第三話『可憐な笑み』
魔術都市から東側にあるその大陸には魔術師や魔法使いといった人たちが極端に少ない。
なぜなら、魔法使いたちに必要不可欠である精霊がいないためである。
魔法や魔術、それらはすべて精霊から力を借りることで使うことができる。
「あのさぁ……。 あなた、いつまでそうしている気なの?」
今は東の大陸に向かっている最中である。
「こうしてないと、吐く」
そして大陸へ行くには、空を飛ぶしかないのである。
「うぷっ……」
「ちょっと!?」
一時間後。
「ほんとに信じらんない!! なんで私の服にぶちまけるのよ!!?」
「……ごめん」
大陸で一番大きく発展している国、ラインズへやっとの思いで到着した私たちを待っていたのは、人気のない街だった。
「なんか、思っていたより閑散としてるところね」
「魔獣が出たから、避難しているのかも」
「あなたも今のうちに避難してたら?」
「そんなわけにはいかないよ」
「あっそ」
「とりあえず、教会にいこう」
魔術都市から世界中を見るために作られた教会には、魔術都市から派遣されている魔法使いがいるのである。
今回の魔獣の件も、ラインズにある教会からの依頼なのである。
「ハドリウェスさん、お待ちしていました」
教会に入ると、中にいた魔法使いが挨拶をしてくる。
「どうも」
「私は魔術都市派遣部隊、ラインズを任されました。 フィルドとお呼びください」
フィルドと名乗るその女性は、口を歪ませ、不気味なほどに可憐な笑みを向ける。
「立ち話も乙ではありますが、どうぞ中へ」
「失礼します」
中に入り、私たちはさっそく仕事の話をし始める。
「それで、今回の被害は?」
「ここから北にある森のほとんどですね。 それと、今は街の人たちが足止めをしています」
「ちょっと! 足止めってなによ!」
「あの、ハドリウェスさん。 そちらの方は?」
「なんで私のことは知らないのよ!」
「すみません、魔術都市のポリスにも名前がなかったので」
「こっちのポンコツはポリスになってるっていうの!?」
「えっと、アイネ。 今は仕事の話を先にしないと」
「あんたに言われるまでもないわよ! 」
「では、話の続きをしましょう」
話を要約すると、北の森からあらわれた魔獣は全部で二体、オスとメスで番になっているらしい。
どこからきたのかは不明で、森全体を縄張りとしている。
「それで、街の人たちがこれ以上縄張りを広げられないようにハドリウェスさんが来るまで足止めをしてくれています」
「では早急に対処しないと、ですね」
「お願いします」
たまたま読んでいただいた方有難うございます