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第1章[表]・クラス分けテスト④



ついに迎えたクラス分けテスト最終日

今日行われるのは配布された資料やプリントにもネット上にも全く情報が存在していない謎に包まれた何か

必然的に新入生達の緊張は高まる

その中には前2日の結果が芳しくなかったがために最終日こそはと奮起する者や、昨日の模擬戦をうけて既に若干勢いを失い焦っている者、そしてこのまま最終日ものりきって良いクラスへ入れるようにと緊張している者、などなど様々である

ちなみに勇斗は初日の測定では満足のいく結果、続く2日目は気絶はさせられたがダメージを与えることが出来たので上々ではないかと自己判断しているので最終日を案外気楽に迎えている

そういいつつも実際は寝不足のせいで頭がほぼはたらいてなかったりするし、つまるところ分かんないもんはどーしようもないっていう考え方をしているだけではあるけれども

そして優奈は勇斗と同じような心持ち

一方夏菜の方はやはり戦闘技術を未習得なだけあって模擬戦の結果は芳しくなかった様子でありこのままでは勇斗と優奈と同じクラスになれないのではないかと少し焦り気味

そして各々がそれぞれの心境のなかついに最後のテストが幕を開ける



そうして今日も今日とてグループ毎に開始の時間は異なるために勇斗はまた1人で待合室にて待機している

順番として勇斗は最後の時間帯であり時刻は既に夕方近く

またなぜ待合室で待機なのかと言うと、単純に最終テストの情報の漏洩を防ぐためである

そのため携帯デバイスの類も持ち込むことができない状況で勇斗達はただただ待ち続ける

その様子は耐久力をはかるテストにしか見えなかったり

本来ならこんな時に生徒同士で話でもしていればいいもののほとんどの者が一言も発せずに黙々と読書なり睡眠なり瞑想なり各自で適当な事をしている

中には少数だが友達同士で話したりしている者もいるが会話はほとんどなされていない

結局待合室は静かな状況が保たれる

そんな待ち時間の中で勇斗が唯一会話したのは、昨日の模擬戦で誰もなしえなかった5分間耐久しきることを達成した女子生徒

勇斗はその女子生徒に待合室に入ってすぐに声をかけられたのだ


「はじめてまして、わたくしの名前は海鳴院明日香かいめいいんあすかと申し上げます。昨日の模擬戦での貴方の一撃、とても見事でありましたわ。それで今回は恐らく同じクラスになると思われる貴方に声をかけさせていただきました」

そう言われて一瞬言葉につまるも返事をする勇斗


「こちらこそはじめまして、僕の名前は八坂勇斗。海鳴院さんも方こそ凄い腕前だったと思うよ。みんながすぐにやられているのにたった一人5分間耐え切ったんだからね」

そう勇斗が言うと明日香は一礼した後に別の場所へと移動していってしまった

このやり取りが今日の勇斗の唯一を会話である

ちなみに明日香の言っていたクラスが同じになるであろう内容について、勇斗は単純に昨日の模擬戦でまずまずの結果を残せたのが自分とこの女子生徒だけだと考えたことでスルーした

あながち間違ってなさそうな想定だがこの女子生徒・明日香は何か別の情報を持っていそうな雰囲気だった

あからさまにお金持ちであるが故にそれだけ他の生徒達よりも情報も多く持っている可能性が高い

ともあれ勇斗の毒牙にかかってしまいそうな候補が増えたことだけは事実だろう

優奈と夏菜と明日香が邂逅する日はそう遠くはない


そうして待つことおよそ数時間

やっとのことで勇斗達の順番がやってくる


「時間だ!私の後ろに着いてこい」

そう言いながら部屋へと入ってきた教師に導かれ、勇斗達はまだ見知らぬ道を歩いていく


(これから最後のテストがはじまる。落ち着いていつも通りに対処すれば大抵のことはなんとかなるはず!)

そんなことを考えながら歩いていく勇斗

そして目的の場所に辿り着いたのか立ち止まる教師

その場所はあきらかに校内の他とは違う場所であり、厳重に守られた要塞のようなあまり大きくない建物の前で一旦立ち止まると扉をあけてその中へと入っていく勇斗達

そして中に入るとそこにはまるで銀行の金庫のような厳つくごついドアが1つと自分達が今入ってきた扉があるだけの部屋

そして部屋に全員が入ったのを確認すると教師は声を上げる


「よし!全員揃ってるな」


「これから最後のクラス分けのテストを執り行う!といってもお前達がどうこうしてどうにかなるようなものじゃあない。今から行うのは精霊契約レビア・マギナ。まぁ聞いてもほとんどの者は全く分からないと思うがこれはこの学校、ひいてはその後においても必要となってくる重要な儀式だ。今説明出来ることはこれだけだ、それに儀式を行うにおいて難しいことは何一つない。その後の説明はその扉の向こう側にいる者から聞いてくれ!」

そう言った教師の言葉を聞いてほぼ全員が思考を止める

精霊契約レビア・マギナ

こんな言葉聞いたこともないだろう

なんせこれは日本においては現在は未だ極秘情報であり、魔精力を用いた戦闘を行う者ならばまず間違いなく受けている儀式である

その上この儀式はレアスの方の伝統的な物である

内容は文字の通り精霊との契約

どの属性・どの階位の精霊と契約出来るかはその人物の潜在能力次第であるが、それの結果よって大きく今後が左右されるのは言うまでもない

それほどまでに重要な儀式だ

もちろん契約出来ない場合もある

その大抵の理由は魔精力不足

なので魔精力のランクが高ければ高いほどこの儀式においても良い結果が出やすく、低ければ低いほどあまり良くない結果になりやすい

もちろんそれ以外の理由もあったりするが大抵の場合は魔精力が関係しているのでそもそも魔精力のランクが低いとこの儀式は受けることすら出来ないのだ


だがここまでの情報すらも生徒達は持ちえない

いや一部知っていた生徒もいるかもしれない

それでもほぼ全員が初めて聞く単語である精霊契約

想像もできない内容に困惑する生徒達

だがそんな生徒達を無視し教師は儀式を推し進める


「1人ずつ順番にその扉をあけて向こうの部屋へと入れ!だいたい儀式は説明含めても3分もあれば終わる。終わったら扉の向こうにいる人の指示に従って退出しろ。そのあとは自由に解散だ」

そう告げ最初の生徒へ扉の向こうへと行くことを促す教師

こういう時に最初というのはかなりキツいだろう

そうして何もわからぬまま扉をくぐる生徒

そしてそのまま儀式はどんどん進んでいった




そして勇斗の儀式がはじまる待つこと1時間とちょい

もう既に外は暗くなりかけているであろう時刻を迎えてやっと勇斗の順番が来た


「次の者、中へ入れ」

そう言われて重厚な扉をあけ中へ入る勇斗

扉をあけた先の部屋は一面が白

詳しくは大理石ような光る綺麗な石によって作り上げられているといった感じか

そしてそんな部屋の中央には台座があり、その上にどんな理屈で存在しているのか知らないが宙に浮かぶ銀色の球体(謎の物体Zととでもしておく)が存在している

そんな台座の横に人が2人立っている

どちらもフードを深く被り顔は見えない

恐らく指導員ではあると同時にまた別の役職も有している人達なのだろう


「そこの生徒、こちらへ」

指導員の片方の人物にそう言われて台座の前へと立った勇斗にもう片方の人物が説明をはじめる


「これより精霊契約を行う。心の準備が出来たらそこに浮かぶ球体に手を触れよ。これは全員に言っているアドバイスであるが精霊契約は心の在り方、その者の望みや想いによって良い結果をもたらすとされている。……ではやってみよ」

そう言われてまずは少しではあるが動揺していた心を落ち着けることにする勇斗

そして落ち着いた心のまま銀色の球体に手を触れつつアドバイス通りに勇斗の夢、憧れのあの人に近づきたいという想いを胸に抱く

すると球体が眩い輝きを放ちはじめる

あまりの眩しさに勇斗は手で目を覆いたくなるが、球体に触れている方の手が全く球体から離れない

そればかりか身動きが取れないのだ


そして球体の輝きが収まったとき

今度は勇斗を囲むようにして炎が巻き起こる


「こ、これはいったい!」


「そ、それよりも早く儀式の中止だ!君!早くその球体から手を離しなさい!」

そう炎の外側から指導員の2人が言ってくるが手を離したくても離れないのだ


「無理です!手が球体から離れません!」

指導員の焦りようから見てもこれが不測の事態だと分かり勇斗も焦りを隠せない

そうこうしているしているとついに炎は勇斗と覆い隠すようにより勢いをまして燃え上がる


(熱っ……くない??)

普通なら丸焦げになってもおかしくないであろう炎の影響を身近に受けているのにも関わらず、勇斗は一切の熱さを感じていない

そればかりか衣服すらも影響を受けていない

だがこれは勇斗だけのようだ


「くっ…この熱量は不味い。2人で防壁結界を貼るぞ!」


「了解した!少年には悪いがまるで手出しが出来ない!」

そんな声が勇斗の耳に聞こえてくる

内容から察するに指導員の2人はこの炎の影響を受けている


(僕だけ影響を受けない?いったいなんなんだこの炎は)

この謎の事態に巻き込まれているにも関わらず冷静に情報の分析をはじめる勇斗

だがそんな勇斗の耳に指導員の2人とはまるで違う、そして圧倒的な存在感を持つ声が聞こえてきた


『契約の場に呼び出されるなんて久しい。それにまさかこんな何も知らなさそうな小僧がこの俺様を呼び出すなんてな』

この部屋に響く謎の声

勇斗は周囲を見渡しても声の主の姿は見当たらない


『どこを見ている。俺様はここだ』

そう言われて声の方へと目を向ける勇斗だが、勇斗の周りには炎しかなくそれ以外には何も見えない

だが勇斗の頭に不意に考えがよぎった


「もしかして…この炎が喋ってる?!」

普通ならばそんな考えには至らないだろうが今ばっかりはこれしか考えつかない


『そうだ、この炎は俺様の身体の一部だ』

どうやら正解のようだ

だが正解したところで勇斗は状況を何一つ理解できない

そんな沈黙している勇斗に向かって声の主は話しかける


『まず名乗っておこうか。俺様の名前はアグニス!炎の最上位精霊だ。といっても小僧の様子をみるからにあまり精霊については知らないようだがな』

そう呆れたように言うアグニス

そしてアグニスの指摘したように全く精霊について知らない勇斗はこの状況がいかに大きな事柄なのかを一切理解しておらずにただ反射で答えた


「ぼ、僕の名前は八坂勇斗だ」

アグニスの存在感に圧されながらも名乗り返す勇斗

視線もずっと炎、声のする位置から逸らしていない

そして勇斗とアグニスの間に数瞬の沈黙が訪れたあと、アグニスがその口を開いた


『度胸よし、意気込みよし、才能有りか。それに魔精力の方も俺様と契約するに価するくらいはもっているようだな。……よし、久々に呼び出されたことだしせっかくだ。小僧、俺様が貴様と契約してやろう!』

そう嬉しそうな声で言うアグニスは言葉を続ける


『小僧!俺様と契約するからには妥協や挫折は許さん!それでも俺と契約して高みを目指す気概は貴様にあるか!?』

その言葉と共に激しさを増す炎

熱くはないはずなのに汗をかく勇斗

常人ならば逃げたくなるような圧を受けながらも勇斗は真っ直ぐ声のする位置を向き答える


「ああ!僕はあの人のように強くなりたい!そのために必要な努力は惜しまないつもりだ。だからアグニス、僕と契約してくれ!」


『よく言った!その心意気、しかと見届けよう!』

勇斗の言葉にそう言葉を返すアグニス

その瞬間球体に触れていた勇斗の右手が熱をもちはじめる

そして熱がおさまった後、勇斗の右の手の甲には波打つ炎のようなマークが刻まれていた

そしてそれと同時に勇斗を覆うように生じていた炎は一瞬にして消え失せる


そして部屋に残るは勇斗と炎の影響を受けて耐えきれなかったのか倒れふす2人の指導員

そんな状況の中、勇斗は呟く


「えっ?これってもしかして失敗?」

そんな勇斗の戸惑いを含めた呟きは誰にも聞かれることなくただ部屋の中を虚しく響くだけだった









……To be continued

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