表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/229

僕ってブラコン?

「ありがとう浩二。」


兄貴は俺が川井さんから貰ってきた削り節を大事そうに持って礼を言った。


「取り敢えず作り方は分かった。明日1度作ってみるよ」

 

兄貴はそう言うと俺の教えたレシピを再度見直してから削り節をラップに入れ始めた。


「何してるの?」


「こうして削り節をラップに包んで空気を抜いてから冷凍庫に入れると風味が落ちにくいんだって。

美味しい出汁でうどんを食べて欲しいからね」


「向こうで出汁を作るの?」


(兄貴は何でも知ってるな)

感心しながら俺は兄貴に尋ねた。


「いや家で作って持って行くよ、順ちゃんの家ではうどんを湯がくだけにするつもりだよ」


「そっか、その方が良いよね」


「うどんの具を何にしようかな?」


「具?」


「うん、でもうどんの具は僕が考えるから大丈夫だよ。

ありがとう」


兄貴は嬉しそうに笑った。きっと順子姉さんの好きな具を考えているのだろう。


翌日の夕飯は兄貴が出汁を作っていた。

兄貴が今晩の夕飯を作るから家族は遠慮して今台所には俺と兄貴の2人だ。

冷凍庫から6人分の削り節を出して解凍している。

愛用のビーグル犬(スヌーピー)のプリントの入ったエプロンを着けて台所に立つ姿は本当に愛らしい。


(兄貴と祐一は背格好が似てるけどタイプが異なるな。

兄貴は純真無垢な天使みたいで、祐一は少し小悪魔な所がある。それぞれに違う魅力だな)


そこで俺はバカな事を考えているのに気づく。


(何を考えているんだ俺は!

俺の兄貴だぞ?祐一に至っては完全な他人の男だろ?何が小悪魔な魅力だ!)

俺は危ない思考になりかけた自分を戒めた。


「どうしたの浩二?」


兄貴は俺が頭を激しく振っている様子に心配していた。


「大丈夫、なんでもないよ」


「それなら良いけど」


兄貴はよく分からないといった顔で俺を見ていた。


「よし出来た。浩二、味見して」


兄貴は小さな器にうどんの出汁を入れて俺に手渡した。


「美味しいよ!」


やはり兄貴は凄い、俺の教えたレシピだけで昨日の川井さんの家で作った味を殆ど再現してしまうなんて。


「ありがとう。これなら順ちゃんも喜んでくれるよね?」


「絶対喜ぶよ、順子姉さん兄さんの事をもっともっと好きになるよ」


「そんなに?浩二は大袈裟だな」


そう言いながらも兄貴はまんざらでもない顔をした。


「いつ順子姉さんの所に持って行くの?」


「明日の火曜日に夕方から順ちゃんと勉強する予定だからその日の夜食に作ってあげたいな」


「え?火曜日の夜って11月22日?」


「そうだよ」


兄貴はさらっと言ったが誕生日の前の夜に夜食を作るって順子姉さんの家に泊まるって事か?

で、翌日に兄貴の誕生日を2人で祝うのか?


「浩二が何を考えているのかはだいたい想像つくけど、明日は2人切りじゃないよ」


「そうなんだ」


「うん。唯や志穂と美穂も一緒だから」


「3人共?」


「うん3人共」


「兄さん良いの?」


俺は少し兄貴が不憫に思えた。

好きな人と夜食さえ2人で食べられないなんて。


「3人にも順ちゃんの勉強で本当にお世話になってるしね」


兄貴は『気にしてないよ』言いたげな顔をする。


「兄さんが良いなら良いんだけどね」


俺はそう言いながら、やっぱり釈然としなかった。


出来上がった出汁で作ったうどんは家族にも大好評だった。


父や母もじいちゃん ばあちゃんも皆『美味しい』『美味しい』と食べていた。


翌日学校のいつもの廊下でみんなと会う。


「昨日兄さんが出汁を再現したけど美味しかったよ」


「さすがは浩二君の兄さんね」


「浩二の兄ちゃんなら当然だろうな」


「私もそう思う」


兄貴を知る由香達3人は当たり前だといった顔をする。


「へえ浩二の兄さんって勉強も出来て料理も出来るし性格まで良いなんて凄いな」


「本当に皆の浩二君の兄さんの話の感じを見てると否の打ち所が無い方みたいね」


孝と川井さんも感心したように言った。


「そうなんだ。兄さんは僕より勉強も出来るし人気者だし誰にでも優しくて僕の自慢の兄さんなんだ!」


俺は兄貴を褒めて貰って嬉しくなっていた。


「浩二君はお兄さんの話になるといつも嬉しそうだね」


祐一が俺を見ながら言った。


「そうかな?」


「そうだよ、浩二君は兄さんが大好きなんだね少し妬けちゃうな」


祐一は上目使いをしながら俺を見る。

(やっぱりこいつは小悪魔だ!)

俺は心の中で叫んだ。


「僕ってそんなに兄さん大好き人間?」


俺は皆に聞いてみた。


皆は呆れたような顔をする。


「浩二君今更何を言ってるの?

小学生の時から浩二君を見てるけど昔から兄さんの事が大好きじゃない。喧嘩してるのさえ見たこと無いよ」


由香はそう言いながら溜め息を1つした。

佑樹や花谷さんも一緒に頷いている。


「僕達も浩二の兄さんにあった事無いけど浩二君の話から本当に浩二は兄さんが好きなんだって伝わるよ」


孝と祐一も頷く。


「私も浩二君の兄さんには1回しか見たこと無いけど浩二君と兄さんは本当に理想的な兄弟と思えたわ」


川井さんも感心したように話した。


「そうか、そんなに僕は兄さん大好き人間だったんだ」


俺が呟くと。


「良いじゃないお兄ちゃん大好き人間で。

それも含めての浩二君の魅力じゃない?」


由香が俺の横に寄り添って来た。


「そうだな最初から浩二は兄さんを大好きだから問題無いぜ」


「そうよ何にも問題無し!」


佑樹と花谷さんも続いた。


「僕達もそう思うよ」


孝と祐一に川井さんも頷く。


「そっか僕は昔から兄さんが大好きなんだ!」


俺は満面の笑みで皆を見た。


「「「「ひゃ!!」」」」


皆驚いた顔に変わった。


「いきなりの浩二の笑顔は効くな」


顔を真っ赤にして佑樹は言った。


「なかなか強烈だったぞ」


孝もそう言いながら笑った。

皆一斉に笑い出した。


俺もみんなと一緒に笑いあったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ