第1章[表]・体育(という名の……)
ミラフェルによるほぼ新しいことづくめの授業を寝ることなく真面目に受けたAクラスの生徒達は名前だけ見ればどこの学校でも受ける授業であろう体育の授業を受けるべく各自持参の運動しやすい服に着替えたのち、クラス分けテストの教師との模擬戦において勇斗達のグループが使用した第三アリーナに集合している
この学校において1学年目の生徒達が受ける特別な授業は全部で4つ
1つ目は魔精力の使用をメインとした基礎戦闘学
2つ目は基礎戦闘学からの発展とした魔精力を更に上手く扱うことによって魔法技能を高めるための魔法戦闘学
3つ目は精霊に関する知識・技術を高めることでより効率よく契約した精霊との親和性を高めつつ、精霊の力を用いて戦闘力を上げていくための精霊学
そして最後に名前はごくごく普通だがやる内容は完全に別のものになっている体育である
昨日の授業で奏がチラッと言っていたような気もするがこの体育という授業、球技なんかのスポーツを行うのではなく生徒達によるガチバトルが授業のメインである
当然その中には個人対個人のトーナメント方式やチーム対抗のバトルロワイヤル、更には教師も加わった上での乱戦なんかもあるらしい
つまり他の授業で学んだ事をこの授業で実践し、色々と試していくことが目的だろう
もっともこんな授業内容なのでこの学校の生徒達からは人気が高かったりするのだが
そんなわけで一部を除く生徒達には人気のある授業である体育のはじまりを告げるチャイムの音が鳴る
今回は授業についての説明と軽く運動をするだけとのことなので生徒達は各自運動しやすい服に着替えてはいるものの模擬戦用の武器なんかは準備していない
そうして授業開始のチャイムから約5分、遅れてきたくせに全く気にもしていない感じで理沙が勇斗達の前へと昨日同様に竹刀を手で遊ばせながらやってきた
これからも分かるようにこの授業も理沙が担当らしい
「今日も全員出席で忘れ物もあるやつもいなさそうだな、この調子でこれからも続けていくように。それじゃあさっそく授業に入ろうか」
そんな前置きをしてから理沙はまず勇斗達にチームごとに別れるように指示を出す
そんな理沙の指示に従い素早く動き出すAクラスの生徒達
5人一組10チームが出来たのを確認して理沙は話し出す
「この授業はまず入学してから最初の大イベントであるチーム対抗戦まではチームで授業に取り組んでもらう。授業でやることは主にクラス内のチーム対チームでの模擬戦又は私との1対5の模擬戦、あとはときたま来るゲストに指導をしてもらう感じでやる予定だ。今回は必要なかったが次回からは必ず模擬戦の武器を準備してくること。まだ自分の得物が決まってないものや模擬戦用の武器を持っていない者は今日の放課後職員室の私のところまでくるように。ちゃんと全員がこの授業に取り組めるように最大限手を貸すつもりだから安心して相談しに来るといい。私としても多分無茶はさせないと思う」
覇気のない声でそう告げた理沙
心做しか基礎戦闘学の時より更にやる気がないように見えるのは気の所為だろうかと勇斗は思う
いや実際気の所為ではなかったりする
まぁその理由としては至極単純であり基礎戦闘学は生徒達に課題を与えて、それに生徒達が取り組んでいる間は理沙自体は特にすることがないので楽に出来る
だがしかしこの体育では模擬戦とはいえ生徒同士による模擬戦だとやはり何らかの拍子に怪我をしてしまう可能性があるためにずっと気を使って生徒達を見ていなければならないからだ
あとついでにこの授業は理沙の他にゲストと称して他の教員や戦闘指導員が来たりするので手を抜けないという現実もある
そんなわけでやる気が全く見えない担任に対してやる気を漲らせている生徒達との構図がみてとれるこの授業は初回ということもありのんびりと進んでいく
「今からこの授業での決まり事を言うぞ。まず1つ目にこの授業には本物の武器の類の持ち込みは禁止だ、いないとは思うがもし持ち込んだ者がいたら即刻私が取り押さえるからな。理由は言わなくても分かるだろう。それにこの学校内には基本的に模擬戦用以外の武器の持ち込みは禁止だしな。そして2つ目にこの授業では私が許可した時以外には魔精力の使用は厳禁とする。もちろん魔精力による身体能力の強化だけでなく魔法の発動もだ。ほんの微かな使用でも私には分かるからな?これも破った者がいた場合きつーいお仕置きがまっているので覚悟しておくように。理由はただ単純に魔精力を使用すれば現時点で未熟なお前達では怪我をしたりさせたりする可能性が大いにあるからだ、万が一に怪我じゃすまない場合も出てくるからな。そう言えば昨日魔精力を暴発させた奴がいたな?」
理沙がそう言うとクラスメイト全員が一斉に勇斗へと目を向ける
まぁその肝心の勇斗は特に反省した様子もなくこれだけの視線を集めているのにも関わらず至って普通の様子
極めて色々なことに鈍感な男である
「お前達はなかなか運がいいぞ、約一名にとっては多少は不幸なことだったかもしれんが。なんせ昨日魔精力の暴発の様子を見た事は全員にとっていい経験になったはずだからな。魔精力の暴発は素人が魔精力の具現化を行うときに無茶すればすぐに起こりうるし、それどころか熟練の戦士でも少し加減を間違えれば暴発してしまうほどに意外と起こりやすいものだ。といっても魔精力は暴発させても暴発させた本人自体にはさほどダメージはない、特に魔精力の扱いに慣れてきて無意識で身体能力の強化が出来るようになってくると火傷程度で済む。基本的に自分の魔精力で自分が死に至ることはないと思っていていいぞ、元にそこにいる昨日暴発させた奴だって軽い回復魔法ですぐに治せたからな」
「それで重要なのは魔精力の暴発は自分にはさほどダメージはないが他人には大きなダメージを与えることが出来るってことだ。つまりチームで活動している時に誰かが魔精力を暴発させてしまうとチームメンバー全員に大きな被害が出る。それに魔精力による防御力の向上が完全にできるわけではない今のお前達ならなおさら危険だ。ついでに言っておくとこの魔精力の性質を利用して自爆特攻するような奴は多くいるから気をつけろよ。ほんとうに追い詰められたときだと人間は何をするか分からんからな」
「とまぁ話が少しそれたが魔精力の具現化なんて基本的にあまりしないからそれによる魔精力の暴発もほとんどない。基本的に魔精力の使用の制限をするのは保険だとでも思っておいてくれ。それで話を戻すぞ。この体育で最も大事なこと、それは絶対に気を抜かないことと手を抜かないことだ。これに関しては理由は言うまでもないと思う。各自全力を尽くしてこの授業を受けてくれ、じゃないとこの授業の意味が無いからな。勿論他の授業も手を抜かないようにな」
そう少しニヤケ顔で言いくくると理沙は竹刀を持っていない方の手に持っていたやや大きめの鞄から何やら四角い箱を取り出す
「説明は以上だ。今日はこの後の残りの時間でお前達には軽くチーム対抗で簡単な遊びをしてもらう」
そう言うと四角い箱から何やら真っ黒なボールを2つ取り出す理沙
大きさ的にはハンドボールくらいだろうか
それに目の前で理沙が片手でグニョグニョしているのでかなり柔らかそうでもある
「このボールは少々面白い性質を持っていてな、手に持っている間は至って普通の柔らかいボールなんだが一度軽くでも衝撃を加えたりするとボールが触れている箇所が黒く染まる。つまり投げて当てられたら当たった箇所が黒くなり、逆に当てれば相手を黒く染めれるってことだ。つまり何が言いたいのかと言うと……この2つのボールを使ってここにいる全員でボール当てをやれってことだ。ルールは簡単、1度でも衣服や顔なんかに当たって黒い痕がつけばアウト、ちなみに受け止める時に手の平は必要だろうから手の平のみはセーフとする。それで最後の1人まで残っていた奴がいるチームには私から何か賞品でもプレゼントするとしようか」
賞品が出ると聞いて目の色を変える者数名
遊びとはいえ負けたくないという思いを漲らせる者数名
一部汚れるのがいやだから絶対に負けないと心から誓う女子の中にいたりいなかったり
それぞれ理由は別であるが一様にやる気をみせているAクラスの生徒達に理沙は告げる
「それでは今から開始するぞ。制限時間は勝者が決まるかこの授業の終わりまででそれまでに決着がつかなかった場合でもチャイムが鳴った時点で終わりだ。場所はこのアリーナの中のみ、隠れたりするのは無しだ。あと片付けが面倒くさくなるので極力壁や天井には当てないようにしてくれると私が助かる」
そう言うと両手に持っていたボールを空高く上へと投げる理沙
そのままアリーナの観客席の方へと移動していくあたりこの投げられたボールを取った人からはじめていいと言うことなのだろう
そうして男女とも等しく真っ黒に染まりながらも最初の体育の授業は刻刻と終わりへ近づいていった
精霊学と体育、その後の4つの基本的な授業を受け終わったその日の放課後
理沙にこれからの使用する模擬戦用の武器についての相談にいった夏菜を除いた勇斗達4人はこれからチーム対抗戦に向けてどうするかの話し合いを軽くしていた
「とりあえず担当だけど僕と夨君が近距離、それで優奈が中距離で明日香さんが遠距離ってのは確定なんだよね?」
そんな勇斗の問いかけに肯定を示す3人
ガントレット擬を使う勇斗に西洋剣がメインであるがその他刃物を使う夨、それに加えて槍の優奈に弓の明日香である
まだ決まってなくてこれから決まるであろう夏菜の位置だが5人一組であることを考えると、今のところどの距離になったとしても特に問題がないと勇斗は考えている
「あとは連携とかその他諸々の練習なんだけど…これに関しては多分体育でやったり放課後に許可をとって学校内で場所を借りるしかないよね?」
「一応私と勇斗の家ならある程度の広さはあるけどアリーナと比べるとね。多分学校の施設を借りた方がマシだと思うわ」
「俺の方でも思い当たる場所は特にないな。だけど学校の施設ならこの学校の生徒ほぼ全員が全員予約取ろうとするだろ?それだと下級生の俺達にはきついんじゃないか?」
そう夨に言われ確かに借りられない可能性が高いと考える2人
だがこのチームには他のチームにはない切り札がいるのだ
「それならわたくしのお家で恐らく練習出来ますわよ。広さも強度も特に問題ない場所に心当たりがありますわ」
そう言うのは見るからにお嬢様である明日香
1年の中でもトップクラスのお金持ちである明日香にかかれば練習場の確保なんて造作もない
明日香の発言に多少驚きつつも、お金持ちであることはまぁ十中八九当たっているだろうと思っていた3人は特に考えることも無く明日香の案にのる
「それじゃ練習場所の件は明日香さんよろしくね。あと練習する日程はまた後日決める感じで大丈夫かな?」
「私は問題ないわ」
「俺も特に問題ないな。行ける日は必ず参加するさ」
「わたくしも問題ありませんわ。場所の件も含めて了承致しましたわ」
そうして軽い話し合いを終えた4人
まだ授業も始まったばかりである今焦って色々考えてもこの後のことがまるで予測できないために無駄になるだろうと考えて今は特に詳しい話し合いはしない
基礎戦闘学
魔法戦闘学
精霊学
体育(という名の何か別の物)
どの授業も目新しいことばかりで一瞬でも気を抜けばついていけなくなる可能性もあることを踏まえればまず最初のうちはそれぞれがしっかりと授業を受けていくことを決めた4人
この勇斗達のチームが6月の学年別チーム対抗戦でどんな活躍を見せるのか
その想像は今はまだ出来ない
……To be continued




