第1章[表]・授業初日ver基礎戦闘学
晴れ渡っていない曇り空
まだ梅雨でもないのにジメジメとした湿度と生暖かい気温の中、今日受ける人生で初めての授業である基礎戦闘学がはじまるのを今か今かと心待ちにしているAクラスの生徒達
ちなみに基礎戦闘学とは文字通りに戦闘に関する授業であり、この学校で行われている戦闘関係の授業は基礎戦闘学と魔法戦闘学の2つが存在している
まず最初に受けるのは基礎戦闘学
つまり担任である璃沙の授業だ
前日の璃沙の言葉通り遅刻も忘れ物もしていないAクラスの生徒達が待っていると、ここ小体育館に全身黒色のジャージ姿で何故か肩に竹刀を担いだ璃沙が現れた
見た目クール美人な璃沙のジャージ姿はどこぞの熱血教師を思い出させるものがあるが、その立ち振る舞いは完全に兵士のそれである
とても昨日見たやる気のない教師と同一人物には見えない
「おはようみんな。よし、ちゃんと全員遅刻もなく忘れ物もしていないようだな。それじゃさっそく基礎戦闘学の授業をはじめていくぞ!」
そう言いながら手で竹刀をあそばせている璃沙
ちなみにこの授業に必要なものは学校指定の運動着と水分補給用の飲み物、そしてやる気である
もう一度いう、ヤル気である
ついでにいっておくとこの学校の授業制度は普通の中学や高校とは少し異なっており、1日に90分の授業が午前の部にに2つあり午後の部には45分の授業が4つ入っている
当然午前にある2つの授業には戦闘学などのこの学校特有の授業が、そして午後にある4つの授業には理科や数学といった極ありふれたものが該当している
ちなみに英語や中国語といった日本語以外の言語の授業は存在していない
理由としては簡単で現在の日本において使う機会が至極滅多にないからというのが1つ目、2つ目に完全な翻訳機がソティシアの協力のもと完成しているからだ
そんなわけでその翻訳機は携帯デバイスに内蔵されているため基本的に日本人やソティシアの人は普段から所持している
なので日本語やソティシア語をわざわざ習うといったことはこの学校では行わないのだ
その分別の授業や行事に時間を回してある
そんなわけでこれから90分の間行われるはじめての基礎戦闘学
いったいどんな授業なのか?
一部を除いた生徒達は誰もそれを知りえない
「この授業で学ぶことで一番重要な事、それは魔精力の扱い方だ。これがきちんと出来なければいくら魔精力のランクが高くても宝の持ち腐れ、自分より低い魔精力ランクの奴にもまるで勝てない。そんなわけでこれからチーム対抗戦までの約2ヶ月みっちりと魔精力の扱い方について指導する。ついてこれなかったならば来年はこのクラスにいられないと思って真剣に取り組むように!」
そう大声で言い生徒に気合いを入れる璃沙
魔精力の取り扱い方
この言葉をきいて勇斗は期待に目を輝かせる
(昨日アグニスから聞いた話だと魔精力の扱いが上手くなればアグニスの力をより引き出せるようになるらしい。それに今までとは比べ物にならないくらいに強くなれるとも言ってたはず)
とまぁそんな内容の事をアグニスから伝えられている勇斗
実際には少しフライングして昨日アグニスから魔精力の扱い方の初歩である魔精力の存在を感知するための方法を習っていたりする
その結果として既に勇斗はたったの一晩で魔精力を感じ取ることが出来るようになったばかりか無意識に魔精力を使用することが出来ていたりするのだけれどこれについてはまだアグニスしか気づいてない
そんなこれから学ぶことに対して期待に胸を踊らせている勇斗だが他の生徒が全員同じであるかと言われたらそうは言えないだろう
勇斗含め自分が失敗したり挫折するなんてことをまるで恐れていない者や自分の実力に自身がある者は勇斗同様にこれからの授業に胸を高鳴らせている
だがその一方で授業についていけなかったら落ちこぼれていくと言われると不安になる生徒もいるわけだ
このクラスであり続けることがどれだけ重要なのかを全員が分かっているだけに余計不安が大きいだろう
そしてそんな生徒達の心中を把握しているのかいないのか分からないが璃沙は授業を開始する
「よし、まずは魔精力の存在を感じるところからだ」
そう言い竹刀の先をを生徒達の方へと向けてニヤリと笑を浮かべつつもう一言
「じゃあやってみろ」
((((……えっ???))))
その瞬間だけはこのクラスの璃沙を除くほぼ全員の心がひとつになったに違いない
やってみろ、そう何の説明もなしに言い放った担任
全くのお手本も無し、具体的な説明も無し
そんな言われて出来るものがいるだろうか?
いや普通はいないだろう
だが普通では無い人がいたりするのがこの学校だ
「ふむ、こんなものか」
「出来ましたわ」
「確かこんな感じだったよね〜」
そんなことを口々に言いながら魔精力と思わしき光る球体を手の平の上に存在させている生徒が3人
感知だけではなく魔精力の具現化(可視化)までさせた
そんな事実に3人を見て驚きを隠せない他のAクラスの生徒達と、反対にとても面白そうに3人を見ている璃沙
「今年はとびきり優秀な者が数名いるようだな。感心、感心。ほれ、こいつらはなんのヒントも無しに出来たぞ?ほれ、他の者もやってみろ」
そんなことを宣う璃沙に1人の生徒が喰ってかかる
「先生!その3人は先に何かしらの情報を知っていたんじゃないんですか?どう考えたって今まで使ったことも存在の感知すらもしたことない魔精力を僕達がすぐに扱えるわけありません」
1人がそう言うと他の生徒達もついづいして口々に「普通出来ないよな」とか「あの3人は先に特別授業うけてるんじゃないの?」なんかを言いざわめきはじめる
だがそんな言葉なんかで璃沙の態度は変わらない
「ほう、この3人が出来ているのが不正によるものだと考えている者がいるようだな」
璃沙はそういい笑みを浮かべて次の言葉を放つ
「なら今そう考えた者は来年にこのクラスにはいないな。どうしてこの者達が既にやり方を知っていたことに対して疑いの目を向ける、なぜ焦らない?自分よりも進んだ位置にこの者達がいるという事実を認めて追いつこうという気概をもたない?そんな考え方しか出来ない奴はこれから先伸びんぞ?その証拠にほれ、文句を言ったやつは周りを見てみろ。既に自分なりに試行錯誤している奴もいるだろうが。あとはお前ら次第だ、各自やってみろ」
そう璃沙は言うと普通に小体育館から出ていく
紛れもなく授業放棄である
だが一方では璃沙にこう言われて何のも言葉も返せない一部の生徒達が動きをとれずに固まっている
それもそのはず
勇斗含めて一部の生徒達は璃沙に言われた通り自分なりに魔精力を感じるために唸ったり目を瞑っていたりとそれぞれ何かしらの行動にうつっている
そんな生徒達をみてか文句を言ってた生徒達もそそくさと行動にうつっていくなか、ここで誰しもが予想だにしなかった事が発生する
その原因は…勇斗だった
勇斗は璃沙がやってみろと言った魔精力の感知
これは既に昨日のうちに可能になっている
だが問題はそのあとだ
明日香含め3人もの生徒が魔精力の具現化もさせてしまったことだ
そんな3人を見て対抗心を燃やしてしまった勇斗は考える
(魔精力の感知はできる。あとはこれを手のひらに集めるように意識を向ければあの3人みたいに魔精力を目に見える出来るようになるはずだ……多分)
そう考えた勇斗は即実行にうつす
まずは腕に、そして手のひらに
徐々に意識を集中させる場所を移しつつも魔精力を集める
アグニスが昨日のうちに魔精力の具現化まで説明していれば勇斗にきちんと忠告していただろう
魔精力の感知の次にやるのは魔精力の具現化ではなく身体の一部に少しだけ魔精力を集中させて身体能力を少し向上させたりして魔精力の扱いに慣れていくことであり、その理由は具現化を行うためには魔精力の出力調整もとい加減がきくようになっていないと駄目であるということを
つまり魔精力の出力調整が出来ないままに魔精力の具現化を行うとどうなるかというと簡単に言って……暴発する
そんなことさも知らぬ勇斗は魔精力を手のひらに集めるために一心に集中する
そして徐々に魔精力が手のひら付近に集まってきたのを感知した勇斗は一気に力を込める
「よしっ、これで……あれ?」
力をこめたことにより3人のように光る球が手のひらの上に発生した…はいいもののその大きさがどんどん大きくなっていく
しかも何かバチバチという音までたてはじめた
全く予想もしなかった現象に勇斗は慌てながらもアグニスに心の中で話しかける
(ねぇ!アグニス。これどうやって止めるの?!)
そんな焦る勇斗につられてかアグニスからも少し焦った感じの声が聞こえてくる
『おいぃぃ!昨日あれほど感知以外のことはするなって言っただろうが!今すぐ魔精力を集めるのをやめろ、そうじゃないと大爆発するぞ!』
そんなアグニスの言葉を聞いて更に焦りを加速させる勇斗
(そんなこと言っても……止まらないよー!!)
『頑張って何とかしろ!』
そんなやり取りをする勇斗とアグニス
だが徐々に大きくなる具現化された魔精力の塊とそれから発生される音は止まらない
さすがに周りの生徒達も気がつきはじめる
「勇斗!それ大丈夫なの?!」
「ゆうちゃんそれ危なくないの?」
焦りをどんどん加速させている勇斗に話しかける2人
他の生徒達も勇斗のに意識を向けつつも危ないと思ったのか勇斗からさりげなく離れていく
ちなみに明日香はこの現象について瞬時に理解したために誰よりも早く勇斗から距離をとっている
そんな間にもどんどん大きくなる魔精力の塊
いくら勇斗が大きくなるのを止めようと思っても全く止まることなく大きくなり続ける
『ああ、もう駄目だなこれは。おい小僧、周りの奴らをどっかにいかせろ。このままだと巻き込むことになるぞ。そうなれば最悪何人か死ぬぞ?』
そんな諦めを含めたアグニスの声がが勇斗に届く
それを聞いて腹を括った勇斗は周りにいる人に聞こえるように言う
「みんな僕から離れて!このままだと爆発するらしい」
そんな勇斗の焦った声をきいた周りの生徒達は我先にと勇斗から急いで距離をとる
この時点で勇斗の手のひらの上にある魔精力の塊は勇斗の頭の大きさを軽く上回っている
「優奈と夏菜も早く離れて。これは僕以外には危ないらしいから」
勇斗の爆発宣言に心配そうにまだ近くにいる2人に若干嘘を混ぜながらそう伝える勇斗
そしてその勇斗の言葉を半信半疑でありつつも承認した2人も他の生徒達同様に勇斗から離れる
(これで他の人には影響がいかないと思う……ねぇアグニス。この爆発ってどれぐらい痛い?)
『大丈夫だ、安心しろ小僧。自分の魔精力によるダメージはそこまで大きくない。せいぜい……死ぬほど痛いだけだ』
死ぬほど痛いっていうのがどれほど痛いのかはさっぱり分からないが間違いなくかなり痛い
アグニスの言葉を聞いて死ぬことはないとだけ分かった勇斗は心を決める
(よし、覚悟は出来た。もう大丈夫、怖くない怖くない怖くないこわ……)
そんな事を勇斗が念じている時についにその時は訪れる
バンッッッッツッッ!!!
炸裂する破裂音
辺り一面に広がる閃光
ある程度離れていた生徒達にも届く爆風
そしてそんな爆発音を聞きつけた璃沙がこの場に戻ってきた時に見たものは一部が壊れクレーターが出来上がっている小体育館と、そこに横たわる黒焦げになった1人の男子生徒とそれを取り巻くように円形に集まっている他の生徒達なのであった
……To be continued




