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第1章[表]・棚から牡丹餅(?)



無事(???)にクラス分けテストの3日目を乗り越えたその日の夜

勇斗はただ1人自室のベッドの上にて考え事をしていた


(結局今日のあれはなんだったんだろう?話を聞こうにも指導員は何も教えてくれなかったし、他に聞けそうな人もいなかったし。一応儀式は失敗ではないということだけは教えてもらえたけど多分僕のパターンは普通じゃないはず、特別な例かもしれない。……ということはもしかしたら結構ヤバいパターンかも!?)

今日起きたことについてだんだんネガティブな方向へと考えをつっぱしらせる勇斗

事実あのあと指導員を起こした勇斗がすぐさま右手を見せて確認してみたところ


「こ、これはまさか…!」


「これは例のあれでは!?」

という指導員の反応を見て事情を詳しく説明してもらえるように頼んだところ普通に無視され、かわりに勇斗へ告げられたのはたったの一言


「君の儀式は終わりだ、自由に帰宅してもらってもかまわない。あと君の精霊契約は失敗していないということだけ伝えておこう」

そう言うとすぐさま扉を開けてどこかへ行ってしまった指導員の2人

勇斗のあとにもまだ生徒は残っていたはずなのだがこの場を離れても大丈夫なのだろうか

そんなことを思いながら勇斗は悶々とした気持ちのまま帰宅して今に至るというわけである


そんなわけで結局どう考えても何一つ分からないことが分かったので横になりながら自分の右手に刻まれた紋様を眺める勇斗

一応炎を象っているように見えたりするがこれについてもさっぱり分からない

ただ結構かっこいいなと思っていたりする


「あーあ、誰か教えてくれないかなぁ色々と」

そんな誰に言うでもなく呟く勇斗

だがそんな勇斗の呟きにたいして予想だにしない何者かからの返答が返ってきた


『そんなに知りたければ教えてやってもいいぞ?さっきから辛気臭くて鬱陶しい』

どこからともなく聞こえてくる声

だが勇斗はこの声の主についてはすぐに分かった


「アグニスっ!?いったいどこから??」

慌てて身体を起こして部屋を見渡すがどこにも儀式の時のような炎は見当たらない


『ここだよ、ここ。小僧の利き手の方を見てみな』

アグニスにそう言われて右手の甲を見る勇斗

するとどうだろうか

今までただの白いタトゥーみたいであった紋様が紅く光っているではないか


『この印は俺様と小僧の契約が成立している証。これがある限りお前はいつでも俺様と意思疎通をはかることができるっわけだ。もし右手が無くなってもどこか別の身体の一部にこの紋様が浮かび上がるはずだ。まぁ契約が切れる時は小僧が死ぬ時か小僧の精神が壊れた時くらいだけどな、ワッハッハ』

そう笑いながらアグニスは言うが勇斗からすれば契約が切れる状況というのは笑い事ではない

死活問題である


「そ、そうならないように気をつけるよ。あと僕は小僧じゃなくて勇斗だ」

小僧呼ばわりは納得いかないのかそう抗議する勇斗

だがそんな勇斗にアグニスはこう返す


『俺様に名前を呼んで欲しければそれなりに力をつけることだな。俺が小僧の実力がそれ相応になるまではお前の名前は呼ばん』

とのことだ

つまり認めたければ力を示せということだろう


「分かった、アグニスに認められるように頑張るよ。……それで話は変わるけどさっき言ってたことや僕が知りたいこと教えてくれるの?」


『俺様が答えられる範囲ならな。それよりも先に俺様の問いに答えろ。小僧は精霊という存在を今までに知っていたのか?』

そう問われ即答する勇斗


「いや、知らなかった。今日初めて知ったよ」

そんな勇斗の答えを聞いたアグニスは少し黙り込む


((この小僧は精霊の存在について何も知らない。ということは小僧は最近噂に聞いていたレアスではない別世界の住人ということか。そう考えると本当によくこの小僧は俺を呼び出せたな、ただでさえ俺との契約するのは至難の業だというのに。これもこの小僧が持つ運気故か。……それに俺って多分初めてかもな、別世界の住人に呼び出された最上位精霊としては))

勇斗の答えからこの状況、もとい今自身が契約している勇斗がアグニスの知る世界・レアスの住人では無いことを把握、そしてその事実からか勇斗に対して少し感心するアグニス


『よし、ある程度の想定はできた。つまり小僧は今までに精霊のことについて何一つ知らないってことでいいんだな?』


「うん、それで間違いないよ」


『ならまずそこから説明してやる、俺様に感謝しろよ。まず精霊っていうのはだな…………』

勇斗を少し気に入ったからか饒舌に説明をはじめたアグニスとそれに聞き入る勇斗

勇斗からしてみればアグニスの話す内容は全てが未知

性根が真面目な勇斗はアグニスの話す内容を一言一句聞き逃すまいと真剣に話を聞いており、それがまた気に入ったのかアグニスはレアスでも一般人ならば余り知りえていない情報までも話はじめる

俺様キャラのわりには以外とアグニスは良い奴そうだ



そうして説明すること数十分


『これでだいたいの説明は終わりだ。詳しくは小僧の通う学校とやらの教師、それかレアス側の人間が詳しく教えてくれるはずだ』


「ありがとうアグニス。…それで結局のところアグニスは精霊の中でもかなり凄い存在ってことでいいんだよね?」


『その通り!俺様は数少ない最上位精霊、そんじょそこらの精霊なんかとは格が違う。そもそも名前持ちの精霊自体が珍しいからな!この俺様と契約出来たことを誇りに思うんだな!ワッハッハ』

そう言って笑う上機嫌なアグニス

勇斗が熱心に話を聞いてくれていたことと、勇斗が心からアグニスを尊敬しはじめていることが分かっているために機嫌が良い

ちなみに何故アグニスが勇斗がアグニスに向ける感情を理解出来ているのかというと、それは精霊契約の副産物みたいなもんである

精霊契約とは魔精力を介して精霊と契約を結ぶ儀式

そして魔精力は精神力と関係性があり、精神の状態によって魔精力の強さも量も多少変動する

よって人間と契約をした精霊は一部ではあるが契約者の感情を汲み取れるのだ

なので先程まで考え事をしてネガティブな発想を繰り返していた勇斗の感情も伝わってきていたりする

そのせいで最初アグニスは機嫌が少し悪かったわけだ


もちろん勇斗はこの情報もアグニスから教えて貰っている

そして勇斗が今日アグニスに教えてもらったことを軽くまとめると以下の通り

・精霊の存在の説明

・精霊の階位

・精霊の属性

・精霊契約の詳細

・アグニスの自慢話

といった感じで勇斗が抱いていた疑問点はほぼ解消することができた


「とりあえず知りたいことは知れたと思う。でも僕はアグニスが教えてくれたからスッキリしたけど他の人はまだ不安な状態のままだったりするのかな」

勇斗がそう言うのも理由がある

まず儀式を終えたあとに優奈と夏菜に連絡をとって今日の内容がどんなんだったか訪ねてみたところ


「別に?なんかよくわからない事やらされてすぐに終わったわ。あっ、でも儀式の時になんか変な感覚はしたわ」


「今日のはよく分かんなかった。ただ手をかざして一瞬光ったと思ったらすぐに終わってたよー」

そう2人に言われており、どちらも儀式の出来の善し悪しが分かっていなかったために不安を抱いていたりするのではないかと思っている

もちろんそれ以外の生徒も同様でほぼ全員が全員、よく分からない状態で1日を過ごしているはずだ

勇斗は運良くアグニスという人間と会話をすることが可能な精霊と契約出来たがために事情を知れたのだ


だがここで勇斗の頭の中に1つ疑問が浮かび上がる


「あれ?もしかしてアグニスみたいな会話できる精霊と契約した人も結構いたりするの?」

そうアグニスに質問する勇斗

だがそんな勇斗の質問をアグニスはフッと鼻で笑うと


『俺様みたいな契約者と会話することができる階位の精霊と契約した奴が結構いるわけないだろうが。基本的に契約者と会話・顕現することが出来るのは王位と最上位、それに加えて上位の中でもかなりの実力を持つ奴だけだ。だから大抵の奴は下位か中位の精霊と契約してるはずだ。レアスですらそうだったからな、こちらの世界ならなおさらだろう』

つまりアグニスが言っていることが本当ならば勇斗は儀式において大成功ともいえる結果を残したことになる


「つまり僕の儀式は大成功ってこと?」


『当たり前だ!なんたってこの俺様と契約出来たのだからな!俺様以上の精霊と契約出来ているやつなんて小僧の世界にはまだ居ないだろうよ』

勇斗の問いに誇らしげに答えるアグニス

姿は見えないが声だけで十分に胸を張っている様子が想像出来る


(じゃあ成績的はかなりいいってことだ!やった、これなら1番上のクラスにいける!)

勇斗が契約した精霊は最上位

つまり上から2番目の強さを持つ精霊と契約できたわけだが、アグニスの話からも一般人はほぼ絶対的に王位との契約は不可であることを聞いているために実質1番良い成果を勇斗は残している

つまりクラス分けテストにおいて優位にたてたわけだ


そんな事実に喜びを隠せない勇斗にアグニスがふとあることを聞いてくる


『そう言えば小僧。お前は何か夢があるそうだな、それはいったいなんなんだ?』

普段なら人間なんかにまるで興味を持つことのない最上位の精霊がこんなことを人間に訪ねるなんてかなり珍しいことだが勇斗はそんなこと知らない


「僕の夢は昔僕を助けてくれた人みたいに強くなること。そして次何か起きたときに自分の大切なものくらいは自分で守れるようになることだね」


『ふむ、小僧を助けた人間のことは誰であるか知っているのか?』


「もちろん知ってるよ。まぁその人のこと知ったときにはかなり驚いたけどね。なんせソティシアの王宮騎士だったし」

そう言いながら目標の人のことを思い浮かべる勇斗に対して、アグニスがはじめて焦りを感じさせる声で質問する


『むっ!小僧、今ソティシアと言ったか?』


「うん、言ったよ。だって僕が住む日本と協力しているのはソティシアって国のはずだから。アグニスはソティシアのこと何か知ってるの?」


『知ってはいる…がな。まさかあの女の近くに住む人間と俺が契約するなんてな…(ボソッ)』

ソティシアという単語を聞いてから何か考え事をしはじめたアグニス

そんなアグニスをとりあえず置いといて勇斗は明日の学校の準備をしはじめる

明日の予定は各クラスでの顔合わせとガイダンス

それに加えて書類提出と教科書・体操服・その他必要品の配布などが行われる予定だ

そしてクラスの発表がされるのは午前7時ぐらい

勇斗は優奈と夏菜とその時間に合わせて学校に向かうつもりである


(出来れば3人同じクラスがいいなぁ…。それにしても学校が楽しみだ。アグニスから聞いただけでもまだまだ新しく知るべきことはいっぱいあるみたいだし。…そうだ!)

明日のことを考えていた勇斗はある思いつきをする


「ねぇアグニス。授業がはじまったらさ、僕に精霊や魔精力を使った闘い方を教えてくれない?」

するとアグニスからすぐに返答が返ってくる


『…いいだろう。といっても俺様は厳しいからな、それなりの覚悟をしておけよ。あと今更だが別に声に出さなくても頭の中で俺様に話しかけるだけで問題ないぞ、実際に普段は俺様の声は小僧以外には聞こえていないはずだからな。だから別に他の人がいる場所で俺様と会話しても問題ない。必要がある時は俺様の声を他の奴らにも聞かせることはできるがな』

と言ったあと続けて


『少し俺様は用事が出来た。じゃあな小僧』

とアグニスが言うと紋様の輝きはおさまった

どうやら訓練については教えてくれるようだ

アグニスは厳しくすると言っていたが勇斗ならば問題ないだろう、なんせ自分の限界に挑戦することになんの戸惑いも躊躇もないのが勇斗である


だがアグニスとのやり取りを声に出さないでいいならもう少しはやく言って欲しかったと思う勇斗であった








……To be continued

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