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私達は双子ですから。

夏休みに入り有一と順子は一緒に東大目指して大手予備校の夏期講習に通っている。

ある日予備校の帰りに坂倉唯は橋本志穂と美穂姉妹を喫茶店に誘った。

唯達3人は有一達と違う予備校に通っている、その為よく3人でこうしてつるむのである。


「今日もお疲れ」


「お疲れ様ですわ」


「本当疲れましたわ」


素早く注文を済ませ、巻いたままの冷えたおしぼりを顔にチョンチョンと軽く押し当てて涼を取る志穂と美穂。


「ふー最高だ」


一方の唯は冷えたおしぼりを一杯に広げておしぼりの上から両手で顔をごしごし擦る。

正にオッサンのよくやる所業である。


「ちょっと唯!」


「はしたないですわ!」


「何がはしたないだ、お前達もやってみろ最高だぞ?」


志穂達の反発等どこ吹く風の唯、首筋まで拭き始める。


「あー最高だ!早くしないと冷えたおしぼりが温ったまるぞ~?」


クーラーの効いた店内で冷したおしぼりがすぐに温くなるはずなどないのに唯は志穂達をからかう。


「....」


志穂は禁断の果実(冷えたおしぼり)に手を伸ばす。


「いけませんわ!」


その手を止めようとする美穂。


「離して!」


「駄目!唯の口車に乗っては!」


双子のコントの様なやり取りを楽しげに見ている唯。

その視線に気づき、また唯にからかわれた事に気づく志穂と美穂だった。


「まったく唯さんは!」


「そうですわ!」


「すまんすまん」


顔を赤くして唯に抗議する姉妹を軽く宥める唯、この光景カウンター越しに見ながら後1、2年しか見れないのを淋しく思うマスターだった。


「唯さん、大学はやはり..」


「うむ京大だ」


「東大は行きませんのね」


「うむ。私の好きな教授のゼミは京大にある」


「確かに唯は昔から言ってましたものね」


唯はきっぱりと京大と口にする、これは有一達との決別を示している。


「志穂、美穂、お前達こそどうするんだ?」


唯は志穂達に聞く。


「あら唯、私達は東大目指してますのよ」


「知っていましょう?」


「ふー...」


唯は軽く溜め息をつく。


「なあ志穂、美穂」


「「なんでございましょう?」」


「私の前だ、その口調を止めろ」


唯の言葉に顔を見合わせる志穂、美穂。


「そうね」


「そうよね、唯の前だしね」


姉妹は普段の口調を止めて年相応の女の子の話し言葉になる。


「で、話の続きだ。

志穂、美穂お前達はいつまで有一と順子に引っ付いてるつもりだ?」


唯の言葉に志穂と美穂の雰囲気が変わる。


「唯、私達は双子です」


「見ればわかる」


「そういう意味ではありません」


「?」


「分からないみたいですね、それじゃ説明しますね」


まず美穂が唯に説明を始める。


「私達は双子、つまり2人です。

だから有一君が私か志穂どちらを選んでも1人は選ばれない」


「あ!」


「そういう事です。つまり有一君を好きになった時からどちらかは実らない事は分かっていたの。

だから有一君を諦めるとか順子に引っ付くでは無く、ただ2人を見守る事ができるのです」


「...すまん気づかなかった。」


美穂の言葉に当たり前の事に気づけなかった自分の迂闊さを恥じる。


(志穂や美穂は有一を好きになった時から実らぬ恋になる事を半分は覚悟していたのか)


唯はそう考えながら目の前で優しく微笑んでいる姉妹を見ていた。


「良いのよ」


「志穂...」


「姉妹で同じ人を好きになった時から覚悟は決まっていたのですから」


「美穂...」


「まあ有一君が選んだのは私達でなくて結局順子の奴だったけどね」


「志穂?」


「そうよ順子の奴、私達3人が大好きな油揚げ(有一)を横からかっ拐うなんて酷い事するわよね!」


「美穂?」


「「唯もそう思うでしょ?」」


突然志穂と美穂は雰囲気を変えて唯に迫る。

もちろん唯も理解する。


「今日は愚痴るぞ!」


「任せて!」


「それじゃ先ずは唯から!」


「うんあれは私が小学校4年の誕生日に...」


こうして溜まった有一と順子への愚痴を言い合う3人だった。


その顔はとても幸せそうで楽しそうだとマスターは思った。


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