夢の続きを
今日は9月23日秋分の日。
順子は自分の部屋で有一と受験勉強をしていた。
9月の模試で遂にC判定を取り夢が現実味を帯び、2人の勉強にも力が入る。
「順ちゃんここの動詞は不規則変化だからSangじゃなくてSungだよ」
「あ本当だ、難しいわね過去分詞はどうにも苦手よ...」
「順ちゃん少し休憩しようか」
国語と数学は満点近い点数を稼いでいる順子、
しかし得意の英語で思わぬ苦戦を強いられ焦っていた。
「順ちゃんは英検で英語に自信があったから余計に足元を掬われた気持ちになって苦手意識がついてるのかもね」
有一は順子の淹れてくれた紅茶を飲みながら指摘した。
「それはあるわね」
順子はホットミルクをぐいぐい飲みながら申し訳なさそうに返事する。
「よし、余り根を詰めすぎても効率はあがらないから気分転換にお出掛けしよう」
「どこに行くの?」
有一の提案に嬉しそうな順子。
今日は朝からずっと一緒に勉強している。
それだけで幸せなのにお出掛けなんて夢のような気がするのだった。
「今日は近所の公園でどうかな、秋の花が一杯に咲いてて凄く綺麗だよ」
「行きます!」
即答で答える順子。
「着替えるから待っててね」
今日は有一が来るので朝からシャワーを済まし、お洒落な服を着ていたからすぐに出られると思う。
でも外に出るとなると着替えずにはいられない順子だった。
公園は有一の言った通り綺麗な花が一杯咲いていて2人は色々な花を見ながら歩く。
「あの花は何て言う花かな?」
公園の遊歩道に咲いている青い花を見て順子は有一に聞いた。
「露草だね。食べる事も出来るよ」
「へー有一君詳しいね」
「それほどでもないよ。昔図鑑で見た事があって覚えてただけだから」
2人は色々な花を見ながら順子は有一に花の名前を聞いた。
有一は殆どの花の名前を答えてくれる。
順子は有一の博識に驚きながら誇らしくなるのを感じていた。
(こんなに凄い人を私は好きなんだ。
そしてこんなに凄い人に私は想われているんだ)
その後遊歩道を抜けて大きな広場に出た。
「あー良い天気。外に出ると気持ちいい!」
順子は公園の芝生にレジャーシートを敷き、その上で寝そべり背伸びをする。
横に座り眩しそうに順子を見る有一。
平和な一時が流れた。
「ねえ有一君」
「何、順ちゃん?」
順子は体を起こして有一の横に並んで座った。
「こうしていると小学校の遠足を思い出すね」
「そうだね、懐かしいな」
「中学校は別々だったから今の時間が夢みたい」
順子は目を細めて優しく微笑む。
有一も順子に優しく微笑んだ。
「夢じゃない、一緒の高校に行けばまた続きが見られるよ」
「そうね絶対に行くよ。私受かってみせる」
順子の目に強い決意が宿る。
「頑張ろう。僕も順ちゃんと一緒の高校に行く事が夢だから」
有一は順子の手を握りしめた。
「うん」
とても嬉しそうに順子は顔を綻ばせる。
「そろそろ行こうか」
「そうね。ありがとう、良い気分転換が出来ました」
順子と有一はにっこり笑いあう。
立ち上がりシートを畳んで順子の家に戻った。
2人仲良く手を繋ぎながら。