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それぞれの年越し 祐一編

「おーい!りっちゃーん、久くーん!」


祐一が手を振る。視線の先には1組の手を繋ぐ男女がいる。

男の名前は吉田久、保育園からの幼馴染みで現在は違う中学校に通っている。


「よう祐一」


「祐ちゃん久し振り」


女の子の名前は伊藤律子。

祐一とは小学校からの友達で祐一と久の3人はいつも遊んだ仲だった。

彼女と吉田久は同じ中学校に通っている。


「久し振りだね」


「ああ久し振りだな、いつ以来だ?」


「そうだね夏休み以来だから5ヶ月位になるのかな」


久の質問に祐一は指を折りながら答える。


「そっか最近は祐ちゃん忙しそうで全然会えなかったもんね」

 

「うん学校が違っちゃうと会う回数が減ちゃうよね。

今日はお誘いありがとう」


祐一はにこやかな笑顔で2人に頭を下げた。


「良いって事よ。律子、祐一行こうぜ」


「うん」


久と律子は祐一を連れて地元の輪善寺に初詣に来ていた。

輪善寺は地元を代表するお寺で毎年たくさんの参拝者で溢れていた。

3人は山門で1礼して参道を進む。手水舎で手を清めてから本堂前の常香炉で線香の煙を受け体を清める。


「祐一随分と念入りだな」


先程から熱心に煙を頭に当てている祐一に久は言った。


「ご利益がありますようにって祈ってるの」


サラサラの髪を揺らしながら線香の煙を頭に掛ける祐一の姿に久は思わずどきっとする。


(俺は何を考えているんだ祐一は俺の幼馴染みでしかも男だぞ)


そう考える久。


「仕方ないよ祐ちゃんは祐ちゃんなんだから」


律子もよくわからない事を言う。


その後無事に参拝を終えた3人は寺務所に行く。久の家族は檀家総代を務めており輪善寺の大体の場所は自由に入れるのだ。

3人は1つのテーブルを囲み歓談する。


「祐一、中学校生活は楽しいか?」


「凄っく楽しいよ!」


「そうか、仁政は勉強が大変じゃないか?」


久は祐一の行っている仁政中学校のレベルが高いのを知っているだけに楽しい学校生活を送れているか気になっていた。


「確かに勉強は大変だけど、僕には大切な仲間達がついているから平気だよ」


「大切な仲間って浩二の事か?」


「うん!」


浩二の名前を聞き嬉しそうな祐一。


「浩二君って祐ちゃんがいつも話してくれる、私と久君が4年前に会った事のある人よね」


1度だけ浩二に会った事がある律子も祐一に聞く。


「そうだよ浩二君のお陰で僕の学校生活は充実してるの」


「確かに浩二と一緒にいれば充実するよな」


3年前に塾の夏合宿を一緒に過ごした久は思い出すように言う。


「それに浩二君だけじゃないよ、佑樹や孝、由香ちゃんに和歌ちゃん、瑠璃ちゃんっていう素晴らしい仲間達が僕にはいるんだ。

だから僕は幸せな学校生活を送れるんだよ」


「由香ちゃんって祐一の話に何度か出てくる浩二の彼女か?」


1度だけ見た事のある久は由香の顔を思いだし『可愛い子だった』と思いだす。


「久君確かに可愛い子だったよ...ね!」


にやける久の脇腹を笑顔でつねる律子。


「いてて、痛いよ律子ごめん」


「わかればいいのよ」


2人のやり取りを見ながら3年前に久のビンチを救ってくれた浩二に心の中で感謝する祐一。


「ふふ、相変わらず仲良しだね」


「まあな」


笑顔で律子の肩を抱く久。


「もう久、恥ずかしいよ」


律子も顔を赤くしながら笑顔になる。


「でも祐ちゃん1人小学校の友達と離れたけど全く心配はいらないみたいね」


律子は話を変えようと祐一に聞く。


「うん、しかも僕は今浩二君と同じクラスだからいつも浩二君達と一緒に居られるんだよ」


「へえ、偶然一緒のクラスになるとは祐一も運が良いな」


久の言葉に羨ましさが滲む。

久と律子は中学校では別々のクラスだからだ。


「え?偶然じゃないよ」


「なぜだ仁政中学校は10組以上あるんだろ?」


「確かに組は10クラス以上あるけど僕と浩二君は特進コースだから1クラスしかないの。

だから僕は浩二君や由香ちゃん達と一緒のクラスで3年に上がっても同じクラスなんだ」


意外な祐一の言葉に久は驚く。


「祐一お前仁政中学の一般コースじゃななかったか?」


「確かに入学したのは一般コースだったよ、でも一生懸命勉強して2年生から特進に編入出来たんだ。」


「浩二も一緒に編入したのか?」


「ううん、浩二君と由香ちゃんは入試の点数が優秀だったから特別に1年から特進コースに編入出来たんだ。

だから僕は一生懸命勉強して編入テストをパスしたんだよ」


ちょっと自慢気に胸を張り笑顔の祐一。

その輝く笑顔は久と律子は見とれてしまう程素敵だった。


「ゆ。祐一凄い笑顔だな?」


「本当、引き込まれちゃうよ」


「きっと浩二君のハッピースマイルを学校で毎日もらってるからだね」


「「ハッピースマイル?」」


久と律子は祐一の言った言葉の意味が分からず聞き返す。


「そうだよ僕だけじゃない、由香ちゃん達もみんな浩二君の笑顔に引き込まれて幸せな気分になれるんだ」


「それは凄いな俺も久し振りに浩二の笑顔を見たくなって来たよ」


「ええ祐ちゃんの幸せそうな顔を見ていると私も何年か振りに見てみたくなるわ」


「それなら浩二君に聞いておいてあげる」


「本当か祐一?」


「お願いするわ」


祐一の言葉に喜ぶ2人。

その事は浩二をどれだけ悩ますか知らずに。

やはり祐一は小悪魔である。


(早く浩二君に会いたいな...)


そう考える祐一だった。

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