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一緒に居てくれますか?

山添有一は十河順子と予備校の帰りに順子の家に寄った。


「浩二君が元気になって良かった。有一君お疲れ様でした」


「ありがとう、順ちゃんにも心配かけちゃったね」

 

「ううん、私は大丈夫よ」


最近有一と順子はいつも2人一緒にいる。

学校では唯や志穂、美穂達とよく5人一緒にいる。

しかしもう有一や順子の仲に絡んだりする事は全く無い。

よき友人、有一と順子の理解者として接している。

有一は順子達の前では何でも話せる。

特に順子と2人の時は秘密の話まで。

2人の会話は浩二の不妊治療にまで及ぶ。


「それで浩二君の治療状況は?」


「今はギリギリ基準値をクリアだよ。

検査や採取も終わって浩二もほっとしてる」


「良かった!」


「由香ちゃんも浩二と一緒に大喜びしてて本当に嬉しそうだったよ」


「これで浩二君も由香ちゃんといつでも幸せになれるよね」


順子の笑顔を見て有一は浩二の様に早く順子と将来を誓いたいと思う。

しかしお互いまだ高校2年生という立場だ(順子の負担になるのでは?)そう思うと勇気が出ない有一だった。


「そうだ優子から手紙来たわね」


「うん僕にも来たよ」


2人の話は小学校時代にアメリカに引っ越して行った西村優子の事になる。


「アメリカに残るんだよね」


「何となく予想していたけどね」


「そうね優子のお父さんも現地で転職してグリーンカード(アメリカでの永住権)所得したし」


「そうだね、西村さんも格好いいアメリカ人の恋人も出来たしね」


「その写真私の手紙にも入っていたわ」


順子は先月来た手紙と入っていた写真の事を思い出す。

内容は

日本には帰らずアメリカの高校を出たらそのままアメリカの大学に進む予定の事。

素敵な友達が出来た事。

だから順子は安心して有一と幸せになって欲しいと英語で書かれていた。


「凄く格好いい人だったね。

手紙にもSweetHeart(恋人)って書いてあってさ」


優子の手紙を嬉しそうに話す有一。

しかし順子の手紙には写真の男の子はFriendとだけ書いてあった。

boyfriendでなく単なるfriend、友達と。

順子は優子のまだ割りきれてない気持ちに少し切なくなった。

その後、話は白石杏子と薬師明信に移る。


「杏子からも手紙が来たよ」


「杏子って白石さん?」


「そう。あの子今オーストリアのウィーンに10ヶ月前から音楽留学してるんだって」


「凄い!」


「最初は大変だったけど今はすっかり元気にやってますって。

後、薬師君を見かけたら様子を教えてって」


「薬師君の事を少しでも知りたいんだね」


「そうよね、2人は付き合ってるから少しでも恋人の事を知りたいんでしょうね」


遠距離恋愛で少しでも必死に相手の近況知ろうとする杏子の手紙には薬師に対する強い愛情を感じさせた。

それに引き換え近くで有一と一緒に過ごせる自分は何て恵まれているのかと感じる順子だった。

その順子の幸せな気持ちは最高の笑顔になって有一を魅了する。


(順ちゃん....)




「......有一君聞いてる?」


順子の笑顔に魅了された有一は完全に話を聞いていなかった。


「ご、ごめんなさい」


照れて顔を赤くしながら謝る有一。

その可愛らしさに心の中で順子は悶絶しながら有一を少しからかってみたくなる。


「有一君にしたら珍しいわね。私の笑顔がそんなに素敵だったかしら?」


「うん、す、素敵だよ...」


「え?」


予想外の有一の返答に順子の頭はパニックになる。


「あわわわわ......」


人間頭に血が昇り過ぎると意味不明な言動になるのを順子は実感した。


「順ちゃん?」


有一は赤い顔で固まった順子を少し不安な目で見ている。


(ダメ!有一君を不安な気持ちにさせちゃ、私が有一君を支えるんだから!)


順子は必死に思考を纏めて有一に大丈夫を言おうとする。


「だ、大丈夫よ。私は、ゆ、有一君とずっと一緒なんだから!」


「順ちゃん.....」


(しまった!何を言ってるんだ私は!)

順子の思考回路は完全に迷走を始めようとしていた。


「...ありがとう」


目に涙を浮かべお礼を言った有一を見た順子の頭の中はたちまち正常に戻る。


「有一君...」


「僕が不安や悲しみに押し潰されそうな時いつも順ちゃんは助けに来てくれる。

こんな弱い僕ですが、これからも一緒に居てくれますか?」


有一の告白の言葉に順子はまた完全に舞い上がる。

しかし順子は最後の理性で有一の言葉に誠実な返答をする。


「もちろん、私は有一君の傍にいるわ。

絶対に離れないんだから」


順子の言葉に有一は嬉しそうに抱きついた。


「ありがとう順ちゃん......」


「こちらこそ有一君.......」


その日初めて2人はキスをした。


順子は自分の小学校1年から一途に想いつづけていた有一への恋が完全に実った事を実感したのだった。


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