運動会だぜ兄貴!!後編
「大活躍だな有!」
「凄く足速いじゃない!」
「玉入れ頑張ってたね、有ちゃんのクラスが一番沢山入ってたねぇ」
父さん、そして母さんやばあちゃんから一杯の称賛の声を貰い、じいちゃんはワシワシと兄貴の頭を撫でている。
本気で照れた笑顔の兄貴。
我が兄は最高に可愛いらしい。
「うん、兄ちゃんはやっぱり僕の自慢の兄ちゃんだ!」
おにぎりを食べる兄貴に声を掛ける。
「ありがとう浩、でもクラス全体の中じゃ僕より足の速い子は一杯いるよ。
走った組の中じゃ僕が一番だった、それだけだよ」
そう言って笑う、相変わらず謙虚な兄貴だ。
「それでも凄いよ。
兄ちゃんは玉入れでも玉を集める係、玉を投げる係って、ちゃんと指示していたし」
「そんな事していたの?」
母さんが驚いた顔で兄貴を見た。
「浩、良く見ていたね。
玉入れは背が高い子が有利で、僕みたいに低いと余り役に立たない。
たがら同じ様に背が小さいクラスの仲間も楽しく出来たら良いなって、みんなで考えたんだ」
いやいや兄貴が中心にになって考えたんでしょ、普通の小1が考えつきませんよ。
「山添さん」
後ろから声が掛かる。
振り返ると母さんと同じ位の年齢の女性と、その横には見覚えのある女の子。
「あら、十河さん」
そうだ十河順子、順子ねぇちゃんだ、
「これ私の田舎から送って来た葡萄だけど、良かったら皆さんで食べて下さい」
「え、こんな高級な物を?」
「いえいえ、いつも順子が山添さんにお世話になり良くお礼も出来ないままでしたから」
「そんな順子ちゃんの方こそ、有の相手をしてもらっているんじゃ...」
いかん、母親同士の話は長くなりそうだ。
「ありがとう順子ちゃんママ、僕葡萄大好き。順子ねぇちゃん、一緒に食べようよ」
満面の笑顔で順子ねぇちゃんの手を取り兄貴の横に座らせる。
「え、いいの?」
いつも仲良しメンバーの中で一番しっかりしてる順子ねぇちゃんが俺の家族に囲まれて恐縮している。
横に兄貴がいるからか?
顔が少し赤いぜ、順子ねぇちゃん。
「この葡萄、凄く美味しいね!ありがとう順ちゃん」
おい兄貴、いくら葡萄が美味しいからって夢中で食べ過ぎだよ。
順子ねぇちゃんの顔くらい見てやれよ。
「有くん...」
頬を赤く染め、兄貴の名を呟く順子ねぇちゃんを見て、早く兄貴に気づかせたいと思う俺だった。