新しい扉?
今日は仁政第一中学校の体育祭。
やはり体育祭のメインは陸上競技、運動クラブの生徒達の活躍ばかり目立つ。
しかも1着は殆ど体育科の生徒が占めていて
特進コースの生徒はクラブ活動を禁じられている為出場しても最下位ばかりだった。
「浩二君いよいよ次の種目だよ」
「祐一随分気合い入ってるな」
俺は祐一と出場する2人3脚の準備の為席を立った。
由香も川井さんとペアで出場する。
仁政の2人3脚は男子は男子同士、女子は女子同士と決まっている、残念。
「みんな頑張って!」
孝の声に送られて俺達は選手控えに着く。
「さあ浩二君準備しよう」
そう言うと祐一はジャージ下を脱ぎだした。
「こら!祐一なせ脱ぐ?」
「だって足首に紐だけじゃうまく足を合わせられないでしょ?」
そう言いながら祐一はジャージを脱ぎ捨て短パンになる。
脛毛の全く無い艶々な生足だ。
「祐一剃ってるのか?」
俺は思わず聞いた。
「ううん、僕の家系は男も女もみんな生えないんだ」
「うらやましい...」
「良いなー痛い思いしないで済むなんて...」
祐一の発言に一部の女子から何か聞こえる。
「おおう!」
一方で男子生徒から変な声が聞こえる。
いや、聞こえない聞こえない。
「さ、早く浩二君も脱いで。早く僕を縛って」
祐一は紐を持って俺に迫る。
「祐一、誤解を招く発言は止めなさい。
それにやっぱり脱がないと駄目か?」
俺は祐一に再度聞く。
「えーそれなら足首と太股の付け根の2ヶ所を縛ってくれるなら良いよ」
祐一はとんでもない事を言い出す。俺は慌ててジャージ下を脱ぎ捨てた。
「さあ祐一準備をしようか!」
俺は片足を差し出す。
にっこりと笑うと祐一は自分の足を差し出した。
「早く浩二君縛って縛って」
祐一は俺のふくらはぎと自分のふくらはぎを密着させてねだるように言う。
周りの男子生徒達の目は祐一のふくらはぎに釘付けだ。
俺は周りを見ないようにして足首を手早く括る。
「あん、浩二君そんなに強く縛ったら跡が残っちゃう」
祐一は上目使いしながら俺に言う。
「祐一、何度も言うが誤解を招く発言は止めなさい」
「考え過ぎだよ浩二君」
そう言いながら立ち上がり俺の腰に手を回す。
「な、何をしている?」
俺は祐一に聞く。
「だって2人3脚だよ、定番のスタイルじゃない」
祐一は俺の脇腹を擦る。
「や、やめろ。か、肩を組めば良いじゃないか」
「だって浩二君と身長差があるからこうするしかないでしょ?」
抗議する祐一、だが俺は説得をする。
俺はこちょばいのは苦手なんだ。
祐一と軽く練習をしてから出番まで他の選手のレースを見る。
由香と川井さんの番が来た。
「由香~転ぶなよー!瑠璃ちゃん頑張って!」
体育クラスの方から一際大きな応援の声が聞こえる。
花谷さんだ。
「おい!橋本と川井は白組だろ?俺達は紅組の応援だろうが!」
佑樹のもっともな声も聞こえる。
「うるさい!今は親友の応援よ!」
佑樹は頭をはたかれて大人しく自分の席に戻る。
(それが良いよ佑樹、花谷さんはこういう時は熱い男だから)
由香と川井さんがスタートする。
バッチリ息の合った走りだ。
俺の前を通過していく由香と川井さん。
後ろ姿を見送る。
同じ位の背丈、スラリとした2人、ややお尻の大きいのが由香だろう。
「浩二君どこを見てるの?」
横から祐一の冷めた声が聞こえる。
「芸術を観賞しているのだよ」
「後で由香ちゃん達に言ってやろ」
祐一がまたとんでもない事を言い出す。
「祐一!」
「な、何?」
俺は哀願の目で祐一に言う。
「2人3脚で腰に手を回しても良いよ」
微笑みながら許可をだす。
「う、うんありがとう」
なぜか顔を真っ赤にした祐一は俯いてニヤニヤしている。
由香と川井さんは2着に入った。
体育科が1着だから2着でも大したものだ。
汗を一杯かいた由香達が戻って来た。
「おめでとう!凄く速かったね」
「ありがとう!瑠璃ちゃんのおかげだよ」
由香は嬉しそうに川井さんを讃える。
「そんな事ないよ、私が由香ちゃんに合わしただけだよ」
2人はお互いを讃えあう。
美しい女の友情だ。
「次は浩二君と祐ちゃんね、あれ?祐ちゃん顔が赤いよ?」
「本当、大丈夫?」
祐一の様子に不思議そうな由香達。
「大丈夫、今僕は幸せだから。さあ浩二君行こうか!」
元気に立ち上がる祐一。俺もスタートラインに向かう。
「お?あいつは!」
「見た事あるぜマラソンの時に!」
「そうだ非常階段の踊り場で叫んでいた特進クラスのあいつは!」
「「「バルボアだ!!」」」
周りの座っている大勢の生徒達から声が掛かる。
「不味い!浩二君落ち着いて!」
由香が何か後ろで言っているが、もう俺の耳には入らない。
スタートのピストルが鳴り俺達は飛び出す。
「「フッフッフッ」」
息を合わせて走り2着につけるが先頭の体育科の生徒には追い付けない。
「クソ祐一全力で行くぞ!」
「うん!」
俺はしっかり祐一の腰に手を回して力を入れる。
「あん!」
祐一から変な声が聞こえるが気にしない。
「うりゃ!おりゃ!そりゃ!ありゃ!」
俺も変な声が出てしまうが気にしない!
「あん!いや!あん!うん!」
祐一も変な声をしているが気にしない!
すると前を走る体育科の2人が突然前屈みになりスピードが落ちた、いや立ち止まった。
俺達はゴール手前での大逆転勝利を納めた!
興奮した俺は祐一を抱き上げて俺は叫んだ
「エイドリアーン!」
「また浩二君は調子に乗るんだから!」
選手控えに戻ってから由香に叱られた、
「変な扉を開けちまったか...」
学校の帰りに佑樹に心配された。