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決戦は来週の日曜日

1ヶ月程経った10月のある日曜日。

佑樹達と意気投合した川井さん達と俺達は川井さんの家で遊ぶ事にした。

今日も青木君は川井さんの家で一緒待っててくれていた。


「また今日もお邪魔します」


「待ってたわいらっしゃい!」


「はじめてまして」 


「こちらこそ、瑠璃が言ってた新しいお友達ね」


「「はい宜しくお願いします!」」


「ふふ、元気が良い子達ね」 


その後俺達は持ち寄ったおやつを食べながら俺達の小学校の思い出話や青木君と川井さんの仁政第一小学校時代の話で盛り上がった。

やはり聞き上手な佑樹と花谷さんが居るとこの前聞かなかった新しい話が沢山聞ける。


「さあ今日も美味しいお茶を淹れましょうね。

浩二君はコーヒーよね」


「ありがとうございます」


「あ、おばさん僕もコーヒーで」


「あら珍しい孝君がコーヒーなんて」


「僕も最近コーヒーが好きになってきたみたいです」


「俺、いや僕もコーヒー良いですか?」


「川口君だったよね、良いわよ俺で」


「ありがとうございます。やっぱ俺の方が言いやすいよ。な、和歌?」


「こら佑樹、リラックスし過ぎ!」


「今日も楽しいわね! おばさんも嬉しい!」


川井さんのお母さんは本当に楽しそうにお茶の用意をしに行く。


「孝って特進の委員長なのに全然偉そぶらず気さくな奴だな」


「僕も佑樹って体育会特有の感じが無くて楽しいよ」


「和歌ちゃんもそうよね」


「そうかな佑樹にはがさつだなんだって言われるけどね」


「そんな事ないよね由香」


「そうよ、気配りが出来る和歌ちゃんは1年生からも慕われて学食でもよく声をかけらるんだから」


「全て女生徒だがな」


「佑樹!私が男の子に声をかけられて良いのか!」


「嫌だ!!」


漫才のような2人の掛け合いに笑いが起きる。

その時電話が鳴った。


「あれ?日曜日に珍しいわね」


電話に向かう川井さん。


「はい川井です.....分かりました、母に代わります」


先程までの明るい笑顔が消え失せ引き吊った顔になる。


「ごめんねお母さんに電話だからちょっと」


そう言うと川井さんはキッチンにいる母親を呼びに行く。


電話機はキッチンにもあるらしく向こうで話声が聞こえる。


「何を今更!ふざけないで!」


突然川井さんのお母さんの大声がリビングまで響く。


「な、なんだ?」


良い電話じゃ無いみたいだ。


「きっとあいつだよ」


青木君が暗い声で呟く。


「あいつ?」


「安道だよ。瑠璃子の父親だ」


俺達は黙りこむ。


「この前瑠璃に聞いた、何でも浮気相手に男がいて大喧嘩になって別れ話になったそうだ。

それで今更帰りたいとか言ってるらしい」


俺は由香を見る。由香も目を一杯に開いて俺を見る。


「何だよそれ ふざけんな!」


「そうよ!馬鹿にするのも程があるわ!」


佑樹達が大声で怒りをあらわにする。

しばらくして川井さん親子がお茶を持ってリビングに来た。2人共暗く沈んだ顔だ。


「ごめんなさい、聞こえちゃったよね」

  

「何でも無いのよ、大丈夫だからね。さあ飲んで頂戴」


味なんか分かるはずない。沈黙がリビングを包む。


「おばさん、今の...」


青木君が沈黙を破る。


「うん孝君は昔から知ってるもんね...」


それ以上は川井さんのお母さんは話そうとしない

やはり俺達には聞かれたくないみたいだ。

俺は意を決して口を開く。


「おばさん」


「何かしら浩二君」


「詳しい事は分かりませんが余り良い話では無い事は分かりました。

実は少し青木君に話を聞きました」


「孝君?」


「おばさん青木君を責めないで下さい。

幼稚園から10年近くの付き合いですから本当にこの家の事を心配しているのです。

浮気をして帰って来たいと言ってると聞きましたがそれをどうお考えですか?

瑠璃子、君は今更お父さんを許せるか?」


「許せる訳....許せる訳無い!」


「瑠璃子....」


「お母さん、あいつ何回目だと思うの!

もう嫌だ浮気する度お母さんが傷ついて泣いてるのを見たく無い!

やっと離婚してあいつから離れて私嬉しくてお母さんと2人楽しく暮らせるって、

母さん暗かったけれど最近浩二君達とも会って明るくなったのに何で今更あいつは!

嫌だ、私..嫌だよ...」


お母さんに抱きつき泣きじゃくる川井さん。

リビングに嗚咽が響く。


「お母さん、これが瑠璃子さんの本当の気持ちです。

家族の形は色々あるでしょうが娘をここまで傷つけての家族に意味は有るのでしょうか?

話し合いも無く出て行き、また都合が悪くなって戻って来る。

そしてまた浮気して傷つく、そんな繰り返しを見せられる瑠璃子さんが可愛そうです。

瑠璃子さんを支え壊れないように守り続けた青木君も可愛そうです」


「浩二君...」


「浩二...」


「最後に決めるのはお母さんです」


「あの人......」


川井さんのお母さんがぽつりぽつり話だす。


「テレビによく出る人気医師って、ちやほやされ出して女遊びが派手になってね、

昔は違ったのよ、

子煩悩で実直な素敵な人だったのよ。

いつからあんなになったのかしら」


川井さんのお母さんの目から涙が流れ落ちる。


「そうね、やっと瑠璃子と平穏な日々を手に入れたのに また許したら必ず同じ事の繰り返しになるわ。 来週 来たら断るわ」


「来週?」


「ええ。来週の日曜日にあの人もう一度話がしたいって」


由香が俺を見る。佑樹達にも緊張が走る。


「瑠璃子、お母さん決めたわ。もう迷わない、きっぱり断る」


「本当?」


「ええ、あなたを守るわ」


「ありがとうお母さん!」


ひときわ大きな声で泣き出す川井さんだった。


「浩二君」


「はい」


「あなた以前にこんな体験されたの?」


「いえ」


「そう、何か分からないけどそんな気がしたわ」


俺はどんな顔をしたらいいか分からず困惑するのだった。 


来週の日曜日、俺は未来を変える。

この家の運命を変えてやる。

 


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