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隠し事はいけません。

「ねえ浩二、順ちゃんの高校聞いてる?」


ある日兄貴が俺に尋ねてきた。

(困ったな学芸大学附属高校受験の話は内緒にしているから話す訳にはいかない。


「兄さんが聞いてないなら僕が知ってる訳ないよ」


俺は心で詫びながら嘘をつく。

兄貴は俺の顔をじっと見る。


「な、何?」


「浩二、嘘は駄目だからね」


あっさり兄貴に見破られる。


「ど、どうして嘘と思うのさ」  


「兄弟だからね、浩二は嘘が苦手だし」


スピリチュアルの達人のように兄貴は俺の顔を窺う。


「ねえ浩二、本当の事を話してくれる?

順ちゃんの志望校はどこ?」


兄貴の真剣な眼差しに俺は完全に追い詰められ

顔から汗が滴り落ちる。


「僕から言ったら順子姉さんに怒られるよ」


俺は嘘がつけないのは前回から同じだ。

思い出してみれば会社の帰りに隠れてラーメン屋に寄って帰った時も、

仕事の付き合いで夜のおねえさまな店に行った時もたちどころに妻にバレた。


「浩二、僕は順ちゃんが好きなんだ。

最近順ちゃんは無理をして勉強をしているから、

いくら体の強い順ちゃんでも無理をし過ぎて体を壊さないか心配なんだよ」


はっきり好きと兄貴の口から聞けたのは嬉しいが俺が最初に口にして良いか悩む。

ここは順子姉さんの了解を貰うしかない。


「分かったよ兄さん、順子姉さんに聞いてみる。

ダメと言われた時はごめんね」


兄貴にそう言うのが精一杯だ。

翌日俺は由香に聞いてみた、困った時の由香頼みしかない。


「そりゃバレるわよね」


由香はあっさり俺の嘘が兄貴に見破られた事を納得する。


「どうして僕の嘘はすぐにバレるの?」


俺は納得出来ず由香に聞いてみた。


「話すと思う?」


「やっぱりダメ?」


「そりゃダメでしょ、嘘を隠す方法教えたら次から堂々とバレない嘘吐かれちゃうじゃない」


由香は少し呆れた顔をした。


「それより順子さんの事よ。浩二君は話すべきと思う?」


「いずれ分かる事だから話すべきとは思うけどタイミングなんだよね」


俺の意見に由香は少し考える。


「やっぱり順子さんがお兄さんに直接伝えるのが良いわよ」


由香の言葉に俺も納得する。

その夜に由香は順子姉さんに電話をした。

順子姉さんはまだ少しタイミングが早いと難色を示したけれど、由香の隠し事は良くないと説得され兄貴に直接言う事になった。

場所は兄貴の部屋。


何故か俺と由香立ち会いの元で。


「そうか順ちゃん学芸大学附属高校を...」


「隠してごめんなさい」


頭を下げる順子姉さん。

兄貴も考え込む表情で目を閉じている。


「順ちゃん、現時点の評価は?」


「前回D判定でした」


順子姉さんは項垂れて兄貴に正直に話す。


兄貴は驚いた顔で順子姉さんを見る。


「凄い!D判定? それじゃ偏差値70を超えてるの?」


兄貴の態度が変わった事で俺と由香は驚く。


「う、うん。でもD判定だよ。まだ全然届かないよ」


順子姉さんも兄貴の変化に驚きながら返事をする。


「順ちゃん、僕は高校は内部進学組だけど一応高校受験の模試は受けてる。

だから学芸大学附属高校のD判定の偏差値の予想は出来るよ」


「有一君模試を受けたの?」


「まあ、今の学力を知りたくてね」


兄貴の告白にみんな驚く。

一体どれ程の学力なんだろう?


「兄さん...」


「何浩二?」


「ちなみに何だけど志望校欄は?」


「書く必要は無かったけど一応は学芸大学附属高校って書いたよ。」


「有一君参考までに結果を教えて」


順子姉さんも恐る恐る聞く。


「A判定だよ」


さらっと、兄貴は驚愕の事実を告げる。

やはり兄貴は凄かった。由香も兄貴に質問する。


「お兄さん因みに偏差値は?」


「それ意味ないよ。あの模試は偏差値75以上出ないし」


兄貴から更に驚愕の言葉が!それじゃ兄貴は75あるの?

最早何も言えなくなった俺達を横目に兄貴は順子姉さんの前にいく。


「順ちゃん凄いよ。一人でここまで来るなんて、

受験まで後7ヶ月切ったけど僕にも手伝わして」


兄貴の提案に順子姉さんは驚きながら秘密を話す。


「有一君。私一人の力じゃないの唯や志穂、美穂も助けてくれたのよ」


兄貴は少し驚いたようだった。


「みんな一緒になって僕に隠してたんだね...」


兄貴は淋しそうに呟いた。


「ごめんなさい私の受験が有一君の負担になりたくなかった、それにこれは私に課せられた試練なのよ!」


「試練?」


兄貴は首を傾げて順子姉さんを見る。


「そう、私は有一君の傍にいたい。もう離れるのは嫌だから私はこの試練と闘いたいの」


「それなら僕も一緒に闘わなくちゃ」


兄貴が順子姉さんの手を握りしめる。


「僕も一緒に手伝わせて!試練なら2人で越えても良いじゃないか!大好きな人を助けられないのは嫌だ!だから手伝わせて!」


「有一君!」


兄貴の言葉に感極まった順子姉さんは兄貴を思わず抱き締める。


「おう!」


その様子に思わず俺は声が出る。

身長150センチを少し越えた位の兄貴が170センチ近い順子姉さんのナイスバディに埋まっていた。


「浩二君、行こう」


いつもより低い声の由香に引っ張られ兄貴の部屋を後にした。

その後しばらく由香の機嫌は悪かった。


そして数週間後兄貴と順子姉さん、何故か坂倉さんに志穂さんと、美穂さんを加えた5人のメンバーで勉強する光景があった。 


「ごめんねみんな...」


「まあ有一と一緒に勉強出来るのは嬉しいが...」


「そうですわ、しかし何か複雑ですの...」 


「でも今は割りきりません事?」


「みんな頑張ろう春にはみんな一緒の学校だ!」


兄貴の声が響くのだった。



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