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俺には無理だ。

「おい橋本、これはなんだ?」


月曜日の学食で食べる昼御飯。由香の作って来てくれた弁当を覗いた佑樹が由香に聞いた。


「何ってお弁当だよ」


「いや弁当は分かるよ、このご飯白くないぞ?」


「玄米だもん」


「玄米?」


由香の言葉に佑樹は首を傾げる。

佑樹は余り玄米を見た事がないみたいだ。

俺も前回の時以来だし。懐かしい味と歯応えだ。


「そうよ精米する前の米」


「浩二旨いのか?」


佑樹は白く無い米を不思議そうに見ながら俺に聞いた。


「旨くはない。でも体には良いんだぞ」


「そうか、体に良くても旨くないご飯は俺には無理だ」


佑樹は旨くないと聞いたら興味を失ったようだ。旨いと言えば少しくれって聞いてきたのかな?

(佑樹これは俺の大事な食事だからあげないよ)

俺は心の中で呟いた。


「お魚は鯵をマリネにしてるの?後これはレバーよね?」


川井さんがおかずの入ったタッパーを見て由香に聞いた。


「うん。お魚の骨は綺麗に取ったし、レバーも牛乳で臭みを取ったんだから」


由香は川井さんに少し胸を張る。


「へえ凄いわね」


「由香に負けちゃいそう」


花谷さんや川井さんに更に誉められた由香のご機嫌は最高潮だ。


「レバーか、僕苦手なんだよな。浩二旨いのか?」


孝が聞いてきた。


「臭みは少なくなってるよ」


「食感は?」


「食感はそのままレバーだよ」


「臭みもダメだけどそれ以上にレバーの食感がダメなんだ。僕には無理だ」


孝はそう言った。

俺は(だから俺の大事な食事だからあげないよ)

そう再度心の中で呟いた。


「由香ちゃんそのタッパーには何が入ってるの?」


祐一が由香に聞く。


「これはレーズンよ」


由香はタッパーの蓋を開ける。


「旨そうだな」


「少し良いかな?」


佑樹と孝が由香に聞く。


「少しならいいわよ」


「やった」


「サンキュ。」


佑樹と孝はタッパーに手を伸ばすが祐一は少し困った顔をしている。


「祐一レーズンを食べないのか?」


「昔からレーズンは僕には無理なんだ。由香ちゃんごめんね」


「そうなの?それじゃアーモンドは?」


由香はそう言うと小分けにした袋からアーモンドを取り出した。


「やった僕大好き!」


「お?アーモンドなら俺も好きだ」


「僕も好きだな」


祐一に続いて佑樹や孝も続いて手を伸ばす。

(おい俺の大切な子種(精子)の素を少しは遠慮しろ!)

俺は心の中で叫んだ。


「由香でも急に手料理なんかどうしたの?」


「そうね由香ちゃん凄い頑張ってるね何かあったの?」


花谷さんや川井さんが由香に聞く。


「うーん、余り大きな声では言えないな」


由香は困惑顔で俺を見る。

俺は隠して過ごすより花谷さんや川井さんの人間性を信頼して由香に頷いた。

由香も頷いて花谷さんと川井さんを呼び寄せ小声で話す。


「実はね....」


「孝君!明日からレバーよ!」


川井さんはアーモンドを食べていた孝に言った。


「き、急になんだよ」


「あなた歳の割には枯れすぎなの!」


「ひ、酷い」


川井さんの言葉に孝は撃沈した。


「佑樹!」


「な、何だよ和歌。俺は玄米は食わねえぞ」


「佑樹は浩二の生活を、精神力を見習って!」


「何だよそれ?」


「詳しくは浩二に聞いて」


花谷さんは顔を赤くして佑樹に言った。


「浩二の生活って何の事だよ」


「そうだよ僕なんか枯れた男扱いだよ。」


「面白そう僕にも教えて!」


佑樹と孝に祐一は興味津々で俺に聞いて来る。

俺は仕方無いから3人に真実を小声で伝える。

これから毎週の様に精子の検査や冷凍精子の採取で採取以外は禁欲生活を強いられている事や弁当の食事は全て改善の為である事を全て伝えた。

この2人の男達なら茶化したりしないから安心だ。(あ、祐一も男だったから3人だ)



「浩二君...」


「浩二...」


「し、信じられねえ浩二...」


祐一も孝も佑樹も驚いていた。


「よし浩二!俺も付き合うぜ!」


「僕もだ!」


佑樹と孝は俺に付き合って禁欲生活を宣言した。


「やめた方がいいよ。割りと大変だよ?」


俺は佑樹と孝に止めるよう諭した。


「いや俺はやる。浩二の辛さを俺も!」


「そうだよ僕も!」


なら俺は何も言わないと決めた。


「...僕は辛いからパスするんじゃないよ」


祐一は何か言ってきた。


「僕は...その禁欲って...最初からそういう事自体した無いし...」


(分かった祐一。そんな顔を赤らめ無いでくれ、こっちも禁欲生活中なんだから)


そうして始まった禁欲生活。


3日目。


「すまん俺には無理だった」


佑樹が項垂れた。


5日目。


「浩二...僕も無理だった」


孝も項垂れた。


やはり健全な高校生男子には余りにもきつい所業だった。


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