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どこまで行ってるの?

翌日の11月23日朝 俺はリビングでコーヒーを飲んでいると兄貴は帰ってきた。


「お帰り」


「ただいま浩二」


「どうだった、みんな喜んでくれた?」


「う~ん喜んでくれた事になるのかな?」


兄貴は複雑な顔をした。


「まあコーヒーでも飲む?」


俺は兄貴にコーヒーを勧めた。


「ありがとう浩二」


兄貴は寒かったのかコーヒーカップを両手で持ちながらゆっくり飲み始めた。

ミルクたっぷりの砂糖を少し兄貴の好きなカフェオレだ。


「はあ~」


兄貴が珍しく溜め息をする。

 

「どうしたの?」


「浩二には話しておくよ...」


兄貴は昨日あった事を俺に簡潔に伝える。


「.....そんな事になったのか」


「そうなんだよ、コーヒーありがとう」


兄貴は疲れているのかそれだけを言うと昨日持って行った容器をシンクに置いて自分の部屋に戻ってしまった。

俺は自分のコーヒーカップを洗うついでに全部洗っておいた。


「兄貴も大変だな...」


誰もいない部屋で俺は呟く。

みんなを労う為だったのに思わぬ展開となり戸惑う兄貴の顔が目に浮かぶ。

鈍感だった兄貴がやっと自覚した恋だから何とか実って欲しい。

俺は心からそう願った。


今日は昼過ぎから由香達と買い物に行く予定を思い出す。

川井さんのお母さんにお礼の品を贈るため由香や佑樹と花谷さん孝に川井さんの6人で百貨店に行く予定をしていた。

[祐一は用事があるので今回はパスした、とても残念がっていた]


俺は家を出て由香と待ち合わせの場所へ行く。

由香は時間ピッタリに現れる。


「由香こんにちは」


「浩二君こんにちは」


由香は今日も可愛いい。俺は由香の姿に見とれていた。


「どうしたの?」


「いや今日も可愛いなって」


俺は由香に正直に言うと由香は嬉しそうに俺の手を握って来た。


「ありがとう!」


由香はニコニコ笑顔で応えてくれる。

俺は幸せを感じながら兄貴は順子姉さんと気楽に手を握ってお出掛け出来ないのを可哀想に思う。


駅から電車で一駅。ターミナルを出ると百貨店が3つ並んでいた。

みんなで決めた百貨店の入り口で佑樹達を来るのを待つ。


「お兄さん昨日は上手くいったのかしら?」


やはり由香も気になるらしい。


「うん少しややこしい事になったみたい」


「え?どういう事?」


由香は俺に順子姉さんの家で何があったのか聞いてきた。


「それがね..」


俺は今日兄貴に聞いた話を由香に聞かせる。


「なるほど...そうなるよね」


「兄さんも良かれとおもったんだろうけどね」


「でも唯さんや志穂や美穂にとっては残酷な話よ」


「残酷な話?」


俺は由香に聞いた。


「だってあの3人も兄さんの事を9年間も思い続けているのよ。

兄さんの優しさに触れたら諦めきれなるのも当然よ」


「そうだよな」


俺達は唯さん達の気持ちを考えると複雑な感じがした。


「兄さんが心配なんだ」


「心配?」


「兄さんの心中を考えるとね。

順子姉さんを想う兄さんの気持ちは本当だ。

でもそれが実らないのは兄さんは辛いだろうって」


俺の言葉にしばらく由香は考えていた。


「ねえ浩二君」


「何?」


「お兄さんの優しさは時に人を悩ますのよ」


「悩ます?」


「ええ、優しさだけじゃ駄目な時もあるの。

お兄さんには辛い決断だけど優柔不断な態度じゃなくハッキリこの先は順子さんを第一にしないと駄目なのよ」


由香は言い切った。

それは俺も思っていた事ではあった。

だがそれは兄貴にとっては一番苦手な事であった。

他人を思いやる優しさは兄貴の性格だから。


「決めるのはお兄さんだけどね」


由香はそう言って悲しそうな顔をした。

唯さん達の事を考えているのだろう。

暫く俺達は兄貴達の恋の行方を考えるのだった。


「浩二お待たせ!」


「ごめん由香待った?」


佑樹と花谷さんが来た。

2人はクラブが終わって直接来たが途中で着替えたのか制服ではなく私服だ。


「大丈夫まだ時間前だよ」


俺は佑樹達にそう返して4人で話をしながら孝達を待つ。


「お待たせ」


「こんにちは待たせたかしら?」


約束の時間通り孝達は現れた。


「時間通りだよ」


俺達は早速百貨店に入り川井さんのお母さんに贈るプレゼントを探した。

川井さんの意見を聞きながら何が良いか雑貨屋を物色する。


「これなんかお母さんが好きそうよ」


川井さんの選んだのは綺麗なレース編みのコースターだった。


「可愛いいな、私もこれが良いと思う」


「素敵な模様ね私も気に入ったわ」


女の子3人が選んだのなら間違いないだろう。

男3人は素直に従う。他の意見もないから当然だ。

お金を出しあってコースターを購入する。

せっかくなので百貨店の中を6人でブラブラ歩く。


「あ、可愛いい洋服!」


由香がマネキンに着せられた洋服に食いつく。


「こっちのカーディガンも素敵!」


「ねえ見てこのセーター似合うかな?」


女の子はやはり買い物好きだ。

俺達男3人は手持ち無沙汰になる。

しかしここで邪魔は出来ない。邪魔をしたら後が怖い事を知っているからだ。

しかし10分経ち20分経ちすると我慢も限界に来る。

仕方ないから俺は由香達に声を掛ける。 


「由香まだ見るなら僕達百貨店の屋上のスナックコーナーに行っとくけど良いかな?」


「「「良いよー」」」


由香達は俺達をろくに見ないで返事をした。


「それじゃ我々は行きますか」


俺達は百貨店屋上のスナックコーナーに行きジュースを買って空いている席に座った。


「やれやれだな」


「女の子は買い物が好きだよね」


「全くだ」


俺達は女の子達がいないのを良いことに愚痴を言い合う。

暫く俺達は他愛も無い話をする。 


「なあ浩二、橋本さんとは付き合って長いんだろ?」


孝が聞いて来た。


「そうだな付き合うようになったのは小4からだから4年位かな?」


「そうか、もっと長いかと思ったよ」


孝は意外そうな顔をする。


「孝、浩二達が付き合いだしたのは4年前だけど橋本は小1から浩二にぞっこんだったぞ」


「そうだろう、橋本さんと浩二はそれくらい長いと思ったよ」


佑樹の言葉に孝は納得したように頷いた。

俺は少し照れ臭くなる。


「そう言う孝こそ川井さんと付き合って何年だ?」


俺は孝に聞く。


「僕達か?僕達は幼稚園からだから10年以上になるかな」


さらっと孝は言った。


「すっげえな孝と川井ってそんなに長いのか?」


佑樹は驚いた声を出す。俺も同意見だ。


「別に凄くないよ。気がつくと10年って感じだよ。佑樹も花谷さんと長いのか?」


「俺達か?そうだな俺達も浩二が正式に付き合いだしてからだったから4年位だな」


佑樹の話に俺は4年前の事を思い出す。

(そうだ佑樹の時はサッカー留学の話とかあって大変だったな)


「みんな長いんだな。ところで今は男だけだ。

みんなどれくらいまで行ってるか話さないか?」


「どれくらいって、何がだ?」


孝の質問に佑樹は意味が分からないといった顔で聞き返す。


「だから手を握るとか肩を抱くとかそんな事をどこまでしたかだよ」


孝はドキッとする事を言い出した。


「ええ?」


「そんな恥ずかしい事言えるかよ」


俺と佑樹は孝に言う。


「大丈夫だ、僕も恥ずかしい」


「何が大丈夫だよ!」


「佑樹、知りたくないか?今僕達の交際がどこまで行ってるかを?」


孝は顔を赤くして佑樹に迫る。

佑樹も孝に押されてしぶしぶ頷く。


「そりゃ少しは知りたいけどよ」


「浩二は?」


孝は俺の方を見る。正直に言えば余り興味が無い。しかし話の腰を折るのも悪い気がするので一応乗ってみる。


「そうだな気にはなるかな?」


孝は納得したように頷く。


「まずは僕から言うぞ」


「良いのか孝?」


良いのかと言いながら佑樹は聞く気満々だ。

(やれやれ中学生の会話だな)

俺は大人目線になっていた。


「瑠璃子とキスした事がある」


「何だと!」


「わ!どうした浩二?」


孝の爆弾発言に俺は思わず大きな声を出していた。

(何だと?まだ中学2年生だぞ?

俺は前回は20まで無かったぞ?

意外と進んでいるんだな孝と川井さんって)


「そんなにびっくりしている所を見ると浩二は無いみたいだな」


得意顔をする孝。

(なんか悔しいが俺の由香とのキスは記憶がないからノーカウントだな)


「まあそうだな」


「そっか意外だな。佑樹は?」


孝の追求は佑樹に伸びる。


「俺か?俺達は頬っぺたにチューだな」


意外にあっさりと話す佑樹。


「そっかキスは?」


「ないない、和歌は身持ちが固いんだ」


佑樹は大きく手を振る。


「へ~、佑樹は我慢してるのか?」


「いや我慢じゃないな、俺も和歌と同じだな」


「「同じ?」」


俺と孝の声が被る。


「そうだ、まだ俺達には早いと考えているだけだな」


佑樹のしっかりした考えに驚く。




「お待たせ」


「何の話をしてたの?」


「佑樹変な話をしてないでしょうね?」


女の子達が買い物から戻って来た。


「大した話はしてないよ。

みんなの仲はどれくらい進んでいるのか聞いた話をだけだよ」


孝はあっさりと話す。


「ちょっと孝君、またキスの話をしたんでしょ!」


川井さんの発言に由香や花谷さんも固まる。


「え?川井さんキスしたことあるの?」


「え?意外!」


由香と花谷さんが食いつく。


「孝君あれは幼稚園の時でしょ!」


「幼稚園?」


川井さんの言葉にみんな首を傾げる。


「そうよ『たかちくんちゅき~』ってしたのよ。

あれ1回だけでしょ!」


「幼稚園でも事実だし、1回でもしたのは事実だ」


さらりと言う孝、結構イタズラ好きだな。


「あ、浩二君...」


「何、由香?」


「何にも話してないよね?」


由香は顔を真っ赤にしている。


「え?由香?」


「まさか由香ちゃん?」


「おいおいマジかよ?」


由香の分かりやす過ぎる態度で空気が凍る。


「...僕は何にも知らないよ」


逃げ発言をする孝。


「ちょっと待て!俺は何も知らない。覚えてないんだ!」


俺は大声で抗議する。


「浩二、覚えが無いあいだに済ましたのか?」


(やめろ佑樹!にやにや聞くな!)


「はいはい終わり終わり。佑樹も馬鹿しないの!」


花谷さんが手をパンパン叩き話は終わった。


(ありがとう花谷さん)


「もう由香も何にも無いでいいでしょ。いつまで顔が赤いの?」




由香は結局1時間以上顔の赤みが引かなかった。


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