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もしかして...

俺は祐一の電話の後由香に連絡を取り2人学校を休み祐一の地元に来ていた。(学校には孝に上手く理由を言っておくように頼んだ)


「久し振りよね」


「ああ6年振りだな」


俺と由香は祐一に会うため6年振りに1度遠足で来た事のある輪善寺前のバス停に降りた。


「浩二君、由香ちゃん」


俺と由香がバスを降りると祐一が俺達を待っていてくれた。

目の下にクマが出来て酷く疲れた顔になっている。


「2人共ごめんね」


「いいよ、祐一こそ大丈夫か?」


「本当、大丈夫祐ちゃん?」


俺達は祐一の顔色からも捜索が難航している事が窺えた。


「ありがとう。大丈夫って言いたいところだけど嘘って分かっちゃうよね」


祐一は疲れた顔で笑った。


「まだ見つからないのか?」


「うん僕も知っている所は全て探したんだけどね。」


「闇雲に探しても無駄って事ね」


俺は[情報を整理出来る場所があれば]と考える。


「まず僕達はどこに行ったら良いのかな?」


俺は祐一に聞いた。


「りっちゃんの自宅に行こう、まだ話が出来るから」


「話が出来る?」


「うん。久の家はもうパニック起こして話しにならないんだ」


「そうなのか?」


祐一の話を聞きながら吉田久の実家はこの辺りの有力地主で凄い力を持った一族である事を思い出す。


「うん、だからりっちゃんの自宅に向かおう」


俺達は門前町にある律子の祖父が営んでいる和菓子店に向かった。


「ここだよ」


案内されたのは6年前に来たあの和菓子店だ。

しかし店は2年前に閉店しており静かな店内だった。


「おばさんいますか!?」


「はい...」


祐一が店内の奥に声をかけると疲れはてた女性が出てきた。

間違いない律子の母親だ。


「おばさん、りっちゃんは?」


「いないわ。もう探す所なんか無いのよ!早く見つけなきゃあの子の体が!」


「落ち着いて。おばさん今日は僕達を助けてくれる人を連れて来たよ」


祐一はそう言って俺と由香を紹介した。


「おい祐一そんな紹介があるか」


「本当、まだ手掛かりも無いのに」


俺と由香は小声で祐一に文句を言いながら前に立った。


「初めまして...ではないですね、6年振りです」


「覚えてらっしゃいませんでしょうが6年前に1度お会いしております」


俺と由香は律子の母に頭を下げた。


「はあ...あの律子とどのようなお知り合いでしょうか?」


「えー...」


俺は上手く説明出来ず固まってしまう。

まさか『前回の人生であなたの娘は俺の嫁で貴女はお義母さんでした』なんて言える訳ない。


「おばさん、山添浩二君と橋本由香ちゃん。

僕の大切な友人なんだ。

きっと力になってくれるよ」


「え?山添浩二とおっしゃいました?」


律子の母さんは俺の名前を聴いたとたんに固まる。


「はいそうですが?」


「山添浩二...山添...浩二...」


完全に律子の母は止まってしまった。


「おばさん?おばさん!」


祐一は大きな声で律子の母に呼び掛け続け、ようやく我に返った。


「ごめんなさい祐一君。」


明らかに動揺する律子の母に由香は優しく聞く。


「おばさん、律子さんは今妊娠何週目ですか?」


「え?あのこの子は?」


「おばさん由香ちゃんはお医者さんの娘さんで凄く医学にも詳しいんだ。

だから教えてあげて」


祐一は律子の母に優しく言った。


「分かりました律子は今妊娠17週に入りました」


「と言う事はもう妊娠中期に入ってますね、早く見つけないともし赤ちゃんに何かあると母体に大変なダメージが...」


「あの、あなたは律子が産むべきとお考えですか?」


律子の母が由香に聞いた。


「もちろんです。望まない妊娠なら仕方ありませんが、そうじゃ無いなら私は産む事を優先させてあげたいんです。

もちろん周囲の祝福があるに越したことはないですが」


由香の言葉に律子の母の瞳に輝きが少し戻る。


「でも分からないんだ、確かにりっちゃんは妊娠中絶をしたって産婦人科の書類を久の家に出したんだ。

久の家でも確かに確認したんだよ」


「そうなのよ。あの子一体どうやって?」


俺の頭にある可能性が浮かぶ。

それは俺が考えられる1番の可能性で1番お互いに残酷な可能性だ。


「おばさん、その書類はありますか?」


「え?一応のコピーは有りますが」


「見せて下さい」


「はあ...」


律子の母は書類を持って来た。

俺は書類を確認する。


「どうしたの浩二君?」


由香が俺の顔を不安そうに見る。

しかし俺は書類の文字に意識を集中させる。


(....間違いない)


俺は由香に静かに囁く。


「これは律子の文字だ。しかも仕事の時(大人の字)に書いていた字だ」


由香の目が見開く。


「それってもしかして...」


「ああ」


俺は頷く。


あいつ(律子)は俺と同じだ未来の記憶がある」


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