高校生になりました。
「それじゃ行ってきます」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい2人共気を付けてね」
母の声に送られて俺と兄貴は揃って家を出る。
「浩二君おはよう」
「おはよう由香」
途中で由香と合流する。
これはいつも通り小学生の頃からの習慣だ。
しかし違うのが、
「おはよう有一君」
「おはよう順ちゃん」
兄貴と順子さんも一緒に合流する事になった。
更に..
「おい順子有一と近いぞ」
「そうですわ」
「いけません事よ」
唯さんや志穂さん美穂さんも一緒になった。
俺と由香は時間をずらそうとしたのだが
「浩二、頼むよ。順ちゃんと2人で行けないのは仕方無いけど唯達の視線がキツいんだ」
「浩二君、由香、私からもお願い」
兄貴と順子さんにそう言われて諦めた。
「おい浩二お前からも順子に言ってやってくれ」
「何をです?」
「恋人気取りはまだ早いと」
唯さんが何故か俺にそんな事を言う。
言える訳が無い。
「由香からも言ってやって下さいません?」
「志穂さん何をですか?」
「志穂が言いたい事は分かってるでしょう?」
志穂さんと美穂さんからも由香に言えないと分かってて無茶振りをする。
「「はあ~」」
俺達は揃って溜め息をするしかない。
「何だその態度」
「由香、あなた自分が幸せなのを良いことに従兄弟に対して酷くありません?」
「そうですわ」
俺と由香は目を合わせて知らんぷりを決め込む。
これが丸1年続く毎朝の光景だ。
「浩二君高校生活には慣れました?新しい生活には変わった事も多いでしょう?」
順子さんが何とか話題を変えようと俺に話を振ってくる。
「ええ、でも附属中学校から附属高校に上がっただけですから、校舎が変わった事と制服のワッペンの文字がジュニアハイスクールのJHからハイスクールのHになったくらいですかね」
「有一や私達もそうだった。しかし順子は違う」
「順子は高校から学芸大学附属高校に来たから一杯変化がありましたものね」
「そうそう、有一様と一緒に行ける様になりましたからね」
嫌味成分100パーセントを順子さんは喰らっている。しかし兄貴がいない時の4人仲が良いのは信じられない。
兄貴はこの時間空気になっている。
電車で一駅、俺と由香は乗り換えでやっと5人と別れる。
「今日もお疲れ様」
「由香もお疲れ様」
俺達はようやく訪れた平和な通学時間に戻る。
そうして中学校から変わらない通学コースで仁政第一高校に着く。
「おはよう!」
高校の校舎に入るなり祐一がお出迎えする。
「おはよう祐一」
「祐ちゃんおはよう」
「おはよう由香ちゃん!」
「瑠璃ちゃんおはよう。」
「おはよう浩二」
「孝おはよう」
祐一に続いて孝と川井さんにも挨拶をする。
中学校までは佑樹と花谷さんがここにいたのだが高校に上がると体育科は違う校舎になってしまった。
体育科のある校舎には学校が最新のトレーニング機器が揃えられていて朝からトレーニングを義務づけられている。
高校スポーツは学校にとって格好の宣伝になる為仕方がないのは分かっていたが小学1年から一緒だった佑樹と毎朝会えないのは淋しい俺だった。
まあ昼休みに毎日会っているんだがけどね、昼休みと言えば高校から孝や川井さんも俺達と一緒に昼食を囲む様になった。高校の学食は中学の学食より大きく利用する生徒も非常に多い。
メニューも多く何より安くて旨い為生徒に大好評でいつも腹ペコな2人は特に喜んでいた。
こんな具合で高校生活は始まった。