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橋渡しでも何でもします。兄貴に幸せを!

初投稿です。


 


 いつもの朝が来た。

 しかし目覚めたら目の前にいたのは小さな子供の頃の兄貴の顔。


 (ちょっと待て兄貴は今年50になるオッサンのはず?)


 驚き飛び起きた俺も自分の体の変化に気づく。


 (あれ、俺も小さくなってる?)


 俺も49歳の中年オヤジのはずだぞ?

 パニック状態のまま辺りを見渡す。何処かで見た部屋の光景。


 (そうだ、ここは8歳まで住んでいた実家だ!)


 慌てて部屋を飛び出してうろ覚えの記憶を頼りに洗面所に着くと鏡に自分の顔を写してみる。


「何じゃこりゃ?」


 其処に写っていたのは紛れもない俺の顔、それも保育園に通っていた頃のあどけない顔だった。


「おや、浩二今日は随分早起きじゃな?」


 不意に掛けられた声に後ろを振り返ると、そこにいたのは30年前に亡くなったじいちゃんだった。


「じ、じいちゃん...」


 俺はじいちゃんが大好きだった。

 大きな体、優しげな顔。

 気づくと俺はじいちゃんの体に飛び付いて泣きじゃくっていた。


「ど、どうしたんじゃ浩二、怖い夢でも見たのかの?」


 戸惑いながらじいちゃんは優しく俺の頭を撫でる。


「ち、ち、違うよ!違うよ、じいちゃん...じいちゃん!」


 一(しき)り泣いて少し落ち着きを取り戻すと、祖父の後ろには不安気に俺の様子を伺うばあちゃんが立っていた。


「ば、ばあちゃん」


 仕事が忙しい両親の代わりに俺たち兄弟を育ててくれた祖父母がそこに揃って並んでいた。

 結局俺は泣きつかれて眠るまで泣きじゃくるのだった。


 どの位時間が経ったのか気づくと俺は優しくばあちゃんに頭を撫でられていた。


「気がついた?浩ちゃん」


 優しく微笑むばあちゃんの顔、ここはじいちゃんとばあちゃんの部屋のようだ。


「ありがとうばあちゃん、もう大丈夫だよ」


 にっこりとばあちゃんに笑顔を向け、兄弟の部屋に戻って来た。

 部屋には兄貴は居らず、布団は畳まれていた。


 (先ずは現状把握だな)


 壁に掛かっている日捲りカレンダーを見る。


 1975年6月9日の月曜日。

 成る程、俺は44年前に戻った訳か。


 つまり俺は5歳で兄貴は6歳。


 前回の時間軸で俺達兄弟はそれぞれ結婚していて、兄貴には子供もいた。

 前の時間軸に未練は無いかと言われれば、無いとは言えない。


 しかしなってしまったものは仕方がない。

 今回の時間軸の中でまた嫁に会えたら良いのだ。

 (また結婚できるか分からないが)


 しかし兄貴は今回の時間軸では絶対に新しい出会いをしなくてはいけない!


 昔から兄貴は頭が良く、顔も悪くなかったから良くモテていた。

 しかし鈍感な兄貴はその寄せられる恋心に気づく事も無く、想いを寄せる女子達から何故か弟の俺に橋渡しをお願いされる事が多かった。


 当然俺は面白く無い。

 そんなお願いに俺は冷淡になってしまい、


『無理です』


『兄に直接言って下さい』 


『何故僕が手伝わなけれならないのですか?』 

 全て断ってしまった。


 結局兄貴は恋愛経験も碌に無いまま結婚したのだが、


 ...兄貴の結婚は悲惨の一言だった。


 

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