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プロローグ[表]

《side 勇斗》



満開の桜に晴れ渡る春空

絶好のお花見日和であるこの日に行われるのは日連魔法戦闘高等学校の高学部の入学式である

黒を基調とした赤のラインが目立つ真新しい制服に身を包む新1年生と思しき多くの少年少女達が次々と学内へと入っていくなか、校門の前で1人の少年・八坂やさか勇斗ゆうとは1人立ったままでこれから通うことになる校舎をみて心を奮わせていた


(やっとこの学校に通うことが出来る。それで僕もいつかはあの人のようになってみせる!……それにしてもほんと勉強とか頑張ってよかったなぁ。倍率とか相変わらず凄かったらしいし)

そんなことを考えながら立っている勇斗の耳に


「勇斗おはよっ。なーにこんなとこでぼーっと立ちすくんでるのよ」

という声が聞こえてきたので声のする方へと顔を向けてみればそこには周りの少年達が1度は振り向いてしまいそうになるほどの笑顔を浮かべた少女が1人立っている


「うん、おはよう優奈。僕はただこれからこの学校に通えることに対して感動していただけだよ」

そう勇斗が笑みを浮かべながら隣に立つ少女・立花優奈たちばなゆうなへ挨拶を返したことによって優奈の顔は少し赤くなるのだが勇斗がそれに気づくことはない

それどころかさっさと再び視線を校舎の方へと向けてしまうありようだ


(うーん、ほんと勇斗はいつもこんな感じね。まぁ今日はこの学校の方に意識が向いてしまうのは仕方の無いことないことだから別にいいけど)

校舎をみて目を輝かす勇斗を優奈は呆れたように溜息を吐くが、優奈は勇斗がこの学校に通うことに対して並々ならぬ思いを抱いていたこととその理由を知っているので特に気にしない

それに優奈はまた勇斗と同じ学校へと通うことができるというだけでかなり嬉しく思っている

それに特段それ以上のことに対してはまだ勇斗に求めていない分余裕なるものがあったりもする


「まぁそうやって感動しているのは分かるけどそろそろ入学式がはじまる時間よ勇斗。初日からいきなり遅刻なんてしたくはないでしょ?特に入学式に遅刻なんて絶対に目立つわよ」

優奈にそう言われハッとした勇斗が腕にある時計を見てみるとあと15分もすれば9時になろうかという時刻

入学式は9時にはじまるの予定なので今から向かえばちょうど良い時間だろう

そう思った勇斗は優奈にそろそろ行こうかという声がけをしようとしたがふと気になる事が出来たので優香に聞いてみる


「そういや今から会場へと向かおうと思ったんだけどさ、夏菜はどうしたの?優奈」

そう勇斗に聞かれた優奈はバツの悪そうな顔をしてふいっと顔を逸らすと


「さ、さぁ?別々で行くんじゃなかったっけ?」

とか白々しく言っている

明らかに嘘である

優奈の様子から察するにきっと……なのだろう

だがそんなことに気がつくはずもない勇斗


「いやそんなはずはないと思うよ。昨日だって一緒に行こうって言ってたし」

そう言うとポケットから携帯デバイスを取り出すと誰かに連絡を取るためなのか電話をかけはじめる


(まずい!このままじゃ私の計画が……)

そんなことを優奈が考えるがもう遅い

いや、勇斗が電話をかけるかけないかなんて関係なくタイミングが遅かったようだ


「おはよ〜、勇ちゃん!……それとついでに優奈ちゃんも」

そう前半と後半で完璧にテンションが違う挨拶を言いながら勇斗へと後ろから抱きついてくる人物が現れる

そのおかげで危うく勇斗は転けそうになるが頑張って踏みとどまることができたのはこうやって今抱きついてきている人物から飛びつかれることに慣れているが故の結果であったりする

そんな勇斗に抱きついている人物・梔子夏菜くちなしなつなに勇斗が声をかけようとするがそれよりも先に優奈が声を上げる


「ちょっ…!何してんのよ夏菜!早く勇斗から離れなさい!」

そう言いながら優奈は勇斗に抱きつく夏菜を引き剥がそうとするが、夏菜はそんなことをお構いなしに勇斗へと抱きつく力を強くする

見慣れた人々からすればごく有り触れた光景であるこの流れはもはや3人の日常の一部

ちなみに夏菜に抱きつかれている勇斗だが慣れているせいなのか特に照れることもなく対処しているが夏菜の方は少し照れてたりする

だがあいにく今日はこの流れを楽しむ余裕も無さそうだ


「おはよ夏菜。2人が仲良くするのは構わないけどそろそろ行かないと入学式に遅れるよ」

そんなことを宣う勇斗に同時に溜息をつき呆れた様子を見せる2人

何をどう勘違いしたらそう見えるのか分からないが、勇斗からしてみれば優奈と夏菜は大の仲良しであり、こうやっていつも仲良くじゃれ合っている…と思っていたりする

現実はその真反対、とまではいかないが2人は恋敵すなわちライバルであると同時にこれ以上敵が増えないようにするための協力関係を結んでいたりする間柄

まぁ結論結構仲良しなのである


そんなことはさておき今は入学式だ

初日から遅刻や欠席なんてのはこれからの学校生活において少しとはいえ影響を与えかねない


「そうね。もう時間ギリギリのようだし早く行きましょう。遅刻したら寝坊した夏菜のせいね」


「わたしのせいじゃなくて今日の朝混んでいたバスが悪いんだもん。もしかしたら今日に限って何故か起こしてくれなかった優奈ちゃんのせいかもしれない」

そうさり気なく互いに皮肉を言いつつも入学式の会場である大体育館へと向かう勇斗の後ろをついて行く2人であった











大体育館に着いてみると既に体育館内は新入生とその保護者、加えて在校生である2.3年生達によってほぼ全て埋まっており和気あいあいとした雰囲気に包まれていた

そんな雰囲気の中3人は新入生が座るゾーンへと向かい丁度空いていた最後尾の席に座る

周りも見てみてもほぼ空席が見当たらないあたり既に新入生や在校生のほぼ全員が集結しているのであろう

ここで遅刻でもしようものなら確実に目立つことになっていた、という事実に内心3人はホッとする

実際に入学式のはじまりまで残り数分である

そうして3人が着席してほぼすぐに入学式は開会された


ここでこの学校の特色を少し述べてみよう

何故入学式にも関わらず新入生の席順が適当なのか

またこの日は入学式以外になんの予定もないのか

本来ならば入学式の前に各クラスごとに集まり、なんやかんやのガイダンスなんかを行ってから入学式を迎えてから入学式後にもクラスごとにまた何かあったりするのが一般的な高校であるはず

もしくはクラスごとに座る場所が決まっていたりするはずだと思う

だがしかしこの学校、日連魔法戦闘高等学校の入学当初にはクラス分けというものが存在していない

何故なら入学後に行われるクラス分けテストなる行事によってクラスが決められるからだ

ちなみにクラス分けのための日程と行う事の内容は知らされているが、その採点基準なんかは基本的には新入生には知らされていない

といっても上級生から聞いてる者や、独自に調べて対策をしてきている者もいることだ

つまり入学式がはじまる時点で既に情報戦なるものが小規模で行われていたりするのが分かる

なんせ上のクラスにはいればその分利が増えるのだから

とそのような理由から今日は入学式だけというわけなのだ

ちなみに他にもこの学校は中高一貫校なので午後に中学の入学式を行うからという理由もあったりもする


そんなこんなで特色豊かな学校とは思えないほどに平々凡々な入学式は進んでいく

校長の挨拶からはじまりその他諸々の偉い手の祝辞

更には校歌斉唱なんかも行われる

そんな在り来りな式の様子に真面目な新入生や在校生は真面目に起きて話を聞いていたりするが一部の生徒は既に夢の世界だ

そして定番中の定番中、在校生の代表として生徒会長からの挨拶の番になった


「在校生代表!生徒会長・葛城烈花かつらぎりっか

そう司会役が言うと壇上に並ぶ教師団の中から1人の女性が立ち上がり、そして中央のマイクのある場所へと立つと一礼する

誰が見ても美しく完璧な仕草であった

そして新入生の中には生徒会長に見惚れるものがちらほら……どころではなく大半の者が生徒会長へと目をおいやられている

それは新入生に限らず在校生、更には保護者達も同じ様子だ

それほどまでに生徒会長・葛城には人を惹きつけるオーラのようなものが存在していた

視線を惹きつける強者の風格

これが現時点では過去最強と言われる学生

この事実を知る一部の者はそれぞれ畏怖・尊敬・好奇心を各々の胸のうちに抱いていたことだろう

ちなみに勇斗ももれなくその惹き付けられたうちの1人であり、それを素早く把握した両隣に座っている2人によって制裁を加えられていたりするのだがこればかりは仕方ない

そうして会場内ほぼ全員が注目するなか葛城による挨拶ははじまった


…………そしてあっという間に終わった

というのは大半の人々の感想だと思う

なんせその人達は葛城に目を向け意識を向けていたばかりに葛城の話のほとんどが耳に入ることなく、ただひたすらに視線を向けていただけなのだから

葛城の挨拶をきちんと聞いていた人からすれば葛城の挨拶の内容はたいへん優れており、そして生徒会長・葛城という人物がいかにできているのかを理解したことだろう

だがそんな人物は極少数であり、大半の人々は葛城に見惚れていることしか出来なかったようだ

見惚れると言うよりはその存在感から目を離せなかったというのが正しいかもしれない


そしてその余韻はすぐさま消えることなく続く新入生代表の挨拶の番になっても壇上の教師団に並んで座る葛城に意識を向けている者が多数いた

そのため新入生代表の挨拶をした生徒の挨拶なんてろくに聞かれもしない有様である

哀れなり名もなき男子生徒よ

もっともそれ以外にも寝ている人や手元のデバイスに意識を向ける人も少なからず存在しておりぶっちゃけ葛城の挨拶のあとに何があったのかなんて詳しく覚えている人は極少数といった具合

そんな微妙なアクシデントがありながらも入学式は順々と進んでいき、無事にほぼ定刻通りに入学式は終わりを迎えるのであった










そうして入学式も終わり帰路につく3人

といっても夏菜だけは学校近くのバス停でお別れであるので学校からそう距離があるわけではない

ちなみに勇斗と優奈は家がお隣同士である

いわゆる幼なじみというやつだ

もっとも出会った当初は2人の仲は良くなかったのだが


そんなわけでバス停まで何気ない会話をして歩いていく3人

話の内容としては明日からどんなことをしていくのかや、クラスが一緒になれるといいな的なことである

一応3人の実力を鑑みても同じクラスになる可能性はある

学力なら夏菜が1番上であり次に勇斗、そして3人の中では優奈が1番低い

だがそうはいってもこの日蓮魔法戦闘高等学校に受かるだけの学力はあるので決しておバカなわけではない

他の2人の成績が少し良すぎるのだ

そして運動に関していえば逆に優奈が1番優れているといえる

これまた優奈が優れているといっても3人が3人とも運動を苦手としていない時点で学生が望む能力としての欠点はないだろう

そして最後に戦闘能力

これに関しては勇斗が優奈より一歩リードといった感じだ

もっともこれは2人のお家柄に関係してたりする

また夏菜は2人と比べて現時点ではそこまで戦闘能力があるわけではないが運動神経はいいので学校における戦闘訓練を受けはじめるとすぐに伸びるだろう

よって総合的にみるとこの3人はいい感じで並ぶ

それはあくまでも普通の高校での基準ならばだが


そうして明日からの学校生活への期待を高めて2人と会話をしている勇斗の目に近くの小学校から出てくる真新しい小学校の制服を来ている少女を連れた勇斗達と同じ真新しい高校の制服を来た少年が出てくるのが目に入る


(妹でも迎えに来たのかな?でも体育館から出てきたのは僕達が最初だったような……?まぁ気のせいか。流石にあの高校の入学式をサボって小学校の入学式に行く人なんているわけないだろう)

そんなことを思いながらも特に気にすることも無くバス停へと向かう歩みを進める


そしてバス停で夏菜と別れた2人は並んで自分達の家へと歩いて向かう

そんな時ふと勇斗は優奈から声をかけられた


「ねぇ勇斗。明日からの学校生活楽しみ?」

そう優奈は質問するがこんな分かりきったことを聞く必要はないだろう


「当たり前だよ。6年前からの目標へと大きな一歩がやっと踏み出せるんだ!」

そう笑顔になり勢いよく答える勇斗

そんな勇斗の答えが分かっていのか優奈も笑みを浮かべると


「私も楽しみだよっ!また勇斗と一緒の学校に行けるだしね(ボソッ)」

とそう言い、続けて


「それじゃあまた明日ね!おやすみ」

と言うと駆け足で目の前に見えてきていた家の方へと向かっていくと家の中へと入っていった

どうやらもう家の近くまで来ていたようだ

勇斗も優奈が帰宅したのを確認すると自宅へと入っていく

明日からはじまるの学校生活への期待を胸に抱いて







……To be continued

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