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7歳の誕生日おめでとう。後編


誕生日パーティーは12時30分から始まる。

みんな昼食を食べてから家に集まっての開催なのだ。

やきもきしている俺と対照的に兄貴は呑気に昼飯を食っている。


兄貴は鈍感だ。

好意を寄せている男の子の誕生日パーティー、誘われたら楽しみにしない女の子はいないだろう。

 

そこへ行くと現れる知らない女の子達。

例えその女子達が兄貴に好意が無くても、自分達の知らないそろばん教室の話なんかされたら嫉妬するよ、ヤキモチ妬くよ、間違いなく。


兄貴は先日の運動会で玉入れ作戦を立てて、見事に勝利した。

たったそれだけの事で、兄貴のクラス内好感度が更に上がったそうだ。


元々勉強が出来て人当たりの良い兄貴は注目されていた。

そんな兄貴がクラスを引っ張り指示を出す。

こりゃ更に好感度も上がりますな。


最近は兄貴の周りに今まで接点が無かった別のクラスの女子が来るようになって、順子ねぇちゃん、優子ねぇちゃん、杏子ねぇちゃん達のイライラが大変だ、って薬師兄ちゃんが教えてくれた。


「ごちそうさま」


兄貴が食べ終わった食器をシンクに浸ける。

時計を見ると12時25分、もうすぐみんなが来る。

兄貴は外に出て玄関前に立った。

みんなをお迎えをするつもりだろう。


10分もしないうちに小学生の一団が現れた。


「こんちは!」


「うっす」


「今日はお招き頂きありがとうございます」


「おじゃまします」


「よ、浩ちゃん今日も可愛いね」


口々に挨拶しながらいつもの固定メンバー達に加えて招待した兄貴のクラスメート10人が現れた。

どうやら事前にみんな公園で集合してから家に来たようだ。


「いらっしゃいみんな、まだ来てない子がいるから。浩、みんなをリビングに案内してくれる?」


「え、みんな集まってると思うけど...」


兄貴の言葉に順子ねぇちゃんが少し不安気に聞いた。


「あ、そうそう言って無かったね。

そろばん教室の友達も来るんだ、大丈夫みんな話しやすい女の子達だからすぐに打ち解けられると思うよ」


あちゃー言っちゃたよ。

このミスター鈍感キングブラザー。

仕方ないから俺が兄貴の友人達の前に行く。


「さあみんな上がって、

今日は兄ちゃんの誕生日パーティー僕もすっごく楽しみにしてたんだ!

こんなに沢山のお友達と遊べるなんて嬉しい!」


そう言って俺は無邪気にはしゃぎ回った。


「そうだな今日は楽しくボードゲーム大会だ」


「今日こそ人生ゲームで大金持ちでフィニッシュだ!」


女の子達の強張った空気を読んだ薬師兄ちゃんと富三兄ちゃんも俺に合わせてくれた。


みんなをリビングに案内する。

家のリビングはとても広く20畳はある。

普段置いてあるソファーやテーブルは兄弟の部屋に移動しているから今は広々と使える。

みんな絨毯の上に座り思い思いの姿勢で主役を待っていた。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


そこに母さんがジュースと紙コップを持って来てくれた。


お菓子は最初から大きなお盆に盛りつけられ4枚用意してある。

ポッキーやホワイトロリータ等の定番お菓子が山の様に盛られてあり子供達の興奮度もはね上がる。


兄スキー女の子三人衆も山盛りのお菓子を前に興奮してるみたいだ。

40年以上前は今みたいな美味しいスイーツなんか無かった。

あったとしても下町に住む我々の口に入る事が殆ど無かったからこの状況は良く解る。


「お待たせ」


そこに兄貴が入って来た。

せっかく解れた空気がまた入れ替わる。

兄貴の後ろに大きな女の子の影3つと兄貴の隣に同じ位の影1とつ。


キッと兄貴の後ろにいる女の子達を睨む順子ねぇちゃんと優子ねぇちゃん、だが次の瞬間


「あれっ順ちゃん?」


「えっ美樹姉ちゃん!?」


何と順子ねぇちゃんと美樹姉さんこと、高山美樹さんは従姉妹同士でした。


「なんだ、そろばん教室の友達って美樹姉ちゃん達の事で、同じクラスの只の友達なだけなんだ」


「良く解らないけどそういう事よ。

山添君は凄いの、もう小3の私達より間違いが少ない位だから」


「「そうそう」」


大きな女の子が頷いた。


「...有は凄い、私と張り合える同じ1年生は他にいなかった」


「あれこの子は?」


2人の後にいた小さな女の子に気づいた。

保育園の年中ぐらいかな?


「お前失礼、私はこの子じゃない。

私は坂倉唯だ。解ったか山添浩二」


「あ、ハイ」


俺の目をしっかり見つめながら話す坂倉さん。

ハキハキ喋る様子は小1と思えない。

見た目は本当に小さいけど。


「こら唯、ゴメンね唯は小柄でしょ。

だから年下で唯より身体の大きい浩二君に絡んじゃったのよね?」


「あ、そうなんですか」


よしよしと坂倉さんをあやす美樹ねえさん。

年の離れた姉妹か、親子みたいだ。


「私は小柄だけど頭の回転は負けない。

そして有も凄い、賢い。だから私は有が好き」


『うぇ、今何と仰りました?』

わっ、この空気!窒息する!

真っ赤な顔で言い切った感を出してる坂倉さん。

『兄貴、なんちゅう娘を連れて来たんや?

この娘は違う日に連れて来てえな!』

俺は心中で何故か変な関西弁で叫んでいた。


「ありがとう坂倉さん、

僕以上に賢くて凄い人は一杯いるよ。

だから僕は唯ちゃんの相手にまだまだなんだね」


「いや違、そうじゃな...」


残念坂倉さん。

家の兄貴にゃストレートに言っても、凝った言い方しても、なかなか伝わらんのだよ。


後ろで順子ねぇちゃんと優子ねぇちゃんも頷いてる。

杏子ねぇちゃんは、見てないか、視線はお菓子に釘付けだね。


その後みんなが持って来たプレゼントを兄貴に贈呈したり、順子ねぇちゃんはクッキーを焼いて来たので、みんなで食べたりしました。


ゲーム?


やっぱりボードゲームが一番盛り上がりました、そりゃそうか。

 

帰り際に順子ねぇちゃんが兄貴にクッキーの入った紙袋を渡してた。


「上手く焼けた分だけ別にして持って来たの。後で食べてね」


ナイス順子ねぇちゃん!


その夜の家族の誕生日パーティー、


「「「「「有ちゃんおめでとう‼」」」」」


「ありがとう」


テーブルには沢山のご馳走が並び、真ん中にバースデーケーキが置かれ、その前には主役の兄貴が満面の笑顔で座っている。


「さあ、ご馳走が冷めないうちに食べましょ」


「おや?これ何だい? 甘いおかき?」


ご馳走の乗っている皿の中にクッキーの入った皿が一枚置かれていた。


「ばあちゃん、それはクッキーだよ」


「そうかいクッキーかい、少し硬いけど美味しいね。

変わった形だね、桃かい?」


「なんだろう?浩、解る?」


「兄ちゃん特別なクッキーだったのに、良かったの?」


「え、だって『特別上手く焼けたから後で食べてね』って。

なんか僕間違えた?で、浩この形解る?」


あー順子ねぇちゃん、『後で一人で食べてね』って言わなきゃ‼


「ハートだよハート!」


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