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将来の夢

3学期の期末テストが終わり俺達はほっとしていた。


「やれやれ終わった!」


「本当疲れたわ」


「浩二はどうだ、手応えの方は?」


「まずまずかな」


「由香はどうだった?」


「私も浩二君と同じよ」


「しかし中学校で赤点取ると春休みの間に補習授業なんてたまんねえな!」


「本当、公立の中学校じゃ考えられないわね」


2人は口々に文句を言う。

しかし元々仁政第一を薦めたのは佑樹達である。

2人共そんなに勉強は出来ない方ではないので赤点を取る心配は無いが万が一補習を受ける事になると春休み一緒に遊ぶ機会が無くなるため一生懸命頑張ったのである。


特進コースは春休み中もほぼ毎日補習授業があるし、

体育コースも春休み中毎日のようにクラブ活動がある。

それでも春休み中に数日は休めるようになっていた。

それが赤点補習の日であった。



「さてと今日はクラブも無いし帰るか」


「そうね久し振りに一緒ね」


「本当久し振りよね」

 

「本当だね。昼御飯を食べて帰ろうか。

あれ?あそこにいるのは祐一じゃないかな?」


「本当だ。おーい祐一!」


佑樹が大きな声で祐一を呼ぶ。

祐一も気がついたようで数人の仲間と一緒に走って来る。


「偶然だね。今日青木君達はいないんだ?今から帰る所だったの?」


「青木君と川井さんは委員長会議だって。

だから僕達で帰るところだよ。祐一は?」


「僕達は今から職員室に行って編入試験を申し込むのさ」


「編入試験?」


俺達は聞きなれない祐一の言葉に顔を見合わせる。


「あれ?忘れてるの一般コースの生徒でも基準を満たせば特進コースへのチャンスがあるって」


そう言えば合格発表の時に聞いたような気がする。由香達も思い出したようだ。


「へぇ今祐一といるメンバーはみんな基準を満たした訳だ」

 

「そうだよ佑樹、結構厳しい基準だったんだから」


祐一の言葉一緒にいるメンバー達も少し自慢気に頷く。全員自習室で一緒に勉強した面々だ。


「そうか頑張れよ」


「もちろんみんな浩二君達と同じ特進クラスに入るのが最初の目標だからね」


「次の目標は?」


「次は特進コースを外されない事かな?」


「何だそりゃ?」


ガクッと転びそうな仕草をする佑樹。

にっこり笑いながら祐一は続ける。


「もちろん更に将来の目標はまだはっきりと決まってないけど、

まずは特進コースで中学校生活を続けて高校も仁政の特進コースで、

最終はやっぱり一流大学に一流の会社員だろうな」


祐一の言葉に他のメンバー達も頷く。

(一流大学か、前回の時は一浪の末に地方の公立大学に滑り込みだったからピンと来ないな。

就職もバブル崩壊にぶつかったから大苦戦だったし。今回もバブルってあるのかな?)


「浩二君」


由香の声に考え事に夢中になっていた事に気がつく。


「何、由香?」


「どうしたの急にボーとして」


「いや何でもないよ、祐一頑張れよ!」


「うんもちろん!試験は春休みだから結果が出たらまた連絡するね!」


(将来の目標か)


「どうしたの、またさっきの考え事?」


「まあね」


「将来の事より今日の昼飯だ、和歌行こうぜ!」


「そうね腹が減ってはなんとやらね!」


2人に引っ張られるように学校を後にする。

もちろん行き先はいつもの喫茶店だ。


「マスターこんちは」


「こら佑樹!ちゃんとこんにちはでしょ」


「こんにちはマスター」


「おじゃまします」


先頭の佑樹達に続いて俺達も店に入る。

メニューを見ずに早速料理を注文をする。

暖かいおしぼりで顔を拭く男2人。

因みに佑樹と花谷さんはヒレとロースのそれぞれカツ定食(もちろん大盛ライスで)、俺はビーフカレー、由香はカルボナーラだ。

出てきた料理を堪能して飲み物をオーダーする。


飲み物が運ばれてきて俺はふと先程の話を由香にする。


「由香、将来の目標ってある?」


「え、目標?」


「うん」


「そうね、目標か...」

 

紅茶のカップを両手に持ちながら考える。

しばらくしてから


「やっぱりさっきの祐ちゃんと同じね、まずは大学かな?」


「佑樹は?」


「俺はぶれないぜ世界一のサッカー選手だ。

和歌は?」


「難しいわね、日本一の女性剣士って言っても、それじゃ将来の仕事には繋がらないし。

大学に行ってから決めるわ」


「和歌、大学に行くのか?」


「まだ具体的に決めてないけどね。

クラブも頑張れば推薦受けれるだろうし

大学に行けば将来の可能性も広がるでしょ?」


みんなも漠然とした感じだな、佑樹のように行かないもんだな。


「浩二君は?」


「そうだよ浩二は将来何になるんだ?」


「僕か...」


俺は何を目標にしたら良いのか考えてみる。

やり直しのこの人生、兄貴の為に動いて来た

しかし気がつくと俺も随分前回と違う所が出てきたな。

こうして素敵な仲間達に囲まれているし。

なんと言っても由香がいる。


「駄目だ決まんないや」


「何だよ、でも俺は浩二は小学校の先生が良いと思うぜ」


「あ、それ良いと思う」


「浩二君が先生なら子供達も幸せよね」


(先生か、あんまり考えた事もなかったな)


「でもよ笑顔になる度に子供達が気を失うぜ」


「それまずいわね」


「大丈夫よ子供達も浩二君の笑顔にすぐ慣れるわよ」


みんな口々に言う、何か先生になるのが決まったみたいだ。

 

「あ、でも問題があるわね」


「問題?」


「授業参観の時に」


「そうだ、浩二の笑顔で見慣れてない保護者倒れちまうな」


「大丈夫だよ」


「どうして浩二君?」


「その時は目出し帽被って授業するから」


「何だよそれ!」


一緒に笑いながら今回のこの人生に今更ながら幸せを感じるのだった。



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