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祐一とデート?

成人の日、祝日。

成人の日は昔1月15日で固定されていた。

俺は朝から駅のターミナルで待ち合わせをしていた。


「浩二君お待たせ!」


改札の向こう側から祐一の元気な声がする。

今日は1日遊ぶ約束を果たすためここに来た。


「大丈夫だ祐一、僕も今着いたばかりだ」


祐一は笑顔で俺に近づいて来る。


「ふふ、浩二君とデートなんて夢みたい」


祐一は顔を赤くしながら腕を組んできた。


「おい祐一、デートじゃなくてただ1日遊ぶ約束をしただけだそ?」


「良いよ浩二君がどう思っても僕にとってはデートなんだ」


祐一は嬉しそうな顔で俺を見る。


何でこうなった?

俺は先日の出来事を思い出す。


久と律子が俺に会わせて欲しいと祐一を通じて頼まれ俺は断ってくれる様に頼んだ。

祐一は久と律子に上手く断ってくれたがその見返りとして今日の約束に繋がる。


由香は『良いよ祐ちゃんと楽しんできて』と言っていた。 

祐ちゃんは祐ちゃんだから大丈夫と言うことだろう。


「ふふ、浩二君黒の革ジャンいつも似合ってるね」


「ありがとう、祐一もなかなか落ち着いた服装で良く似合ってるぞ」


祐一はグレーのニット帽を被り茶色いピーコート、コートの下には黒いジャケットと白いカッターシャツが覗いていた。


「ところで今日の予定は?」


お互いの服装を誉めあった後俺は今日の予定を祐一に聞いた。祐一が『デートプラン(デートでは無い)は僕に任せて』と言ったからだ。


「え~と今から帽子を見に行って、その後はお昼ご飯だね。後はまた言うよ」


祐一は肩に描けていたポシェットから可愛い手帳を取り出し俺に教えた。


「よし分かった。それじゃ出発しようか」


「おー!」


祐一は片方の腕で俺の腕を組みもう片方の腕を元気に上げて出発した。

帽子屋に着いた俺達は色々な種類の帽子が飾られた店内に少し興奮する。


「あ、これ可愛い!」


祐一は赤いベレー帽を頭に被り俺に見せる。


「祐一凄く似合うぞ。しかしどこかで見たような...」


俺の呟きに耳を貸さずに祐一は俺に近づいて来て耳元で囁いた。


「浩二君、今日は祐一じゃなくて祐って呼んで」


「何で?」


「ダメ?」


祐一は目を潤ませて俺を見る。

成る程由香達が言ってる意味がほんの少し分かる。

(祐一は祐一だから良いんだ)


「分かった」


「やった!」


「今日だけだぞ」


「うん!」


祐一はピョンピョン跳び跳ねて喜びを現す。


「見て見て可愛い女の子が大喜びしてる」


「本当ね、女の子を優しく見ている男の子の視線も羨ましいわ兄妹かしら?」


何やら店員が言ってるが聞こえない、聞こえない。


「浩二君この帽子を被って」


祐一は1つの帽子を俺に持ってきた。

それは黒いマウンテンハットだ。俺は導かれる様に祐一から帽子を受取りそれを被る。


「どうだ?」


「うん凄く似合ってるね!」


俺は鏡を見る。

成る程、自分で言うのも何だが似合ってるな。

なかなかのチョイスをした祐一に俺は笑顔で礼を言う。


「ありがとう祐」


「アウ!」


祐一は一瞬で顔を真っ赤にして後ろによろめく。何で?


「見た?男の子のあの笑顔。あれは妹に向ける笑顔じゃないよ」


「そうね、女の子の幸せそうなあの顔。羨ましいわ!」


また何か店員が言ってる。

(仕事しなさい。後、祐一は男だ!)


店で俺達は赤いベレー帽と黒いマウンテンハットを購入した。

早速俺は黒いマウンテンハットを被る。


「どうかな?」


「うん似合ってる!」


祐一の言葉に益々の気を良くする。

昼御飯は近くのフライドチキンで昼を済ました。


「この後は?」


「アイススケートに行こう!」


祐一は手帳を見る事なく次の予定を俺に教える。

俺はアイススケートなんか殆どしたことがない。


「上手く出来ないが構わないか?」


「大丈夫本当は浩二君はスケート靴を履かずに僕の横に付いてきて欲しいんだけど」


(そりゃ無理だろ)


祐一の言葉に心の中で突っ込みながら俺達はアイススケートに行く。


やはりアイススケート経験の殆どない俺はヨタヨタになるが以外と上手い祐一に手を掴んで貰い何とか滑る。


「楽しいね!」


祐一は本当に楽しそうに言うが俺はそれどころじゃない。

祐一によって壁際から離された俺は何故かリンク中央に連れて行かれて両手をバタつかせていた。

周りは上手い人だらけでぶつからない様にするだけで精一杯だ。


「うわ!」


「きゃ!」


無理な姿勢で人を避けた俺は前にいた祐一を押し倒す様な形で2人共倒れてしまった。


「すまん祐大丈夫か?」


「.....」


顔が当たりそうな程近づいてしまい祐一は目を見開き顔を真っ赤にして固まってしまった。


「大丈夫ですか?」


近くにいた親切な人達に俺達は無事リンク外に誘導して貰った。


「助かったな祐」


「......もう少しああしていたかったな」


俺には聞こえない小さな声で呟く祐一。まだ顔が赤いな、余程驚いたのか悪い事した。


アイススケートをその後も楽しんだ俺達は祐一のそろそろ時間だからの声でスケートリンクを後にする。


「次は?」


「お楽しみだよ!」


俺の質問に答えず祐一は笑顔で俺の手を握り繁華街を少し抜けた場所に連れて行く。

何故俺の手を握ってるかって?

分からないんだ。知らない間に気がついたら祐一に手を握られていたんた!


「ここだよ!」


祐一が立ち止まったのはある映画館。

ロードショー館では無く所謂名画座だ。

懐かしい名画ばかり上映する名画座は昔は街の繁華街には良くあったものだった。

しかし俺が注目したのはそこではない。名画座の壁に貼られたポスターに俺は目を奪われた。


バルボア(ロッキー)....」


(まさか?)ここで俺は気がつく。

(黒いマウンテンハット、祐一の服装、アイススケート..)


「気がついた?」


祐一の声に俺は振り返る。


「エイドリアン...」


俺は思わずバルボア(ロッキー)の様に呟く。祐一は先程買った赤いベレー帽を被りコートを脱いで笑っていた。


「良く調べたな?」


「この前の体育祭の時に僕を抱き上げて叫んだでしょ、あの後調べたの。何回もレンタルビデオ借りたんだよ」


「ありがとう祐...」


(よくもまあ)


俺は祐一の情熱に脱帽した。


「さあ行こう大きなスクリーンで見るときっと格別だよ!」


俺達は映画館に入った。


映画のラストで俺は泣きながら叫んだ


「エイドリア~ン!」



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