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波乱の予感

俺が目出し帽を被っていた頃兄貴も中学2年に進級した。

新しいクラスは志穂さんと坂倉さんが兄貴と同じクラスになった。 

志穂さんと坂倉さんは例の喫茶店で2人で祝賀会をやったそうだ。

美穂さんは『残念だけど連続で同じクラスはあり得ないと分かっていたから』と淋しく言っていたと兄貴から聞かされた。

順子姉さんと兄貴と美穂さんの3人で残念会を喫茶店で後日開いて兄貴は志穂さんと坂倉さんに不公平だと焼きもちを妬かれたそうだ。 


そんなこんながあり迎えた6月下旬、いよいよ期末テストが来週から始まる。  

2日間の日程で始まる試験は初日が国語 数学 英語 2日目が 理科 社会となっていた。


特進コースの生徒は1年生は殆ど塾に行っていない。と言うより行く時間が無い。

毎日の補習授業に山の様な課題に追われる為だ。

学校から帰りの電車、時刻は既に8時を過ぎていた。

補習授業の後、学校の自習室で由香と2時間勉強したからだ。


「いよいよ来週から期末テストね。浩二君自信は?」

 

「ある、と言いたいけど今日の自習室、周りの気合いが凄かったからどうだろう。由香は?」


「私も同じよ、結構頑張ってるつもりだったけど」


「クラスのみんなも同じ気持ちじゃないかな?」


「そうよね、それにしても良かった、今月から浩二君やっと目出し帽外してもいいようになったもんね」


「助かったよ。あれを被ると暑くて大変なんだ」


そんな会話をしながら電車を降りる。

乗り換えの為駅のアーケードを歩いていた。


「よう、余裕なお2人さん」


「今日は珍しく遅くまで自習していたのね」


後ろから来た4人組の2人に声をかけられる。


「あら北川君達も同じ電車だったの?」  


「俺達はいつもこの時間さ、余裕のある君達と違って崖っぷちなんでね」 


「そうよ私も中間テストは余り振るわなかったからね」


あからさまな敵意、由香が少しひるむ。

余り交流のないクラスメートのグループだし仕方ない。

 

「待ちなさい2人共、ごめんなさい山添君、試験前で少し気が立っているのよ」


「そうだ北川も中西も橋本達に絡んでも成績は上がらんぞ」


「青木君と川井さん?」  


(確か委員長と副委員長だったな)


「橋本、同じクラスメートなのにあまり教室では話す機会がないな。少し時間いいか?」 


「え?」


「余り時間は取らないよ。そこのコーヒースタンドでいいから」


「山添君、私からもお願い」


「どうする由香」


「少しなら良いわよ」


「分かったよ行こうか」


俺達は6人でコーヒースタンドに行く。

当時は珍しかったコーヒースタンドだかターミナルの駅であるここにはもう存在していた。


俺はアメリカンを頼み、由香はミルクティーを頼む。


「それで話って?」  


「山添、お前特進を舐めてないか?」


「舐める?」


「だって山添君この前まで変な被り物してたし...」


「中西さん浩二君も被りたくて被ってた訳じゃなかったのよ」


「分かっているわ。でも私にはふざけているとしか見えなかった」


「ふざけてる?」


「だってそうでしょ?みんなピリピリしているのに1人、目出し帽してるのよ」


こいつは困った、俺も笑顔がこんな事になるとは思わなかったし。

でも緊張した教室に目出し帽の男、ふざけてると思われても仕方ないか。


「だいたい入学式からあなたがにやにや笑いながら周りを見るからいけないのよ!」


「中西さん、浩二君に言い過ぎよ!」


「由香」


「いいの言わせて、確かに浩二君を見た人の中には気を失っちゃう人もいる。

けど誰も浩二君に文句なんて言ってないよ」


「それはまた気を失うのが怖いから...」


「違う!みんな幸せな気持ちになったからだよ」


「幸せな気持ち?」


「ええ、私も浩二君に見つめられると今でも気を失っちゃいそうな時がある、でも気を失っちゃうくらい幸せって事なんだよ。だから浩二君と一緒にいたら勉強だって運動だって凄く頑張れるのよ」


(由香恥ずかしいよ)


「バカらしい山添君の顔見て頑張れる?そんな事ある訳ないわ」


「俺と中西は中間テスト以来崖っぷちだ。お前のせいかもしれない」


「僕の?」


「そうだ、俺達は仁政小学から中学と内部進学組だ常に小学校時代は成績優秀だったから特進に進めた」


「ほう」 


「ところが中学に上がると俺と中西の成績はガタガタだ!」


「ちょっと待て!何で成績不振が僕のせいなんだ?」


「だからさっきから言ってるだろう山添が俺達のリズムを狂わせたんだ!」


「八つ当たりだな、話にならん。由香帰ろう。

悪いな青木、川井さん後宜しく」


「待て。話はまだ終わってないぞ!」


俺の肩を掴む北川。


「僕達は話を聞くのは終わりだから」


「じゃ最後に言うね山添君あなた自分から特進コースを辞めなさい」


「へ?」


「中西さん...」


「もちろん橋本さんはどうでも良いわよ特進に残るも良し山添君についてどこでも行けば良いわよ」


「おい中西、今日は山添に文句だって、橋本は関係ないだろ!」


「だって青木君、この二人いつも教室でもベタベタして気に障るのよ」


「校則にもあるだろ[不純異性交友を禁ず]って」


「北川君!私達はまだ何にもしてません!」


(由香止めて!)


「へぇ、まだ浩二君となんにもなんだ?」


(何でそこが気になるの川井さん)


「話が逸れたな、分かった済まなかった今日はこれで終わるよ」


俺達は4人と別れて再び家路に向かう。

時刻は9時になろうとしていた。

先程それぞれの家には電話をしたので叱られる事はない。

駅に由香の母さんが車で迎えに来てくれるそうだ。


「なんか疲れたね。どうしたの浩二君?」


「どうもさっきのやり取りに違和感がね」


「私も感じた」


「やっぱり由香も?」


「うん、怒ってたのは北川君に中西さんだけど誘導してるのは」


「青木君と川井さんだ」


「浩二君もそう思う?」


「面倒くさい事にならなきゃいいが」


「本当。」


取り敢えずあの4人との接触は避けよう

そう由香と話し合うのだった。


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