7歳の誕生日おめでとう。前編
11月に入り季節は秋から冬になろうとしていた。
11月23日は兄貴7歳の誕生日。
兄貴の誕生日は祝日、勤労感謝の日だ。
我が家の家業であるニット加工業は9月~12月は閑散期で、兄貴の誕生日の夕飯は家族皆でバースデーケーキとご馳走を食べる事が小学生の頃まで習慣だった。
俺?
俺の誕生日は3月3日だよ。
そう雛祭り、女の子の祭りが俺の誕生日。
子供の頃はからかわれた、今回の時間軸でもそうなるのだろう。
俺の事は良いんだ。
そんな事より兄貴の誕生日。
夕飯は家族でお祝いだから、友達を集めての誕生パーティーは当然昼間になる。
休みである11月23日はとても都合が良い。
前回の時間軸でも兄貴の誕生日には沢山の友達が集まっていた。
俺は妬ましさもあり一回も参加しなかったが。
今回は違う。
俺は兄貴の友達と親しくさせてもらっている。
ここでも兄貴の友達を、特に女の子達の恋のアシストをして盛り上げるのだ。
とはいっても小学1年生に何の遊びを提案しよう?
王様ゲームやポッキーゲームは早いし。
考えがまとまらないまま兄貴の誕生日の朝を迎えた。
「有、今日は何人位集まるの?」
母さんが兄貴に聞いた。
「15人位かな、クラスメートが10人位。
後はそろばん教室の友達も4、5人来るって言ってたよ」
「分かった。じゃあジュースと紙コップ、それと簡単なお菓子用意しとくわよ」
母さんの呑気な返事を聞きながら俺は混乱していた。
何、そろばん教室の友達だって?
兄貴は小学校に上がると近所のそろばん教室に通い初めた。
何事もそつなくこなす兄貴はそろばん教室でもたちまち優秀な能力を見せて、昇級試験を次々パスして今6級まで上がっていた。
最終的に3年生の時に1級で学習塾が忙しいから辞めたんだ。
「いつもの子達以外のお友達も来るのね?」
母さんが再度兄貴に尋ねる。
「そろばん塾の友達に同じ学年の子は一人いたかな。後は3、4年生だったよ」
何ですと?
そんな上級生が小1の誕生日会に来るの?
「そろばん塾の友達って、女の子も来るの?」
さすがに聞き逃す事は出来ない。
「うん、そろばん教室から来る子は皆女の子だよ」
なぜそんな事を聞くの?
と言う顔をしながら兄貴は爆弾発言をかました。
「えー!!」
心の声が飛び出してしまった。
「ど、どうしたの浩二」
兄貴の声は俺の耳には届かなくなっていた。