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僕達の料理事情

「ねえ浩二、夜食には何が食べたいと思う?」


「食べたい夜食?」


俺は兄貴の言葉の意図が分からず復唱する。


「うん。順ちゃんに作ってあげたいんだ」


顔を赤く染めてもじもじしながら話す兄貴。

いつもながら可愛い。


「順子姉さんに直接聞いたら?」

 

順子姉さんの好みが分からないから俺に答えようがない。


「もちろん聞いたよ、でも順ちゃん

『とんでもないそんな事を僕にさせられない』って言うんだよ」


そうだろうな。その様子が目に浮かぶ。


「周りの人達にも聞いたら?坂倉さんや志穂さんや美穂さん達にも」


「聞いたけど良い答えが無かったよ」


「どんな答えだったの?」


面白そうだから一応聞いてみた。


「うん『冷やご飯に熱い牛乳かければ良い』とか

『煮たった牛乳に饂飩を入れろ』とか

『すき焼きの割下に牛乳をぶちこめ』なんて言われた」


案の定エグいな、あの3人順子姉さんを認めてるわりには凄い事言うな。


「成る程それは参考にならないね」


「だろ。だから浩二にアイデアを聞いてるんだ」


困り顔の兄貴。そんな顔をされたら協力しない訳に行かなくなる。


「分かったよ、明日学校で何人かにも聞いてみる」


「助かるよ浩二、参考になる意見待ってるね」


兄貴に大変感謝された。本当に困ってたみたいだ。

そんな訳で翌日学校に着くと朝一番に聞いてみた。


「夜食に食いたい物か」


まず佑樹がアイデアを出す。


「肉だな」


「肉?」


「そうだ脂の乗った特大ステーキなんか最高だな」


佑樹に聞いたのが間違いだった。


「夜食に分厚い牛肉なんか食べたら胃腸への負担が凄いだろ却下」


「ちぇ!」


「それじゃ次は花谷さん。作って貰える夜食には何が食べたい?」


「私ならおにぎりに焼きそばね」


花谷さんは自信のある顔で答えた。


「おにぎりと焼きそば?」


「そうよ、まずおにぎりにかぶりついて、その次に焼きそばを口に入れるの。口の中でご飯とソース焼きそばが混ざって...最高ね」


花谷さんはうっとりした顔で語った。


「おにぎりは良いんだけど焼きそばがね、

夜食に炭水化物の重ね食いはバランスが悪いから却下」


「ちぇ!」


「でも和歌うまそうだな」


「でしょ、でしょ!」


佑樹と花谷さんは盛り上がってる。

あの2人はいつもお腹減らしてるしな。


「由香は夜食作って貰えるなら何が食べたい?」


「そうね私なら甘い物かな!」


由香は即座に答えた。


「甘い物ね...」


中々良いアイデアだな。甘い物は頭の回転も上がるだろうし。


「チョコレートケーキとかイチゴショート後シュークリームも捨てがたいな」


まるで目の前にケーキが並んでいるかの様な表情の由香。


「由香さん」


「何、浩二君?」


「兄さんが作るんだよ。買ってくるんじゃなくて」


「あ、ごめんなさい...」


由香は落ち込んでしまった。


「でも甘い物は良いアイデアだったよ。

ホットケーキなら兄さん作れると思うし」


「そうよね、話聞いたらケーキ食べたくなったわ。由香、今度食べに行かない?」


「行く、行く!」


花谷さんの言葉にすっかり立ち直ったみたい。

良かった良かった。


「浩二、兄さんはどれくらい料理出来るんだ?」


「そうね、それを聞いてから提案したいわ」


孝と川井さんが聞いてきた。

(兄貴の料理の腕前か...)


「そうだなご飯は間違いなく炊けるね、味噌汁も旨いよ。ちゃんと出汁を取ってたし」


「包丁も使えるの?」


川井さんが聞いてきた。


「うん野菜炒めなんかよく作るね、キャベツや人参を包丁で切ってた。

美味しいんだよ鶏ガラスープの素を入れて塩コショウで味を調えてあってさ」


「お兄さん凄いのね」


「すっげえな」


「本当、料理の出来る男なんて憧れちゃうね」


由香に佑樹や祐一も兄貴の料理レベルを聞いて関心する。

 

「浩二は料理どうなの?」


花谷さんが俺に聞いた。


「僕は余り料理はしないな、ご飯を炊くことや、

魚や肉を焼く位かな」


「浩二ご飯炊けるんだ?すっげえな」


「いや簡単に炊けるよ。お米研いで水入れて炊飯器に入れたらスイッチ、ピッだけだろ」


「それでもすっげえや」


「佑樹は料理出来ないのか?」


孝が聞いた。


「俺か?インスタントラーメンに葱とハムを乗せる位だな」


「まあそんなもんだよな」


「なんだよ孝は料理出来んのか?」


佑樹の言葉にニコっと笑う。こいつは自信ありかな?


「出来ないよ」


「出来ないのか?」


「自信ありげな態度だったのに?」


意外な肩透かしに驚きな声が上がる。


「だから僕が出来ないから佑樹はどうかな?って。僕なんてカップ麺位だよ」


「俺よりひでぇ!」


「そんなもんさ。祐一はどうかな?」


「僕?」


孝は次に祐一に振った。男達の料理の腕前を知りたいみたいだ。


「僕も浩二君と変わんないよ。ご飯を炊くことと簡単な料理位だよ」


「あら、でも祐ちゃん毎日自分のお弁当作ってるじゃない」


「そうよ毎日作るなんて凄いわ」


「え?祐ちゃん毎日自分のお弁当を作っているの?」


女の子達は祐一が毎日のお弁当を作っている事に関心が集まっている。


「何か自信なくしちゃうわね」


「私もよ」


由香と花谷さんが落ち込んでいる。

2人共料理は出来ない訳じゃないけど毎日のお弁当はお母さんが作ってるみたいだしな。


「あら、馴れて来ると意外と楽よ」


「川井さんも毎日作ってるの?」


「本当?」


由香と花谷さんが驚く。


「うん瑠璃子は毎日お弁当を作ってるよ、僕の分までね。毎日ありがとう瑠璃子」


「ううん、1つ作るのも2つ作るのと余り変わらないしね」


そうなのか、孝と川井さんは教室で昼御飯食べてるから知らなかった。

川井さん凄く料理上手なんだよな。お母さんも料理上手だからかな?


「話は戻るけど浩二のお兄さんの料理だけど、うどんはどうかな?」


「うどんね。」


「うどんなら胃に優しいし腹持ちも良いから良いと思うよ」


成る程、孝の意見はもっともだ。


「瑠璃子のおばさんが作るうどん出汁は絶品だよ」


「そうなの?」


「うん確かにお母さんのうどん出汁は美味しいよ。関西風だけどね」


今、川井さん聞き捨てならない事を言いましたね?

関西風のうどん?前回の大学の時は毎日のように食べたな。久し振りに食べたいぞ。


「ねえ川井さん」


「何、浩二君?」


「おばさんにうどんの出汁の作り方教えて貰えないかな?」


「え?良いと思うけど。お母さんに聞いてみる」


「ありがとう。覚えて兄さんに教えるよ」


いつでも僕も食べられるようになるしね。


「私も教えて!」


由香も行くのか。


「私も!」


花谷さんも?


「僕も良いかな?」


祐一まで?


「き、急にどうしたの?」


驚く川井さん。


「関西風うどんって興味があって」

(浩二君の食い付き、きっと大好きに違いない、私も覚えて浩二君にご馳走するのよ!)


「私も小学校の修学旅行の時に駅で嗅いだうどん屋さんの匂いが忘れられないの」

(おにぎりと相性が合いそうね。美味しくできたら佑樹にも食べさせても良いな。)


「僕もテレビで見て興味があったんだ、本当にあんなに薄い色なのに味があるのかなって」

(熱熱うどんを浩二君と一緒に食べるの、フーフーって楽しみ。)


「俺も行くぜ」


佑樹まで?


「俺は食べる方専門だぜ!」


そうだろうな。




そんな訳で川井さんの家でうどん出汁を教わる事になった。



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