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新たな気持ちで。

年が明け今日から3学期が始まった。

始業式が終わると本来は下校となるのだが特進コースの生徒達はいきなりの補習授業が行われる。

(体育コースの佑樹と花谷さんはもちろんクラブ活動に行く)

始業式の後俺達は教室で休み前に渡されていた課題を提出してそのまま補習授業が始まる。

今日の補習授業は午前と午後に分かれており途中で1時間の昼御飯と休憩の時間があった。


「ここでお弁当食べるの久し振りよね」


「そう言えばそうだな」


「僕初めて教室で食べるよ」


由香の言葉に俺と祐一は頷く。

いつもの食堂じゃなく教室で食べる弁当。

今日は学校に残る生徒が少ないので食堂もお休みしている。


「僕達はいつも教室だから変わらないね」


「でも由香ちゃん達と一緒に食べるお弁当って楽しいわ」


「そうだな浩二達と食べるお弁当は楽しいもんだな」



孝と川井さんは普段から教室でお弁当を食べているから何も感じないかと思ったらそうでも無い様子。


「いい年越しを送れたか?」


「まあね」


孝の質問に楽しかった由香との初詣を思い出す。


「今回は年末年始を浩二君と一緒に過ごしたんだよ。」


「由香ちゃんいいなあ」


「本当かよ」


「僕も浩二君と一緒に居たかったよ」


由香の言葉に孝達から羨む声があがる。

(祐一の声はスルーしよう)


「瑠璃ちゃんは孝君と一緒じゃなかったの?」


「うん孝君は毎年家族で帰省するから年末は別々なの」


「そうなんだ」


「佑樹と花谷さんはどう過ごしたのかな?」


少し悲しそうな川井さんを見て話題を変える孝。俺は説明する。


「あの2人も初めて一緒に年末を過ごしたらしいよ」


「良かった、無事に過ごせたんだ。浩二君よく知ってるわね」


「うん元旦に佑樹と花谷さんにあったんだ」


「え?浩二君元旦って朝から2人と会ったの?」


「偶然朝に会ったんだ。

ちょっと朝から用事があって自転車で近所を回っていた時にジョギングしている佑樹達と会ってね」


「浩二、正月の朝から用事って何だ?」


孝の言葉に俺は初詣から帰ってからの事を話した。

自宅に戻ってから年賀状の事を忘れていた事や

慌てて年賀状の残りを書いてから朝一番から近所に住む友人達の自宅に配って回った事を。


「そんな事あったんだ」


「浩二も意外と抜けてるな」


「でも浩二君らしいな」


「本当」


みんな笑いながら俺の話を聞いていた。


「でも正月から近所を走ってるなんて佑樹達らしいな」


「そうだよね、で佑樹と花谷さん2人共僕を見ると顔を真っ赤にしてさ、何か良いことあったみたいだったよ」


「羨ましいな僕も好きな人と過ごしたいよ」


祐一はそう言いながら流し目で俺を見る。


(祐一その目は止めなさい)


「祐一はどんな年末を過ごしたんだ?」


孝の質問に祐一は答える。


「僕は久とりっちゃんの3人で近所のお寺へ初詣に行ってきたよ」


祐一の言葉に俺と由香は固まる。


「久とりっちゃんって?」


初めて聞く名前に孝は尋ねる。


「僕の地元の友人だよ。吉田久君と伊藤律子さん。2人共昔からの付き合いなんだ。そうそう久とりっちゃんから浩二君と会いたいって頼まれちゃったんだ」


祐一の言葉に俺は混乱する。

(何だと?俺に会いたいだって?

俺は久と律子にはもう会う気は無い。

俺の今回の人生は前回と運命が変わっている、これ以上関わりを持つべきじゃない)


「どうした浩二?」


「由香ちゃんもどうしたの?」


「何か僕悪い事言っちゃったかな?」


完全に混乱している俺達の様子に心配そうに孝と川井さんや祐一が聞いてくる。


「...祐一、僕は久達と会う気は無い」


「え?」


俺のはっきりした拒絶に祐一も固まる。


「浩二君...」


「そう言う事だ祐一、すまないがその話はうまく断ってくれ」


「分かった...」


俺の有無を言わせない反応に祐一も何かを感じたらしい。

その後また別の話になったがいまいち盛り上がらずに休憩時間は終わった。

午後からの補習授業も終わり俺達は帰る時間になった。


「それじゃまた明日」


駅で祐一と別れて本来は孝達と4人で電車に乗るのだが今日は遠慮してもらい由香と2人で帰る。

俺と由香はずっと無言だ。


「ねえ浩二君」


「何?」


「今日家に寄って」


由香の強い意思を感じる目に俺は頷くしかない。


「分かった」


その後由香の家に着く、家には誰もいないようだ。


「座って」


由香の部屋に入り俺はベット脇のクッションに座る。


「.....」


由香は無言でベットに座り俺を見下ろす。


「由香、僕は..」「浩二君」


俺が沈黙に耐え兼ねて話そうとすると由香が止める様に話しかけてきた。


「いつか私に言ったよね伊藤律子さんは浩二君と未来に何かある可能性が...」


由香はそこまで話すとまた止まってしまう。

未来に結婚していたと続けたいが絶対に俺が由香以外と結婚していたと言いたたくないのだろう。


「由香の言いたい事は分かるよ」


俺は立ち上がり由香の横に座る。

由香は下を向き固っていた。


「由香聞いてくれ。

確かに僕は未来の記憶の様な物がある。

しかし以前由香に言ったよね『未来は変わった』と。

だから変わった未来に僕は余り交わるべきじゃないと思うんだ」


由香は俺の言葉に無言で頷いてまた沈黙が部屋を支配する。

やがて由香は再び俺に聞いた。


「浩二君はそれで良いの?」


由香はもう律子と会わない俺の選択に後悔は無いかと聞いている意味だとすぐに理解した。 


「ああ、僕は由香との未来を選んだ。由香と過ごす未来が僕の運命でそれが僕の幸せなんだよ」


俺の力強い言葉に由香は静かに涙を流した。


「嬉しい...」


由香はそう呟き俺の手を握り笑う、涙で顔を濡らしながら。


「だから由香安心してくれ。僕は由香の傍にずっといるから」


「浩二君!」


由香が俺を抱き締める。俺も由香の頭を静かに撫でていた。


(俺はもう悩まない)


新たな気持ちで由香と未来を歩む事を強く再確認するのだった。



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