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ある夏休み 孝と瑠璃子編

ある夏休み。


今日は青木孝と川井瑠璃子の1日を見てみよう。




「今日はこのくらいで終わろうか、お疲れ瑠璃子」

 

「お疲れ様孝君」


2人は瑠璃子の家で2学期からの学校行事の企画書を作っていた。

荷物を片付け始める2人、そこに瑠璃子の母がやって来た。


「二人共お疲れ様。ご飯どうする?」


幼稚園からの付き合いで家族のような感じで瑠璃子の母が聞く。


「どうしようかな?」


「孝君お家にお昼用意してあるの?」


瑠璃子が聞く。


「いや今日は食べて帰るように言われて来た」


青木孝の家は会社を経営している。  

両親共に忙しく小学生の頃から外食が多かった。


「それなら食べて行きなさい。おばさんも今から作るのよ」


「そうよ、孝君一緒に食べよ」


「それじゃお言葉に甘えていただきます」


川井母娘に言われて孝も昼御飯をいただく事にする。

昼御飯はうどんと稲荷寿司だった。

因みに川井家のうどんは薄口醤油の関西風の出汁だ、

瑠璃子の祖父が大阪出身だからである。

孝も関西風のうどんは大好きな味だった。


「ごちそうさま、おばさん美味しかったです」


「いえいえお粗末様でした」


食べ終わった食器をシンクに運び洗い始める孝。


「あらいいのよ、おばさんがやるから」


「いえこれくらいはさせて下さい」

 

孝は綺麗に洗い物を終えて手際よく片付けて行く。


「ありがとう孝君、お母さんそれじゃお言葉に甘えて私達はお茶の用意をしよう」


「そうね、孝君飲み物は何が良い?」


2人キッチンに向かって孝に聞く。


「ありがとうございます、それじゃコーヒーをお願いします。」


「分かった、瑠璃子豆を持ってきて。」


コーヒーが出来た。

テーブルの上には3つのコーヒーカップが並びコーヒードリップポットから淹れたコーヒーが注がれた。

 

「やっぱりおばさんのコーヒーは美味しいですね」


孝が心底感心しながら言う。

 

「本当、お母さんまた一層美味しくなったわ」


瑠璃子も母親のコーヒーを飲みながら感心する。


「ありがとう、最近またコーヒーの研究に凝っちゃって」


瑠璃子の母は少し照れたように笑う。


「やっぱり浩二のおかげかな?」


孝は瑠璃子の母に聞いてみる。


「そうね、間違いなくそうよ」


瑠璃子の母は断言する。


「浩二君って不思議な人よね、落ち着いた雰囲気はとても同い年と思えないもん」


「そうよね、お母さんも浩二君と話してると同世代の気がするもの」

 

「あら、お母さんと同世代なら浩二君も40代?」


「そうかも」


川井母娘は楽しそうに話す。

その様子を見て心底明るくなった川井家に嬉しくなる孝だった。


「お母さん浩二君って以外におかしな所あるのよ、ねえ孝君」


「そうだな、たまに変な事に挑戦するね」


瑠璃子は母親に浩二の話をする。


「教えて、おばさん興味あるわ」


すぐに食いつく瑠璃子の母。


「例えばパチパチキャンディをどのくらいまで口に入れられるか試したり」


「パチパチキャンディ?」

 

聞きなれない名前に首を傾げる瑠璃子の母。


「うん口に入れるとパチパチする小さな塊のキャンディだけど、たまに大きな塊があって破裂すると割りと痛いんだ」


「そうそう。でも浩二君うっとりしてるんだよね

『懐かしい』とか言って」

 

「よく分からないわ...」


「僕達も分からないから大丈夫だよ」


「他には?」


次を促す瑠璃子の母。


「あとは親指と人差し指と中指で腕立て伏せしたり、たまに片腕を背中に回してやろうとしたりもするよね」


「出来るの?」


「ううん片腕は無理みたい」


「でしょうね」


「それで『無理するなよ』って言うと

バルボア(ロッキー)は出来るのにって悲しそうに言うんだ」


「バルボア?」


「映画の主人公だってさ」 


ますます混乱する瑠璃子の母。

あれ程落ち着いた浩二と結び付かないようだ。


「あと挑戦とは違うけど変わった癖もあるよね」


思い出したように瑠璃子も続く。


「変わった癖?」


「そうそう。マラソンの後ね」


「校庭を決まった周走るんだけど、最後の一周はクラスメートを引き連れて走った後ゴールしても一人止まらずに校舎横の非常階段を駆け上がって最上階の踊り場で両腕を上げて雄叫びをあげるんだ」


「???」


「そうそう。凄い笑顔でね。」


「先生も浩二の笑顔に怒れないんだ」


「ごめんなさいおばさん全く意味が分からない」


「大丈夫、僕達も分からないから」


困惑顔の3人だった。




その頃の山添家。


「浩二タマゴ知らない?

まだ僕玉子かけご飯食べたいんだけど」


「ごめん兄さんここに2個残ってるよ」


「ありがとう。浩二も食べる?」


「しばらくは生タマゴは食べたくない」


「え?浩二玉子かけご飯好きでしょ?」


「しばらくはいらない」


まだ鼻の奥が痛い浩二だった。


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