決戦!
来週の日曜日にに備えて準備を始める。
まずは3日後の学校の帰りに川井さんの家がある駅で降りて近くの警察署にみんなで行った。
「え、何?別れたお父さんが来る、復縁?
あー警察は民事不介入なの、分かる?今までにお父さんが何かしたの?
何かしたら何でもしてあげるよ、
まだ何もしてないでしょ?はいそう言う事だからね」
警察署で全く聞いてもらえなかった。
「何あれ?馬鹿にして!おじいちゃんに言いつけてやる!」
おじいさんが警察に剣道を教えに行ってる花谷さんは先程からカンカンに怒っている。
「落ち着いて和歌ちゃん」
「気持ちは分かるぜ 俺も怒りでどうにかなりそうだ」
「警察は事なかれ主義だからね。でも言質は取れたよ。」
「言質?」
「ああ何かしたら何でもするって言ったよね」
「確かにあの警官 言ったな」
「浩二君、何かされたら駄目なんでしょ?」
「確かにそうだよ。次は何かされようとしても 何の被害も出ないように準備をしよう」
「準備を?」
「祐一にも助力願おう」
「祐ちゃんに?」
「そうだよ」
翌日の学食で祐一に話をする。
「そうか川井さん そんな事に...」
「祐一頼めるか?」
しばらく考え込む祐一。
「僕が手を出したら問題になるから決して手は出さない、川井さん達を守る事に徹するよ」
「ありがとう」
「でもよ、祐一がもし街角で喧嘩になったらどうするんだ?」
「逃げるね」
「手は?」
「出さない」
「でも追いつかれたら?」
「一瞬反撃して相手が怯んだ隙にまた逃げる」
「大変よね」
「そんなもんさ。護身術として使えば有効だよ」
これで不測の事態を防ぐ事が出来るかは分からないが布石にはなるだろう。
その後いつもの自習室で自習した後川井さんと青木君を呼び止め学校近くのドーナッツ店で改めて祐一を引き合わせた。
「改めて宜しく清水祐一です」
「こちらこそ宜しく青木孝だ」
「川井瑠璃子よ宜しく」
「清水君は自習室で一緒にいるだけだか、改めて見たら本当に小柄な可愛い女の子に見えるな」
(青木、可愛いはいらんだろ)
「清水君の事は自習室で見るだけでなく学校で評判よ、校則を曲げた子って」
「祐ちゃんで良いよ瑠璃ちゃん」
「祐一、いきなり瑠璃ちゃんはまずいだろ」
「由香ちゃん」
「ええ瑠璃ちゃん」
「浩二どうゆう事だ?」
「さあ?」
「分かったわ祐ちゃんは祐ちゃんなのね」
「またこれか!」
「浩二?」
「孝すまない僕にも分からん」
その後当日の打ち合わせをする。
川井さんの自宅で日曜日の午後3時からである事。
話合いはもちろん川井さんのお母さんと瑠璃子さん そして安道の3人である事。
俺達は不測の事態に備えて部屋の外で待機する事
予め俺達は朝から最後の打ち合わせを行う事等である。
「ありがとう浩二君 由香ちゃん 祐ちゃん」
「瑠璃子も最近余り休めてないだろ?今日も送るよ。 祐一君、今日はありがとう」
「それじゃ僕達も帰ろう」
「うん」
駅で祐一と分かれる。
その後俺達の降りる駅で川井さん達と分かれて
家に帰った。
そして日曜日が来た。
「おはようございます」
「おはよう。みんな今日はお願いね」
川井さんのお母さんは疲れた顔をしていた。
たぶん余り寝てないのだろう。
「よし!由香まずはリビングの準備だ」
「うん」
「佑樹、私達は待機する場所の確保よ」
「おう!」
「瑠璃ちゃん僕はリビングの中で隠れて
すぐ飛び出して行けるスペースを教えて」
「凄いわ孝君、瑠璃ちゃんのお友達」
「ええ、おばさん。みんな瑠璃が心配で集まってくれた本当の仲間達です。
そしてその仲間を束ねるのが山添浩二君です」
「本当に不思議な子よね。浩二君の笑顔を見ると勇気も湧いてくるの。」
「僕もです」
みんな準備を終えて昼食をとる。川井さんのお母さん自慢のハンバーガーだ。
「さあ食べてね」
「デカっ!」
「私こんな大きなハンバーガー初めて!」
「玉ねぎが大胆にカットされているぞ?」
「美味しい!」
「本当だ!駅前のハンバーガー屋に行けなくなっちまう」
「美味しい浩二君?」
「ああ凄く美味しいよ。手作りだよね?ハンバーグのパテもだけど、このバンズも?」
「それもお母さんの手作り、昔お母さんがアメリカに留学していた時ホストファミリーから教えて貰ったお母さん自慢の料理なの」
「あー美味しかった。由香食べきれないなら言ってね手伝ってあげるから」
「おあいにく様 食べきれますよ」
「ちぇ!祐ちゃん」
「大丈夫、調度満腹の大きさだよ!」
「和歌諦めろ!」
「うー」
「花谷さんは気持ちいい食べ方するわねまだバンズとパテはあるからもう1つ焼いちゃおっか?」
「やった!」
「おばさん俺も!」
結局3つのハンバーガーを食べた佑樹と花谷さん。その後素振りを始める花谷さんと近所を走り回る佑樹だった。
時刻は2時45分。
「みんな準備を」
「了解」
全員指定の位置に着く。そして3時になった。
俺と由香はリビングの隣の部屋に身を隠し、
佑樹と花谷さんも反対の部屋に同じように身を隠す。
指定の時間をやや遅れ3時15分に奴(安道)は
やって来た。前回俺が奴を見たのはこの後20年近く経ってからだ、成る程当たり前だが若いな、髪も黒いし余り皺もない。
一言で言えば頼れる大人な男性、しかも男前。
顔を見たらもっと感情が昂るかと思ったが以外に冷静だと自分で思う。
安道は玄関に青木君がいた事に眉をひそめる。
「孝君、悪いが家族の事だ帰ってくれ」
「私がいてくださいと頼んだの...お父さん」
顔をしかめながら川井さんが<お父さん>と口にする。
これは打ち合わせしたのだ、
なるべく安道の感情を逆撫でしないで家を引き上げてもらうために。
青木君は今日、絶対立ち会うと聞かなかった、だから川井さん母娘が感情的にならぬようにお目付け役での同席となった。
「そう言う訳です」
「ふん、ガキが偉そうに...」
押し退けるように玄関を上がりリビングのソファに腰を降ろす。
離婚して今は他人の家なのに、我が物顔の態度に腹が立つ。
「おい久し振りに来たんだコーヒーぐらい淹れたらどうなんだ?」
尊大な態度に怒りが溢れそうだ!
こいつ謝りに来たのか?怒らしにに来たのか?
やがて川井さんのお母さんがコーヒーを持ってやって来る。
「ふん、相変わらず美味いな。あいつはどれだけ教えても上手く淹れなかったからな」
「あいつ?」
川井さんのお母さんが聞く。
「あの女だよ。俺を騙したクソ女だ」
うわ!こいつ復縁の話しに来て浮気相手の話をするなんて!
見下した態度にリビングの空気が変わるのが隣の部屋まで伝わって来る。
「俺の為に昔と変わらずコーヒーを淹れてくれたぐらいだ、またやり直せるだろ?」
「分かりました」
「お母さん?」
「おばさん?」
「やっぱりあなたは変わらないのね、もう戻りません。帰って下さい、帰って!」
「何?」
「あなたが出ていって私達母娘は必死に頑張って来ました。瑠璃子も落ち込む私を励まし孝君も瑠璃子を支えてくれました。
そして瑠璃子にも素晴らしいお友達も出来て私もやっと元気になったの。
もうあなたは必要ありません!」
「純子!貴様!」
立ち上がり川井さんのお母さんの胸ぐらを掴む安道。
「止めて!」
安道の腕を掴む瑠璃子。
「離せ!」
腕を上げて瑠璃子を叩こうとしたその時。
「止めろ!」
祐一がリビングの調度品の影から飛び出した。
安道の腕を捻り上げ関節を固める。
「なんだお前は!」
「川井さんの親友だ!大切な人を傷つけるお前は瑠璃ちゃんの父親じゃない!」
祐一の一喝に安道が怯む。
「くそったれめが!!」
祐一を力任せに振りほどこうとするが祐一ががっちり関節をを決めているためほどけない。
俺達も部屋に一斉に入る。
「くそ!なんだお前らは!離せ!」
床に叩きつけられながらなおをも怒鳴り続ける安道。
「僕達も瑠璃子の親友です。話の一部始終は聞きました。
ここにはあなたの居場所はありません。
あなたが捨てたのです」
「ガキに何が分かる?」
「分からないのはあなたです!」
「お母さん」
「祐一君腕を離してあげて。」
祐一は腕を離して後ろに下がる。
しかし何時でも飛び出せるようにしながら。
花谷さんも持参の竹刀を構えて安道を見据える。佑樹も同じく何時でも掴み掛かれるように警戒する。
「私はいつかあなたが昔のような優しい人に戻るのを期待してました。でもそれは私の幻想でした。
あなたは私の話も聞かず瑠璃子を、自分の娘に乱暴までしようとしました。
もう顔も見たくありません、出ていって!」
項垂れ座り込む安道。やがて口を開く。
「分かった。もうお前達の前に二度と顔は出さん」
静かに立ち上がる。
そしてリビングを出ていこうとする。
俺の前を通り過ぎようとしたその時、
「貴様が!!」
いきなり安道が力任せに俺を殴りつけた。
不意の事で誰も反応出来なかった。
もちろん俺も。
顔面に安道の拳がめり込む。
吹き飛ばされながら昔安道はアマチュアボクシングをしていた事をノートに書き忘れていた事を思い出していた。
由香達の悲鳴が聞こえる。
後ろにあった壺に俺は頭をぶつけ意識が薄れ行く中『由香に心配かけてしまった』と詫びながら....
俺は気を失った