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未来なんて決まってない!

12月に入り期末試験が終わった。

それで気が抜けた訳じゃないが俺は風邪を引き週末に熱を出してしまい高校に入って初めて学校を月、火と2日休んだ。


「体には自信があったのに...」


俺はベットで横になりながら呟く。

さっき熱を計ると36度6分平熱。

昨日は37度台だったからもう大丈夫だな。

風邪を引くといくらでも眠れるのは不思議だ、やはり体が休もうとしているのだろう。


「浩二大丈夫?」


兄貴がノックして部屋に入って来た。


「兄さん風邪を移すといけないよ」


俺は兄貴に近づかないように言う。


「分かってる、これを作って来たんだ。さあ食べて」


兄貴は俺の枕元に雑炊を持ってきた。

熱々の玉子の入った雑炊だ、


「ありがとう。もうすっかり元気になったから食欲が出てきた。早速食べるよ」


俺は兄貴に礼を言うと雑炊を食べる。

しかし鼻が効かないから味は分からない。


「どうかな?」


兄貴は心配そうに俺の顔を窺う。


「ありがとう美味しいよ」


味はまだ余り分からないが兄貴の気持ちが入った雑炊だ不味いはずが無い。

 

「良かった」


兄貴は嬉しそうな顔をする。

俺は兄貴の顔を見ながら感謝の気持ちで一杯になる。


「御馳走様。ありがとう兄さん何だか凄く元気になってきたよ」


俺は兄貴に微笑むと兄貴も俺に微笑み返して来た。

その顔で益々元気になる気がした。


「それじゃ食器を持って行くね。ゆっくり寝てなよ」


兄貴は俺の食べ終えた食器を持って部屋を出ていった。

食べ終わった俺はまた寝る事にしようと思い一旦部屋を出て歯を磨いてから自分の部屋に戻ってまた横になる。

満腹になった俺に眠気が来る。俺はいつの間にか眠っていた。




「あれ?」


俺はいつの間にか外にいて、黒い礼服を着ていた。


「...どうしたの?」


聞きなれた声が横からする。

由香の声だ。


「由香?」


俺は横を見る。そこにいたのは成長した由香だった。

綺麗なドレスを着た由香は息を飲むほど美しく俺は言葉が出ない。


「どうしたの浩二?」


不思議そうな顔で俺を見る由香。

俺は混乱しながら成長した由香に聞く。


「今から何が始まるのかな?」


由香は驚いた様に俺を見ていたがやがて微笑みながら教えてくれる。


「何言ってるの?今日はあなたのお兄さんの結婚式でしょ?」


その言葉に俺は益々混乱する。

(由香どうしたんだいつもと様子が違うぞ?

俺を見る感じも他人を見るみたいだし。

しかも結婚式ってまだ兄貴は15歳だぞ?

いや待て由香は大人になっているからこれは未来の夢か?ひょっとしたら予知夢かな?

だとしたら兄貴の奥さんは誰になったんだ?)

俺は由香に聞く。


「変な事を聞くけど...兄さんの奥さんは誰?」


俺の質問に由香は信じられないと言った顔をする。


「やっぱり浩二変よ?あなたの兄さんの奥さんは志穂でしょ」


予想外の返事が返ってきた。


「どういう事だい?由香兄さんの奥さんが志穂さんだなんて?順子姉さんは?」


俺は由香の肩を掴んで聞く。


「ちょっと待って、痛いよ浩二!」


由香の大きな声に周りの人達から注目される。

その中から一人の見た事のあるような男が現れる。


「おいおい浩二、いくら自分の元カノでも僕の嫁の肩を掴むなよ」


「何だと?由香は俺の!」



そう言いながら俺はそいつの顔を睨む。

しかしその顔は俺の良く知る顔に変わっていく。


「...祐一?」


「何を急に僕の名前を呼ぶんだい?」


(いや待て祐一は長髪で小柄で可愛くて...

いかんぞ、どうなってるんだ?)


「なんだ浩二どうかしたのか?」


集まった人達の中からまた知った顔が出てきた。


「佑樹?」


「そうだよ、しっかりしろ浩二」


成長した佑樹はますます精悍さを増して俳優のようだ。


「佑樹!一体どうなってるんだ!」


俺は佑樹に掴みかかる。


「おい浩二どうしたんだ嫁を呼ぶか?」


「嫁?」


「呼んだ方が良いみたいだな、おーい!」


佑樹は大声で誰かを呼ぶ。

すると小さな子供を2人連れた力強い女性が現れた。


「花谷さん?俺の嫁って花谷さんか?」


俺は膝から力が抜けて行くのを感じた。


「バカ!誰が浩二の嫁だ和歌は俺の嫁だ! 

お前は独身だろうが!」


佑樹の言葉にほっとするのと同時にリアリティーを感じて何がなんだか分からなくなる。


すると由香がやって来て俺の肩を優しく叩きながら話す。


「分かった?未来の運命なんてまだなにも決まってないの。浩二がどうこうしたいと考えても浩二1人ではまだ思うようにならないことだらけなのよ......さようなら」


由香の言葉に俺は膝がら崩れ落ちた。


「そんな!由香待ってくれ!俺は由香を愛しているんだ!」


叫びながら先ほどから俺の肩を叩く力が強くなって来たのを感じていた。


俺は体が浮かぶ感覚に襲われて目を開いた。


「浩二君しっかりしてよ!」


目の前には心配そうな顔をしたいつもの由香がいた。

俺の体をしっかり抱き締めていてくれたようだ。


「夢だったのか?」


俺はまだ覚醒仕切って無い頭を振りながら体を起こした。


「どんな夢を見たのか知らないけど酷いうなされようだったわよ」


そう言って心配そうに見てくれている由香に例えようのない安心を感じた。


「由香!」


「きゃ!」


驚く由香に構わず俺は由香を抱き締め続けた。

由香は最初は驚いていたがやがて俺の髪を優しく撫でてくれる。


「落ち着いた?」


「...うん」


「怖い夢を見たの?」


由香の言葉に俺は無言で頷く。


「そう、でも大丈夫だよ。何も心配しないで。

私は何処にも行かないから」

 

その言葉に気になった俺は由香に聞く。


「ひょっとして僕、何か言ってた?」


由香は顔を赤くしながら俺を見る。


「...少しね」


そう言いながら嬉しそうな由香だった。

その後しばらく俺の傍に由香は居てくれた。

由香は学校を休んでいる俺の為に来てくれて。

兄貴から『今寝てるよと熱も下がったから浩二の部屋に行っても大丈夫だよ』と聞かされて俺の部屋に入るとうなされているからびっくりした事を教えてくれた。

落ち着いて来た俺は由香にさっき見た夢を話す。

由香は単なる夢の話に真剣に付き合ってくれる。


「それは私にも悪夢よね、浩二君と結ばれないなんて。でも何故私の相手は祐ちゃんなの?」


由香もそこが引っ掛かるようだ。


「祐一は小悪魔だ」


「小悪魔?」


由香は理解出来ないって顔をした。


その後の夢の話もする。


「『運命なんて何1つ決まってない』か...」


「そうなんだって」


「でも夢の中の私は浩二君1人では思いようにならないことだらけって言ったんでしょ?

それなら大丈夫よ」


「そうだよね」


嬉しそうな由香を見て言いたいことを理解する。

俺と由香は声を合わせる。


「「僕達は1人じゃないもんね」」


そして見つめ会う俺と由香。


「由香、風邪が移るよ?」


「浩二君の風邪なら移して...」


「由香...」


「浩二君....」


俺達は静かに唇を重ねた。




ありがとう由香。



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