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由香は14歳。

今日は10月10日、由香の誕生日。

俺は由香の本家に行く。

小6の時は受験で誕生会は無かったのでプレゼントを渡しただけだった。

それ以外は毎年恒例の行事だ。


「こんにちは」


「こんにちは浩二君」


「いらっしゃい」


「浩二君、元気そうだな」


「浩二君元気?」


由香の家族に挨拶をする。

そして最後に由香のお祖父さん夫婦に挨拶をする。

 

「こんにちは今年もお招き頂きありがとうございます」


「おお、よう来たな。久し振りじゃな、今年も楽しんで下されよ」   


「今年も元気な浩二君を見れて嬉しいわ」


由香のお祖父さん夫婦も元気そうに俺を迎えてくれた。

今年は由香の家族に由香の祖父母そして俺の7人が集まっていた。 


「さあ始めましょうか」

 

由香のお母さんがケーキを運んで来てパーティが始まった。

大きなテーブルに由香の家族と俺も座り由香が立ち上がり挨拶をする。


「私の14歳のお誕生日をしていただきありがとうございます。

今年もこうして元気な皆様にお祝いして頂き由香はとても幸せです。

来年も皆様とお祝いして頂きたいです」


由香は頭を下げる、みんな大きな拍手をして祝う。

そして会は始まり和やかに誕生会は進んだ。 


「浩二君少しいいかな?」


由香のお父さんに話かけられた。


「はいおじさん」


俺はニッコリ笑って由香のお父さんの横に行く。


「あ、相変わらずの良い笑顔だね、うん。 

去年は色々あって大変だったが あれから無茶な事はしてないみたいだね」

 

去年の色々とは殴られて入院騒動の事だろう。


「はい去年は大変みなさんにはご心配おかけしました。僕も反省しまして無茶な事はしておりません」

 

俺は由香のお父さんに頭を下げる。

 

「そうか、それならば良い。僕も君の事は認めたからね」


そう言うと由香のお父さんはニッコリ笑い俺の肩をポンと叩いた。


「え?」


「お父さん?」


「あなた...」


突然の由香のお父さんの言葉にみんな驚く。


「なんじゃ隆二はまだ浩二君を認めてなかったのか?」


由香のお祖父さんの言葉に更に驚く。


「嫌だなお父さん、僕は浩二君を由香の大切な友人の一人として認めていましたよ。

しかし今は由香の将来の夫として認めたんですよ」 


由香のお父さんの言葉に俺は驚き声を失う。

由香も目を大きくしてお父さんを見ている。 


「当たり前じゃ私はもう浩二君を前から認めとる。由香のお婿には山添浩二しか考えられん」


由香の祖父橋本喜兵衛さんの言葉が続いた。

  

「浩二君、だがまだ君達は中学校2年だ。

大人になるまでは節度を持った交際を続けてくれよ」


由香のお父さんに念を押される。


「はい」


俺は由香のお父さんにもう一度頭を下げた。

由香のお父さんは納得して俺に右手を差し出す。

俺も右手を差し出し力強く握手をした。

由香を見ると涙を流していた。


「でもお父さん節度ってどのくらいの事までOKなの?」


由香のお姉さんの梨香さんが聞く。

由香のお父さんは少し考えて、


「それは浩二君と由香が考えたまえ」


由香のお父さんは明言を避けた。そりゃそうだろう。


「ほっぺにキスくらいは?」


梨香さんは更に聞く。


「姉さん!」


由香が堪らず梨香さんを止める。


「だって興味あるじゃない。その様子ならほっぺにキスはしたのかな?」


梨香さんはイタズラぽく笑う。


俺も由香も顔を真っ赤にする。


「あ、まあほっぺにキス位は許そう...」


由香のお父さんは複雑な顔で許可をする。


(良かった、俺はそれ以上の事はしていないからな)

 

「なんじゃ当たり前だろ。それなら浩二君?」


由香のお祖父さんに呼ばれる。


「はい」


「由香と接吻はもうしたのかな?」


「え?接吻ですか?」


まさかの喜兵衛さんの追い打ち! 

しかし俺は身に覚えがないから即座に否定する。  


「いえまだしておりません」  


馬鹿正直に返す俺。


「そうか別に構わんぞ?なあ由香」

  

お祖父さんは由香を見る。


「どうしたんじゃ由香?」


みんなが由香を見る。


由香は顔だけじゃなく耳の先まで真っ赤にして下を向いている。


「由香さん?」


俺も由香に声を掛ける。


「まさか浩二君...」


由香のお父さんの声が震えている。いや待って身に覚えがないです。


「お父さん待って!」


由香の声が響く。


「ごめんなさい、私...しました」


え?いつ?俺覚えがないがないぞ!

誰と?いや由香が他人とするわけない。

一体どういう事?

俺の頭は大混乱だ。


「由香話してごらんなさい」


由香のお母さんが優しく由香の手を握りながら促す。


「はい...」


由香は静かに話し始めた。


「去年浩二君が入院した時に...」


「去年意識不明で浩二君が入院した時ね」


由香のお母さんの言葉に由香は頷く。


「あの時私は浩二君に目覚めて欲しくて私は浩二君にキスをしました。ごめんなさい!」


由香は真っ赤な顔で俺に頭を下げた。


(あ、あの時か)

俺は思い出す。

あの時由香は俺の夢の中に表れて俺を助け出してくれたんだ。


「...謝らなくていいよ」


「浩二君...」


俺は由香を見ながら優しく微笑む。


「あの時由香さんは意識を失ったままの僕の夢の中に表れて助け出してくれました。

由香さんのキスのおかげかは分かりませんが僕はこうして戻って来れました。

だから由香さんを責めないで下さい。

ありがとう由香」


俺は由香に頭を下げた。


「浩二君...」


由香の目から再び涙が流れ出した。


「許す!浩二君はもう私達の家族の一員じゃ!」


「私もですよ」


「私も!」


「私もよ!」


由香お祖父さんに続いて由香のお祖母さんに由香のお母さん、梨香さんも続いた。

みんな由香のお父さんを見る。


「...ぼ、僕も許します」


由香のお父さんが小さな声で呟く。


「なんじゃ聞こえんぞ隆二」


由香のお祖父さんがイタズラぽく聞く。


「だから許しますよ!由香、お父さんは許します。勘弁して下さいよ」


由香のお父さんがみんなに頭を下げる。


「皆さんありがとうございます」


俺は由香の家族に頭を下げた。




俺はこうして由香の家族の一員になれた。


覚えがないのは少し残念だ。 


でもありがとう由香。


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