第二話『付箋のような紙』
遅くなりました
もう一話あげます
世界の子供、そう言い張る彼女は、私に向かってこう言ってきた。
「あなたはなにもしなくていいわ! 私が、一人で! 終わらせるから!」
そして、こうとも言った。
「あなたみたいな低級魔法使いなんかいなくたって、私一人でできるわ!」
可憐な見た目とは程違く、強く、しっかりとした意思があるのを感じだ。
「アイネ、君は一人でできると思っていても、必ずできないことがある。 世界は君にそれを教えたいんだよ」
「なら賢者様が一緒に来てください! こんなポンコツと一緒だなんて、足手まといでしかありません!」
「君は本当に口が悪いね。 すまない、私は約束があるからこの街から出ることが許されないんだ。 それに、君が今ポンコツと馬鹿にしたその子に、君は必ず救われるよ」
マーリンさんのその言葉になにか苛立ったのか、アイネは私をものすごい顔で睨んでくる。
「……わかりました。 賢者様がそこまで言うのなら、この足手まといと一緒に行ってきます」
「助かるよ。 それじゃあディアナ、あとは君が先導してやってね」
マーリンさんはそれだけ言うと、玄関から出ていく。
残されたアイネはマーリンさんを見送って、それからブスッとした膨れっ面になりながら私の前にくる。
「言っておくけど、本当にポンコツだと思ったらあなたには帰ってもらうから。 せいぜい足を引っ張らないでね」
とてつもない眼力の持ち主だ……。
「えっと、アイネ……」
「なによ?」
「よろしく、ね」
「はぁ?」
この街に住んでから、私は私と同じ年の子や下の子とふれあうことがほとんどなかった。
だから、アイネに対して、どう接するべきなのかよくわからない。
「ま、魔法は使えるの?」
「使えない人を魔獣の関わる案件に任せると思っているの?」
「じゃあ、祝詞も大丈夫?」
「祝詞? なにそればっかじゃないの? 古の魔法でも使おうっての? 今はそんなものなくても魔法は使えるのよ。 これでね」
そう言ってアイネが取り出したのは、付箋のように束ねられた紙だった。
「種類は四つ、火、水、土、風。 それぞれの紙があるわ。 そしてあとは貼るだけで魔法が使えるのよ」
「へぇ」
「本当に何も知らないのね! まあいいわ! 私がすぐに終わらせてあげるんだから!」
「アイネ。 あなたは、精霊が見える?」
「……なにくだらないこと言ってるのよ。 早く準備してくれない? じゃないと、置いていくから」
人間に魔力は作れない。
作れるのは精霊と魔獣くらいである。
魔法には規則があり、私たちはそれに従って魔法を使う。
「あなたの言った古の魔法、きっとあなたにも使えるよ」
「なにわけわかんないこと言ってるの!? 早く準備しなさいっての!!」