい」


「そうよ。早く言って」


うん勝てません。


「実は...」


「呆れた」


「本当」


2人は顔を合わせて笑った。良かった冗談みたいだ。


「冗談で言って無いからね」


「そうよ」


うん諦めた。

だがこれで来世また俺だけ記憶があって由香も律子も別の人と結ばれていたら。

...それも運命だ。


「ところで律子さん高校は辞めちゃうの?」


「仕方ないけどね」


「でもあの人(吉田久)も退学したんでしょ?律子さん高校に沢山の友達がいたって聞いたよ勿体ないわ」


「そうなんだけどこれから赤ちゃん産んでしばらくは子育てするつもりだしね。

高校に復学する時友達はもう卒業しているよ」


由香の質問に律子は明るく答えた。

(そうかあいつ()高校退学したのか。

再教育させられると聞いたが律子に再び会える日が来るのだろうか?

恥ずかしくない大人になってくれ)俺はそう思った。


「なあ律子」


「何、浩二さん?」


「大検受けて大学からもう一度やり直したらどうだ?」


「大検?」


「そうだ。そして大学でまた勉強すれば良い。

大学にはいろんな人がいる。子持ちの学生もいるぞ」


俺の言葉に律子は少し考えていた。


「そうね、また前回と同じ大学に進んで同じ会社に勤めるのも悪くないわね」


「そうよ律子さんせっかくの人生だもん」


「ふふ、それで友達の紹介で...」


「また会話そっちのけでお酒ばかり飲んでる人と」


「「知り合うのも悪くないわね!」」


最後に由香と律子は声を合わせて言った後笑った。


「おい律子、話したのか?」


「ええ」


「その後金が足りなくなって律子に借りた事もか?」


「浩二君初対面の律子さんにそんな事したの?」


「しまった!」


俺はまたいらない事を言ってしまった。

頭を抱えてしまう俺を見てまた2人は笑うのだった。


「律子、迎えに来たよ」


律子の母の声と同時に部屋の扉がノックされた。

いよいよお別れの時が来た。


俺は律子の荷物を持って律子の父親が乗ってきた車に向かう。

由香は急に無口になる。

律子は由香の肩を抱きながら車に向かった。


車のトランクに荷物を入れている間に律子は家族と一緒に橋本家の方達にお別れの挨拶をしている。


志穂さんや美穂さんも泣いている。

由香はあの2人が相変わらず苦手の様で律子と会いに行く時は志穂さんや美穂さんがいない時間に行っていたらしいから知らなかった。

律子は誰からも慕われる人だったからそうなるだろうな。


隆一さん夫婦も泣いている。

特に隆一さんが泣いているのを見るのは初めてだ。

由香は...うん泣いているね。


律子は最後に俺達の前に来た。 

まずは俺の前に立つ。


「律子、元気でな」


「浩二君も元気で...やっぱり最後にもう一回だけ呼ばして。

...ありがとうあなた。」


そう言うと律子の目からまた涙が溢れた。

そんな律子を見て由香は更に激しく泣き出す。 次は由香の前に立った 


「ありがとう由香ちゃん」


「あ、ありがとう律子さん」


「ほら泣かないの笑って」


「り、律子さんだって泣いてるじゃない」


「仕方ないじゃない由香ちゃん笑ってよ」


「それじゃ2人で笑おうよ」


「そうね」


由香と律子は必死で笑顔を作るがとても笑顔に見えない。


「由香さん何ですのその顔は?」


「律子さんまで」


先程まで泣いていた志穂さんと美穂さんは変顔で笑う2人を見て笑い出した。


「酷いわ、志穂さんや美穂さんだってまだ少し変な顔ですよ」


「皆さんも面白い顔してますものね」


由香や律子も志穂さん達の顔を見て笑う。

やがて4人の笑い声が橋本家の前に響いた。


そして律子は車に乗り込み、手を振って別れた。

車が見えなくなってもみんな手を振っていた。

 

さようなら律子。


元気で。


そしてまた時間が過ぎた。


俺と由香は高校最後の時を迎える。



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