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ビキニ!!

 今日は朝から由香と花谷さんの買い物に佑樹と朝から付き合い、デパートを数件まわった。

 と言っても、中学生の小遣いで買える物なんか限られている。

 あーでもない、こうでもない、そんな女の子の会話をずっと聞かされていただけだった。


「...疲れた」


「そうだな」


 ようやく全ての買い物が終わり、俺達はいつもの喫茶店で遅めの昼食をとなった。


「ごめんね浩二君」


「いいよ」


 由香が申し訳なさそうに謝った、もちろん許すしかない。


「お前は?」


「何が?」


 対する花谷さんは全く気にする様子が無い。


「俺に何か言う事は?」


「無いわよ」


「そっか」


 佑樹は諦めた様子で俺を見た。

 哀しいな佑樹、でも大丈夫だ。


「好きなの頼んで良いから」


「本当か?」


「ええ」


「ありがとう和歌!やっぱり最高だぜ!!」


 佑樹は清々しい笑顔でメニューを開く、完全にコントロールされているのだ。

 奢りは確かに一番佑樹が喜ぶ事だろう。


「マスター!俺特大盛のオムライス!!後はコーヒーね!」


「畏まりました」


 カウンターからマスターの声が返って来る、きっと笑っているな。

 俺はペペロンチーノで由香はボンゴレパスタ、そして花谷さんはピザとピラフの大盛りを注文した。


「祐一はどれにする?」


「あ...うーんとね」


 今日の買い物に一緒だった祐一はメニューを見て固まっている。

 そういえば祐一がここの喫茶店に来るのは初めてだったな。


「浩二君と同じペペロンチーノで良いや」


「ニンニク強いが大丈夫か?」


 ここのパスタは結構ニンニクが効いてる。

 この後歩いて帰る俺達と違い、祐一は電車に乗らないといけないのだが。


「うん、浩二君と同じ食べ物を食べたいんだ!」


「...そ、そうか」


 祐一よ、その笑顔は止めてくれ。

 最近益々女の子にしか見えないんだから。


「おいしかった!!」


「そりゃ良かった」


 どうやら祐一はペペロンチーノが気にいった様子。

 初めて食べたと言っていたが、上手く食べていたな。

 由香の真似をしながらだけど。


 俺?

 やっぱり音が出てしまった、『ズズー』って...

 それより祐一が男だと知り、マスターの驚く顔が面白かった。


「コーヒーです」


「ありがとう」


 運ばれて来たコーヒー。

 相変わらずの薫りが堪らない。


「う...」


 一口飲んだ祐一が固まる。

 どうしたんだ?


「祐ちゃんコーヒー初めて?」


「うん...コーヒー牛乳が飲めるから大丈夫と思ったんだけど」


 由香の言葉に祐一が項垂れる。

 初めてのコーヒーでブラックは苦いだろうな。


「お子様だな」


「...うぅぅ」


 佑樹の言葉に祐一が更にに小さくなった。


「それ飲んでやるから、別の頼んだら良いぜ」


「良いの?」


「ああ、浩二と半分に分けるからよ」


「ありがとう!」


 祐一は飲み終えた佑樹のコーヒーカップに半分注ぎ、残りのカップを俺に差し出した。


「あっ...」


 祐一のカップから俺のカップにコーヒーを注ごうと手にすると、なぜか声が...


「そのまま飲んで」


「なんで?」


 祐一は何を?


「移したら、冷めちゃうでしょ?」


「そうかな?」


 まだ熱いから、冷めたりしないと思うが。


「だな、少し冷めちまったぜ」


「そっか」


 佑樹が言うならそうだろう。

 おれは祐一のカップから直接飲む事にした。

 なんで祐一は真っ赤なんだ?


「来週、楽しみだね!」


 新しく運ばれて来たココアを飲みながら、祐一が嬉しそうに持参して来た鞄からパンフレットを取り出し、テーブルに並べる。

 その気持ちは分かる、いよいよ来週は待ちに待った修学旅行なのだ。


 行き先は沖縄。

 前世を含め、俺にとって初めて行く沖縄、気持ちが昂るのは俺も同じであった。


「海水浴出来ないのが残念だけど」


「そうよね」


 由香と花谷さんは少し残念そう、確かに沖縄といえど11月の海に飛び込むバカは居ない。


「俺は入れと言われれば行くけどな」


 佑樹はブレ無い、本当に飛び込みかねないな。


「...アンタね」


 花谷さんがタメ息混じりで佑樹を睨む、冗談だよな?


「チェ」


 ...本気だったのか。


「残念だね、僕も泳ぎたかったよ」


 なんで祐一は熱い目で俺を見る?


「祐一、分かるか!」


「もちろんだよ、佑樹と浩二君の三人で水の掛け合いしたかったもん!」


「だよな?そこに和歌のビキニがあれば」


「こら!ビキニなんか持ってないわよ!!」


 花谷さんが佑樹の頭を叩く、いつもの光景だ。

 でも由香のビキニか、中学三年になって最近はすっかり大人の体型になって来たし...

 いかん、想像してしまった。


「...浩二君」


「な、なんでも無いです」


 由香の冷えた声に首を振る、なんて鋭いんだ。


「...そんなに見たいの?」


「え?」


「由香、アンタ何言ってるの?」


 予想外な由香の言葉に空気が固まる、まさかそんな事を言うなんて...


「...見たい」


「おい浩二...」


 思わず出た言葉、佑樹も驚いている。


「佑樹、お前は見たくないのか?

 花谷さんのビキニ姿を」


「いや、そりゃ見たいよ。

 和歌のビキニだろ、デカイからな」


「止めなさい!」


 どうやら花谷さんが見せた先日のタンクスタイルを思い出したか、青いな佑樹。


「至高は別なのだよ、佑樹」


「は?」


「お前はまだまだだ」


 甘い、本当の美しさは胸よりお尻にあるのだ。


「何が至高なんだよ?」


「...言えない」


 おいそれと口には出せない。

 変な性癖だと誤解されては大変だ。


「何で由香、座り直してるの?」


「...別に」


 由香は椅子から一度お尻を浮かせ再び腰を下ろした。

 これは不味い、後で怒られるな。


「良いなあ...僕も着てみたいよ」


「はあ?」


 祐一のお馬鹿な発言はスルーしよう。


「祐ちゃんなら似合うんじゃない?」


「本当?」


 由香...お前は何を言うんだ?


「そうね、佑樹はそれで我慢してなさい」


「なんでだよ!!」


 花谷さんはとんでもない事を言う。

 いくら祐一が美少女みたいな外見だといっても中身は男だぞ?


「浩二君も見たいんじゃない?」


「なんでそうなる...」


 いくら俺でも男の尻に興味は無い。

 俺が見たいのはあくまで由香の...


「なら見せてあげようか?早速ビキニ買わなくっちゃ!」


「こら!」


 なんて事を言うんだ。

 それでなくても祐一の小悪魔な笑顔に三年の男達は狂わされてしまったと言うのに。


「ら...来年まで待っててね」


 真っ赤顔で由香がうつ向いた。


「来年にはもうちょっと...うん」


「ああ...」


 そんなに小さくないぞ、花谷さんや順子姉さんが大きいだけなんだけど。


「...良いなあ」


「何がだ?」


 何で祐一が羨ましそうにする?


「僕、ずっとこのままだし」


「「当たり前だ!!」」


 思わず佑樹と声を合わせた。

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